【番外編】退場者の部屋
【番外編】 退場者の部屋
やぁどうも。
私はヤーファウ。気軽にヤーさんと呼んでくれ。
……え?ヤーさんって呼び方は何だか心がざわつく?
"世界"が生み出した原初の神にして、ありとあらゆる万象を支配し、あらゆる可能性を"可能"にする全能の神。
ひょんなことから私は自己を完全消滅させることになり、物語には今後登場しないことになった。
そういうことで、私はこの【退場者の部屋】に居る。
……謎にタイムリープ系複雑怪奇バトルファンタジーみたいになってしまったこの作品を、誰かが解説せねば。
解説だってお手の物。
何故なら私は"全能"だからね。
『……とは言っても、何も無いこの部屋だと解説なんか出来ないな。いかに全能といえど』
よし。
まず私はこの部屋に、机とモニターを用意する。
話し相手として、秘書天使だったルーシーくんのクローンもつくろう。
ミョーーーン
「……」
出来上がり。
――あ、そうそう。
私のやることに「なんで?」とか「どうやって?」とか野暮なこと言うのはやめなさい。
全て私の"全能"によって、論理的に矛盾なく。
ときに衝動的に、情熱的で完璧に説明がつくのだから。
『さぁ、これで観れるな』
「……」
私はルーシーくんと一緒にふかふかのソファに腰掛け、机の上に置かれたリモコンを手に取り"チャンネル1"のボタンを押す。
ピッ
モニターに映し出されたのは、私が自己消滅させる少し前の世界。
仮にこの世界を【チャンネル1】としよう。
チャンネル1の世界は、私の管理する完璧なシステムで構築されていた。
『うむ、やはり美しいな』
天界では"世界"を認識できる私を筆頭に、カオス派の神々が実権を握り。
地獄では"心"の供給バランスを調整し、一部の協力的な悪魔以外は、常に飢えさせることで悪魔全体の力を削ぐ。
そして下界には天使を配属し、心を求めて降臨する悪魔や、自然発生的に顕現する悪魔を駆除。
地獄の門も、天界への階段も……インフラ整備は欠かさない。
完全無欠!
理路整然!
完璧超神!
『う〜〜む!これはまさに芸術………我ながら惚れ惚れする出来栄え』
だが――
「つまんないっすね」
ルーシーくんはボソリと呟いた。
私はルーシーくんを見つめる。ルーシーくんも、その気怠そうな目で私を見つめた。
一瞬の静寂。
『……そうだ、な』
「世界とやらの意思でしたっけ?永遠の、"保守"」
そうだ。
三界を保存し、観測し続けること。
それこそ世界……正確には"カオス=ガイア"より与えられた私の……いや、神の使命。
「まー、ヤーさん頼りのシステムって時点で欠陥だらけスよ。まぁそりゃ?ヤーさんが消えるなんて誰も想像してなかったケド」
『ハハハ。まぁ、とにもかくにも……チャンネル1の世界は崩壊したのだ』
私の消滅により、飢えた悪魔が下界へとなだれ込んだ。
それだけならばまだしも、悪魔は心を喰らいつくし、そしてまた悪魔を生み……
「完全に、心が枯渇……。やがて悪魔も人間も滅んで、下界と地獄が終了って流れッスね」
『よし、次はチャンネル2の世界だな』
リモコンの2番を押す。
ピッ
映し出された世界を見て、ルーシーくんは絶句する。
「この世界も……だいぶ終わってるっすね」
チャンネル1の世界が悪魔の侵攻による崩壊だとするならば。
チャンネル2は人間たちの集団自殺。
その思想は1つの高校に留まらず、やがて街を越え国を滅ぼし、ゆっくりと下界全ての生命が息絶えた。
「……んじゃ、次はチャンネル3の世界ッスか」
リモコンを取ろうと手を伸ばすルーシーくんを、私は静かに止めた。
『いやこの世界崩壊は、もっとよく見てみよう』
「へ?」
『この世界崩壊は、思っているより単純ではないかもしれない』
「それって……」
『この話をしっかり理解しておかないと、チャンネル3ではついていけないということだ』
「そんな、スター◯ォーズじゃないんだから」
『この部屋にいる私たちにはどうすることも出来ないが……それでも』
アカシック・レコードに接続出来るものであれば、あるいは――
そのまま、モニターは怪しく光った。




