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EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルヴ〜 Season15 数字は嘘をつかない、嘘つきは数字を使う
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第12章 想定外の一手

[アークシステムズ・仮設ミーティングルーム/夜]



モニターに映るログを前に、凪(なぎ)は、少し首を傾げていた。


「……うーん」


その声は、困っているというより、どこか楽しそうだった。


「凪(なぎ)、どうだ?」


柊(しゅう)が、コーヒーカップを手に問いかける。


「んー……」


凪(なぎ)は、画面を指差しながら言った。


「このバックドア作った人、かなりの“難クセ”ですね」


「難クセ?」


環(たまき)が、きょとんとする。


「はい」


凪(なぎ)は、くいっとメガネを押し上げた。


「几帳面なんだけど、几帳面すぎるというか……自分のやり方に、ちょっとした“こだわり”を入れたがるタイプです」


柊(しゅう)が、ふっと笑う。


「……めんどくさいやつか」


「そうなんです」


凪(なぎ)は、うれしそうに頷いた。


「ログを消すくせに、“完全には消さない”」


「権限を偽装するくせに、“自分が通った痕跡”をちょっとだけ残してる」


環(たまき)が、そっと身を乗り出す。


「……それって」


「“俺はすごいだろ”って言いたいタイプですね」


凪(なぎ)は、さらっと言った。


柊(しゅう)が吹き出す。


「ははは……なるほどな」


灯(あかり)は、静かに頷いていた。


「自信家。そして、自分の腕を、誰かに見抜いてほしい人」


「はい」


凪(なぎ)は、キーボードに指を置く。


「だから、完全犯罪にしない」


「必ず、“癖(クセ)”が出るんです」


柊(しゅう)が、少し前のめりになる。


「凪(なぎ)、どうだ?いけるか?」


その瞬間。

凪(なぎ)の表情が、ぱっと明るくなった。


「はい!柊(しゅう)先輩!」


椅子に座り直し、指を鳴らす。


「任せてください!僕の手にかかれば、なんてことないです!」


環(たまき)が、思わず微笑む。


「凪(なぎ)くん……頼もしいです」


「こういうの、めちゃくちゃワクワクします!」


凪(なぎ)は、楽しそうに言った。


「難しそうに見えて、実は単純なパズル」


「“この人なら、ここに余計なことするよね?”って考えると……」


画面が、次々と切り替わる。



ログの並び。処理の順番。わずかにズレた時間差。



「……ほら」


凪(なぎ)が、ある一箇所を指し示した。


「ここ。一見、何もない。でも、“毎回同じ秒数”で処理が走ってる」


柊(しゅう)の目が、細くなる。


「……人の癖(クセ)だな」


「そうです」


凪(なぎ)は頷く。


「自動処理を装ってるけど、実際は手動で入ってる。“自分のタイミング”が、出ちゃってるんです」


環(たまき)は、胸の奥がぽかっとあたたかくなるのを感じた。


(……凪(なぎ)くん、すごい)


灯(あかり)が、ゆっくりと言った。


「想定外だったでしょうね」


「はい」


凪(なぎ)は、にこっと笑う。


「自分が“見抜かれる側”になるなんて、考えてなかったと思います」


柊(しゅう)が、カップを置いた。


「さすがだな、天才SE凪(なぎ)陽翔(はると)」


「えへへ……」


凪(なぎ)は、少し照れたように頭をかいた。


「でも」


その声が、少しだけ落ち着く。


「ここからは、慎重にいきましょう。相手は、まだ“余裕”の顔してます」


「だからこそ」


柊(しゅう)が、静かに頷く。


「一気にいかない」


「はい」


凪(なぎ)は、画面を閉じた。


「“気づかれないまま、こちらが一歩先に立つ”」


「それが、一番効きますから」


環(たまき)は、3人の顔を見渡す。


柊(しゅう)の落ち着いた表情。

凪(なぎ)の楽しそうな集中。

灯(あかり)の、すべてを見通すようなまなざし。


(……大丈夫)


根拠はない。


でも、不思議とそう思えた。


この人たちは、ただ暴くために動いているんじゃない。


誰かを、理不尽な闇から引き上げるために、静かに手を伸ばしている。


モニターの向こうで、まだ余裕の仮面をかぶった誰かが、何も知らずに笑っているとも知らずに。

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