↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使くんは神様になんかなりたくない  作者: 土ノ子 ウナム
天使くんは神様になんかなりたくない
PR
16/42

ep16 刺客たち

ep16


『次は、我が校が誇る音楽室です。今をトキメクアーティストがここでよく練習をしていたのです』

『あ、そうそう!その子たちが今上映中の映画で主題歌を歌ってい魔して!その映画、ご覧になられ魔したか?それが素晴らしい歌で――』

「あー、ハイハイ……」


(なんか、ずいぶんと疲れたニャ……)


化学室。体育館。多目的室。

綿堂による禍津高校案内ツアーも佳境に入り、同時にニャニャエルの精神も限界が来ていた。


(本当に悪魔にゃんているんだろうか……)

そう思いながら音楽室の扉に手をかける。

『ここは最新の防音設備が整っていましてね。中でどれだけ激しく演奏しても――』

扉を開けた瞬間。


けたたましい声が、ニャニャエルの鼓膜を貫いた。

「アシ〜タガ〜アルーサ、アスガァアルゥウウウ!!!」

「うるさっ!!!」

そこに居たのは、黒い厚手のコートで身を包む男。

「おやおや……遅かったですネえ」

顔はハットでよく見えないが、笑う口だけがこちらへ覗いている。

「ウフ。退屈過ぎて歌っちゃってました」


「ハァ。やっと見つけたニャ」

『……本当に侵入者がいたとは』


ニャニャエルの白い毛並みが逆立った。 耳はぴんと立ち、細くなった瞳孔が男を射抜く。

「オイ!オレサマはこの地区の担当天使ニャニャエルだ!てめぇ無許可で外界侵入してんだろ!」


男は不敵に笑い、帽子を脱ぎ捨てた。

「アナタ、明日は見えてますか?」


「あ?」

「明日とは、未来です。未来とはそう――可愛い子どもたち!」


男の言葉を聞いて、綿堂は口を開く。

『目的は生徒たちですか?』


「子どもたちとは……そう!子種ですっっ!」


「……」

『……』


綿堂とニャニャエルは、返す言葉が見つからなかった。

(コイツ……会話が出来ねえタイプの悪魔かにゃ)


「さぁ、アナタたちにも見せてあげましょう。未来を!!エクスタスィイイーーー!!!」

男は両手を大きく広げた。


バサァッ――


黒いロングコートが宙を舞う。

「なっ――」


コートの下は何もない。

あるのは、まっさらな肉体のみ。


シャツも。

ズボンも。

靴下すら。


男は一切の衣類を身に着けていなかった。


「ぜ、全裸じゃねぇか!!!」

『なんと……』

綿堂までもが一歩引く。

男は誇らしげに胸を張った。


「ウフフフフ!そう!私はいつだって未来を見ている!!いや、見せている!!」

「い、意味が分からんにゃ!!」


「エクスタシィ……チャージ!!!」


ギギギギギ――――


不快な駆動音が鳴り響く。

男の腰のあたりから、金属部品のようなものがせり上がり始めた。

「えぇ……」

ニャニャエルが固まる。

伸びる。

まだ伸びる。

まるで格納されていた兵器が展開されるように、銀色の筒状パーツが何段階にも分離しながら前方へ突き出していく。

「アァ〜……」

その間、男は恍惚とした表情を浮かべている。


ガコン。

ガコン。

ガギン。

音楽室に似つかわしくない重機械音。

先端部が花のように展開すると、その内部で青白い光が明滅し始めた。


バチッ。

バチバチッ。

『これは……』


空気が焦げる匂い。

筒の内部で、電流が収束していく。

「ま、待て待て待て待て待て待て!!!」

ニャニャエルが慌てて叫ぶ。

「にゃ、にゃんでそこから砲台が!?」


『ニャニャエルさん、これはマズイですね』

綿堂が真顔で言う。

「そんなの見ればわかるにゃ!」


青白い光はさらに膨れ上がる。

音楽室の空気が震えた。

そして――

「エクスタシィ゙……ショーーーーック!!!」


ドォンッ!!!

眩い電撃が一直線に解き放たれた。

「ニャニャニャ!!!」

『失礼』

綿堂は慌てるニャニャエルを抱え上げる。

『私にお任せください』


電撃が迫る、その刹那。

『タイダー……バリア!!』

綿堂の手から広がる魔法陣が、綿堂とニャニャエルの全身を包む。


バリバリビリビリバリィッッ!!!!!


電光が空気を震わせながらニャニャエルたちを包む。

「ニ゙ャ゙ーー!!………あれ?全然痛くニャイ」

『ニャニャエルさん、安心してください。タイダーフィールドで我々の痛覚含む触覚は働いていません』

「ほう!だから痛くもなんともにゃいのか!」

『あ、いえ。痛くないですが、なんともないというわけではありません』

「え?……あれ?体が動かニャイ……」

『痛覚や触覚を怠けさせただけで、普通に電撃は食らってますから。麻痺ってますね』

「意味ねーーーじゃん!!」


『あ、あとタイダーバリアを使うと、禍津高校全域に張っていたタイダーフィールドも解除されますのであしからず』

「とことん使えん能力にゃ……まぁ、侵入者の悪魔は見つけたし、その結界はもういらんだろ」


キーンコーンカーンコーン

そのとき、二時限目開始の合図が鳴る。


『急ぎましょう。今は結界が無いので、一般生徒が旧校舎に入ってしまうかもしれない』

綿堂は腕時計を確認する。

『授業が終わるまで50分……』

「言われなくても、さっさと殺るだけにゃ」


「うふ。未来を感じますか?」


綿堂は眼鏡の位置を静かに直した。

『久しぶりに教鞭に立つとしましょう』


『――地獄送りの授業を、開始します』



「ハァ〜、ここ、立地悪すぎひん?」


少女はそう呟き、校門を見あげた。


『私立 禍津高校』

黒い鋼鉄の門が、美しい輝きを放つ。

ウチを招き入れようとしてるのか、軽々しく開ききった門。


「国内屈指の悪魔育成機関も、こうみると安っぽいねんな〜」


校門の脇にあるインターホンのボタンの下。

低い位置に、銅色の小さなベルが掛けられているのを確認して、少女は唾を吐いた。


「バリアフリー……いや、ダイバーシティ?胸糞悪いやっちゃな。悪魔が環境気にしてどうすんねん」


そう言って、少女は校門を抜ける。

禍々しく笑うその姿。おでこから小さく伸びる角が、影を伸ばす。

「くそ面倒なアイツの結界も解除されてんな。変態はウチらの指示通り、ちゃんと動いてるようやん」

少女は口元を歪める。


『賭けはオイラの勝ちですね!グリコ様!』

結んだ少女の髪の毛から、一匹のネズミが顔を出して応えた。

「やかましわ。ウチも最初から信じてたっちゅーの」

『ウッソだぁ!"神の力なんて信用できひ〜ん"とか言ってたじゃないスかぁ!』

「うっさいわボケ!そんなことより行くで」


『へい!下界は臭くてかなわんス!』

「キキキ。とっとと目当てのモン見っけて、地獄へずらかろうやないか」

『へい!そうしましょう!』


一人と一匹。

迷うことなく、向かった先は旧校舎。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。