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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う
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第14章 仮面のひび割れ

[アスペクト・進行管理課/夜]



疋田(ひきた)は、いつも通りの時間に席へ戻った。


周囲は静かで、キーボードを叩く音だけが、淡々と流れている。


(……変わらない)


そう思った、はずだった。


だが。


「……?」


指を止め、画面を見つめる。


ほんのわずかな違和感。


一瞬なら、見逃してもおかしくない程度のズレ。


(……気のせいか?)



ログを開く。処理履歴をなぞる。



「……いや」


胸の奥が、じわりと冷える。



消したはずのログ。



正確には、“消したつもり”の痕跡。


(……残り方が)


自分と、よく似ている。


「……誰だ」


喉の奥で、低く呟(つぶや)く。


完全に消していない。


だが、見れば気づく。


それは、自分がやってきたやり方だった。


(……真似た?)


一瞬、笑いそうになる。


(馬鹿な)


この会社の誰が、ここまで踏み込める。


アークシステムズの連中だって、表向きはただの受託業者だ。


(……大したことはできない)


そう思おうとする。


だが、胸のざわつきは消えない。


疋田(ひきた)は、慎重に周囲を見渡した。


そのとき。


ふと、視界の端に入った光景。


坂辻(さかつじ)陸斗(りくと)が、誰かと話している。


――八木尾(やぎお)。


(……あ?)


最近、何度か見ている組み合わせ。


以前なら、ありえなかった。


坂辻(さかつじ)は、周囲が持ち上げる存在で、

八木尾(やぎお)は、目立たない存在だったはずだ。


(……あいつら、あんなに近かったか?)


坂辻(さかつじ)の表情が、以前と違う。


苛立ちでも、虚勢でもない。


――落ち着いている。


(……何だ、あれ)


疋田(ひきた)は、知らず拳を握っていた。


(俺の知らないところで、何かが動いている?)


頭の中で、点がつながり始める。


ログの違和感。残された“癖(クセ)のある痕跡”。


坂辻(さかつじ)の変化。八木尾(やぎお)との距離。


(……いや)


まだだ。確証はない。証拠もない。


(……慎重に行け)


自分に言い聞かせる。


(焦るな)


(今まで通り、完璧にやればいい)


だが。


疋田(ひきた)の指は、わずかに震えていた。


気づかぬふりをしたまま、画面を閉じる。


仮面は、まだ貼り付いている。


だがその内側で、小さなひびが、確かに走っていた。


――彼はまだ知らない。


その痕跡が、偶然ではなく。


『意図的に置かれた“合図”』だということを。

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