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終わりゆく世界の片隅で  作者: アンチョビ


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37/41

9日目今日の敵は明日の味方

昨日と同じくヴェラ嬢と夜の散歩に出かけると狐のお面を付けた明らかに猫の獣人達15名程に囲まれている。先頭に立つリーダーらしき人物に声を掛ける。まぁ、貴女方の事は昨日からレピに正体もすべて教えて貰っている。しかし、ヴェラ嬢と一緒の時とは思い切ったな。なんかあったらマルゴー公爵家が敵になるって考えないのか?昨日、レピから正体を聞いて是非ともと思っていたから有難いけど・・・


「一つお聞きしたいのですが、あなた方は名無しでしょうか?」

「なんにゃ?」


「これは決闘かそれとも闇討ちでしょうか?闇討ちでしたら、それでもかまいませんよ。名無しに斬られ命を落とすのも良いでしょう。」

「穢れが大口を叩くにゃ(笑)」


「決闘ならば名乗りをすべきでしょう、名をお聞きしても?」

「穢れ者が聞いた口を、アタシ達はフウマ聖闘士と言うにゃ!」


「フウマ聖闘士?そんな名前は聞いたことがありません。確か聖闘士は黄金(ゴールド)、白銀(シルバー)、青銅(ブロンズ)、暗黒(アンコク)聖闘士だったと思うのですが?・・ああ、風魔と言えば大聖女スズカが伝授した忍術やらを扱う獣人が居たはずですね。今代の名前は、確か、風魔アザミ。なぜ貴女が聖闘士を名乗っているかは知りませんが、大方聖王・聖女教会の何方かに地位か何かを約束されたのでは?僕を殺せば風魔を復興させるとか言われましたか?かの、大聖女スズカに学びし忍術を用いるならば誠の名を名乗られてはどうでしょう・・・もしかして、それほどまでに僕の天真正自顕(てんしんしょうじけん)流が恐ろしいのでしょうか(笑)アザミさん。」


「まって、シンガ。この者たちの狙いは私ではなく貴方なの?」

「正確には、僕とヴェラ嬢の二人共です。ただ、僕を殺す事が最重要になってますね、ヴェラ嬢はその次です。」


ヴェラ嬢の狙いが自分でないのか?の言葉に気持ちが冷えていくのが分かる。やっぱりそうか。ヴェラ嬢も俺と同じく狙われて来た側、俺にはレピがエリリ義母さん達と老夫婦がヴェラ嬢はきっとルナリスお姉様だけが味方での戦いを、家にとって死んでも気にされない存在・・・・か。ならば、身に着ける物は思いつく限りの最高の物を作って渡そう。


「にゃはははははは!穢れの分際で騎士道とは片腹痛いにゃ。ふぅ~良いにゃ、子供のわがままを聞いてやるのも大人の器の見せどころにゃ。決闘を申し込むにゃ」


「フウマ忍流 アザミ」

「天真正自顕(てんしんしょうじけん)流 シンガ・ド・ムートン」


決闘となりお互いが名乗りを上げる。相手が使用するのが忍術ならばフェイントを多用した攻撃が予測できる、猫獣人でもあるしね。ならば俺の取る手は一つ、蜻蛉の型ではない。刀の極意は鞘にあり、本当の意味は刀を抜かずに勝利を相手に負けを認めさせることだそうだけど、俺には無理です。なのでもう一つの意味として伝わる極意。抜(バツ)・即(ソク)・斬(ザン)つまり居合抜刀術に掛ける。さすがに、アルテナ様に捧げる踊りは踊ってられないので名乗りを上げる。アイテムボックスから出したロングソードを鞘に納めたままで腰に構える・・・ああ、刀が欲しいです(泣)


ヴェラ嬢を少し離れさせて、右足を前に少し腰を落とし右手で軽く剣を握る。吹く風に木々がざわめき一瞬でアザミの姿が消え、前後左右の木に打ち付けるような音が響く。


コン・・・コン・・・コン・・コン・・コン・コン・コンコンコンコン


音の間隔が短くなっていく、木の葉が舞い落ちてくる。徐々に木の葉が落ちてくる量が増えていき、音が感覚を木の葉が視界を奪っていく。俺は全身を脱力させて一撃に備える。勝負は一瞬で決まる。深く深く呼吸と意識を落とし込み心を鏡に、奥義につながる教えの一つ 己が心鏡なれば敵の動きは映るがごとし  音が消えていく、視界が消えていく。


「フウマ忍流奥義、飯綱落とし!」

「っし!」


足元(・・)から聞こえる声に反応して頭上から高速で落ちてくるアザミを躱すと同時に逆刃で胴を斬りつける。


ボグィ・・ゴシャ~~ゴリ


骨が折れた音が手に響き地面を滑る音と何かに当たって止まる音が聞こえる。


【シンガ、お見事!】


レピの声に残身を解くと額から滝の様に汗が流れてくる。ネタバレすると、レピの視界と言うかスネーク種の熱を感じるピット器官を共有してたから、視界や感覚は乱されても問題なかったんだが、避けれるかは出たとこ勝負だったんだよね。大きく深呼吸を数度繰り返して大木の根元で横たわるアザミに近づいて行く。アザミがかばうように前に出る仲間を手で制してヨロヨロと立ち上がり


「・・・なんで殺さないにゃ、お前はアタシを舐めてるのかにゃ?」

「ムートン男爵家に仕えませんか?その力が欲しいのです。当家を助けてもらえませんか?」


「アタシはお前を殺す依頼を受けてミスしたにゃ。ミスした暗殺者は生きる事は出来ないにゃ、影は猫知れず影に沈んでいくのが定めにゃ。」

「これどうぞ、じゃ、今日からよろしくお願いします。名前はアザミだと生きてるのがバレるので・・翡翠(ヒスイ)はどうでしょう?」


「・・・アタシの話を聞いてたかにゃ?ミスった暗殺者は猫知れず死ぬのが定めだって言ってるのにゃ」


アザミにポーションを渡しながらの俺の言葉に周りを含め困惑しているのが分かる。ムートン男爵家って俗に言う、暗部みたいな存在いないのよね~田舎男爵家で貧乏だからさ~でも、今後の事を考えると是非とも暗部や情報収集系は欲しい!敵対するのは別に敵対勢力の2種族だけじゃないのは今回の事で分かったからね。やはり一番怖いのは人族だったな。


「ですから、猫?知れず死ぬなら誰があなたの死を確認して依頼主に伝えるのです?周りの仲間の方たちですか?」

「ふざけるにゃ!私達もアザミ様の後を追い生き恥など晒さないにゃ!!」

「だったら、名を変えてムートン男爵家に仕えても誰も分かりませんよね?僕が生存してる=全滅と依頼主は勝手に思いますから。」


「それは・・・・そうにゃ・・でも・・良いのかにゃ?・・あれ?・・死ぬ意味ない?」

「うふふふふふ、シンガ流口説き落としって所かしらね。流石だわ。」


ヴェラ嬢が嬉しそうに声を掛けてくる。ふぅ~とりあえず守れてよかった、今になって緊張が解けて来た。


「どうしますか?当家に仕えてくれるなら、僕の名に誓って黒檀一族の名乗りと班名風魔を許可します。」

「は⁈フウマの名も残せるのにゃ!・・・ちょっと、みんなと相談しても良いかにゃ?」


俺の言葉に少し離れた所で輪になって話し合いが始まった。


「ヴェラ嬢におね・・」

「良いわよ。」


横にいるヴェラ嬢に声を掛けてみる。まだ、内容言ってませんが・・・良いっか!


「恥ずかしながら、当家では今すぐの彼女達の給料と居場所が作れません。ヴェラ嬢に派遣と言う形で何人かを身近に置いていただけませんか?・・お金をお支払い頂けると助かりますので。」


護衛団は王都に戻れば一旦は数名付くとの事だったけど、暗部と言った存在は多分まだ先になるだろうと思う、他家が情報収集に妨害されないようにすると思うのでね。翡翠達が傍に居ればその憂いも少しは無くなるだろう。


「・・・・ありがとう。うれしいわ、喜んでその願いを叶えます。もちろん言い値で払うわ。」


多分、俺の狙いはバレてるだろうね。微笑むヴェラ嬢にこちらも微笑み返す。


「お館様に忠誠を誓うにゃ、今後はヒスイと名乗りムートン男爵家の力になるにゃ。」

「ありがとう。では、さっそくヴェラ嬢の下で他家の情報収取の妨害をお願いしたい。今いる翡翠以外全員がその任にあたり、それとムートン男爵領内で同じく他家の暗部行動の妨害をお願いしたい。その為に、風魔忍の人数を今の倍に出来るかな?今後も増やす予定だけれど、とりあえず急ぎでお願いしたいんだ。」


「倍にゃ⁉ええっと、良いのかにゃ?・・・分かったにゃ、生きる為に仕方なくヌケ忍となった仲間に声を掛けるにゃ、・・・あ、ありがたいにゃ(泣)」


感動する、翡翠には悪いが契約内容を口頭で伝える。黒死病のステージ3になれば誰であろうと領から出て行ってもらう。


「今、いや、この先の未来は破滅しかなかったにゃ。それが残る可能性があるなら十分ありがたいにゃ。子も産めるにゃ。あと、お館様以外にも標的が居たにゃ、その標的は・・・」


と、言うわけで、翡翠達風魔忍が仲間になった。筋書きはこうです。アザミが暗殺に来たけど師匠の指示で同じく風魔の抜け忍だった翡翠率いる忍軍が返り討ちにする。アザミ達は全滅、翡翠は弟子の俺と孫弟子のヴェラ嬢の護衛に師匠から付くように言われたな感じです。彼女達は暗殺者の仕事の時は狐のお面を被ってるし、変装の達人で仲間内でも本当の顔は知らないから元の依頼主も分からんでしょう。あと、翡翠からの情報で覚悟を決める、俺だけにしとけば良い物を・・・・お前が望むなら決着を付けますか。


「翡翠、さっそくで悪いけど、お願いがあるんだ。」

「なんにゃ?命令じゃにゃくて、お願いかにゃ?」



ムートン男爵家の領地外れにある林の中に目を凝らせば小さく明かりが見える。


「首尾はどうですか?まぁ、貴女がここに来たって事はあの穢れが死んだって事でしょう?良くやりました、では、約束通りにこちらの契約書にサインをしなさい」

「・・・・・」


「どうしました?早くサインを、あと、穢れの首はその手に持つ袋の中ですか?」

「おかしいにゃ、この契約書に風魔の名を残す一文がないにゃ。お前、私達を騙したのかにゃ?」


「・・・っち、獣人風情が偉そうに、出てきなさい!このクズ共を殺しなさい!」


「・・な、なにをしているの!早く出て来てこのクズ・・」

「無理だよ、お前が連れて来たギルドマン崩れは全員、俺とレピが殺した。こんばんは、ラクス。」


仲間が現れない事に慌てて声を張り上げる彼女の前に俺が林の中から出て目の前に首を放り投げて挨拶をする。


「ひぃ⁈・・・これはこれは、シンガ卿。このような場所でこんな時間にお会いするなんてお体の事を思えばお休みになられませんと良くありませんわ」

「ラクスの言う通りなんだけど・・・安眠を妨げる大きなクソバエが一匹飛んでるので潰してからじゃないと寝れそうにないんです」


「そうなのですね?あと、私の事を呼び捨ては如何かと、爵位は無くとも聖女です。一応年上でもありますの・・・」

「おいおい、このクソバエは何か喋ってるぞ?気味悪いな・・・さっさと殺すか。お前たちは帰って良いぞ。てか、この先の俺の姿を誰も見るな。見たら殺すぞ。」


アカン、地がでたな。レピバフの影響かな?まぁ、殺す相手だし別に良いか。・・・やっべ翡翠達にも聞かれたか?・・・大丈夫やな。翡翠達が去ったのを確認してラクスと対峙する。そもそもお前は元聖女であって今は違うだろうが。


「・・プロテクション、ヘイスト、ブレイブアップ、オートヒール!・・・ふぅ、ふぅ、ふぅ」

「終わりか?じゃ、行くぞ?」


流石は元とはいえ聖女だな多種多様のバフを使いこなしているみたいだ。・・・まぁ、関係ないけどな。風林火山をアイテムボックスから出して構える。蜻蛉ではないただの正眼の構え。


「ガキが、お前如き私の手を汚すまでも無いはずだったのよ!穢れが!穢れた分際が!わた・・」

「うるせぇ、夜中に騒ぐな、迷惑だ。」


ボグンっと音がしてラクスの両腕が折れる。


「っつ・・・ぎゃあ~~~!!!ぐぼぉ・・・」

「だから、うるさいって。」


折れた痛みで悲鳴を上げるラクスの鳩尾に風林火山を突き刺す。


「だ、だんで、ずがた、びえながった。」

「お前、瞬きしないの?」


「・・・うそ、うそよ・・そんなの・・」

「お~オートヒールって凄いな。」


折れた腕と鳩尾をついた事で起きていた苦しそうな呼吸も収まり普通に話すラクスに魔法って凄いと改めて感想を述べる。


「ま、瞬きで間合いを無くす?それって、だ、大聖女スズカが・・え?・・うそ?」

「俺の師匠はノワールだ。言ったよな?忘れたのか・・よ!」


ボグン・・


「ああああ、ああああ!?」

「うるせ」


なんか言いながら後方に逃げ出したラクスの左足を折る。もちろん、通常の俺にそこまでの身体能力は無い。レピバフを使用してるから約5倍程の反応速度が出せるらしい、むろん体の負担はメチャクチャきついけどね。


ボゴォ・・バギン・・ゴ・・


「イギィ・・ギャゴォ・・ゴブゥ・・」


右足、右腕と折り、脳天に風林火山を振り下ろす。


「ばっで、じんじゃぶ・・・じんじゃいゔぁす・・オードヒールが切れたら・・死にます・・助けて下さい。」

「じゃ、掛けなおして、今すぐ。」


「許してください!お願いし・ゴヴェ⁈・・・ゴヴェ・・」


そんな涙と鼻水でぐしゃぐしゃで汚い顔で謝罪何て聞きたくない。鳩尾を思いっきり突き刺すと虫が死ぬ前に暴れ出す様にカサカサ動いてる。うっとおしいな。


「お、オートヒール・・許して・・ゴバァ・・」


ボゴォ・・バギン・・ゴ・・


それからも数分?数十分間位、両手足を折り鳩尾に突き入れ額を割る。


「お・・お・・オートヒール・・ゆるして・・もう・・MPが・・ゴヴェ・・」

「頑張れよ、死にたくないんだろ?MPが無くても回復させて見なよ。」


「ぶ・・ぶりでじゅ・・じにだぐばい・・ぼう・・がいぶぐでぎばぜん・・」

「なんだ死にたいのか?・・・じゃ、さよなら、俺もそろそろ寝ないと身体に悪いしな。」


止めとばかりに風林火山を振りかぶり・・・・


「・・あっと、そうだ。いや~どうかな?でもな~?」



「・・あ、あどう・・どうなざいましたか?」


振り上げた風林火山を腰に差し、聞こえるか聞こえないか良く分からない聞こえる独り言を呟いているとラクスが恐る恐る尋ねてくる。


「ああ、このままお前を殺しても良いけど、実は元々お願いしたい事があったんだよね。だけどお前がこんな事しでかすからさ~・・いいや、やっぱり殺そう。どうせ、足元見て分けわからん事を要求されるからな~せっかく聖女に戻れるアイデアもあったけど、しょ・・」

「シンガ様!!やります!何でもします!もちろん金品の要求や恐れ多くも、貴方様に不都合をおかけなど致しません!!助けて下さい・・・お願いします(号泣)」


号泣しながら地面に土下座するラクス、勢いよく頭を打ち付けたからかドスって音が響いた。・・痛そうやな。まぁ、今までの痛みに比べたら軽いもんか?


「・・・ふぅ~。じゃ、よく聞け。先ずはこれを持って王都の聖王・聖女教会に帰れ。」

「これは、なんでしょうか?」


アイテムボックスから取り出した古い木箱を渡すと受け取ったラクスから当たり前の質問が来る。


「中に山河社稷図が入っている。これがあればお前は聖女に戻れるんだろ?」

「は⁈・・・サンガシャショクズ?え?ほ、本物ですか!」

「偽物に決まってるだろう。(笑)」


「え⁈・・・では、何故、聖王・聖女教会にこれを持って行けと言われたのでしょうか?」


「誰に分かるんだ、それが偽物って。調べたとしていつ分かるんだよ。」


「・・それは・・魔道具での質疑応答でバレます。そうなれば聖王・聖女教会に嘘の申告をしたと、罰せられます!しょ、処刑されてしまいます!」

「質疑応答ってどんな質問が予想される?言ってみろ」


「ええっと、おそらくですが、何故サンガシャショクズと思ったのか?偽物ではないか?手に入れた経緯は?あと・・・」


ラクスが思いつく限りの質問内容を言ってくる。


「お前は、教会に帰ってこれを渡し、魔道具での質疑応答でこう答えろ。手に入れた経緯はムートン男爵家が鉱山攻略中に見つけた物をタルボ男爵との契約により手渡された。で、実物を見た事のない私に本物か偽物かは分からない。ただ、素人の見立て手であるが木箱の腐敗具合からかなり昔の物でありながら崩れていない事から重要な物を保管していると思う、中身は少し隙間から確認したら地図ではないかと思う物である。」


魔道具を使用しての質疑応答って意外と抜け穴がある。そこをクリアできれば本物か偽物かの調査はメチャクチャ時間が掛かるだって本物を見た人居ないもん。中身は昔、義覚が仕えていた旧領地にある宝物庫の地図だ、分かったとしてどうやって調べる?旧領地って今は敵対勢力地だよ。無理じゃん。(笑)


「そもそも、こんな田舎に何で山河社稷図があるって思ったんだ?その時点で大した調査もしてない噂を面白がっている程度に過ぎない。で、そんな所にお前がこれを山河社稷図かもって持って帰っても特に真面目に調査はしないさ。ただし、全く調査はしないことは無い万が一があるからな、っで、お前の処遇だが、本物か偽物か分からない物に高い地位など与えない。それをすると他の奴も真似する恐れがあるからな。俺程度が考え付くやり方だ、他に思いつく奴が居てもおかしくない。とりあえずお前は聖女には戻れるだろう、元々聖女だったし教会にしてみればお前が聖女だろうが見習いだろうが特に関係ないからな。」


「たしかに、断言はしてませんから嘘をついていると分からないかもしれません。あの、シンガ様のお願いは何でしょうか?教会の地位をお求めでしょうか?」


「俺がお前に求めるのは、聖女に戻ったらタルボ男爵領地に滞在して・・・・俺達の領地にいる2種族の奴隷の子供の出産偽造を手伝ってくれ。」

「出産偽造ですか?それはどのように。」


「出産間近かの2種族をリストアップしてお前に渡すから、ムートン男爵領に居ない証明書をまず出して欲しい。で、半年後に領内に戻って来たら戻って来た証明書を出してくれ。」


「領地を離れられて、他の領地で出産すればその地の聖女にバレます。偽造は・・」

「出産はペトリコール鉱山で行い半年間はそこに住んでもらう。で半年後に戻ってくる。ああ、もちろん証明書を出してくれたらお前に金は払う。」


「お、お金を頂けるのですか!えっと、頂くことで・・その・・シンガ様の気分を害されませんでしょうか?」

「お前よ、俺の事嫌いだろ?そんな奴をタダで使うって絶対裏切るだろうが。金は払うし何なら、ムートン男爵領が潤ったら当領内に仕事で来た時はお前の待遇も良くしてやる。王都っとまでは行かないが付近の町に居る聖女より良い暮らしが出来るようならお前も裏切らないだろう?考えて見ろ、どうせお前は王都で暮らせる可能性は低い、俺の師匠に不敬を働いたからな。なら、俺の手伝いをして成功すればお前も潤う。どうだ?」


タダほど怖いものは無い、旨味のある共犯ならラクスもバレない様に考えて行動するだろう。まぁ、裏切れば殺すだけだ。


「・・・何故そこまで2種族を大事になさるのですか?嫌われているのが分かっていますよね?」

「2種族が嫌いなのは穢れの勇者であって俺じゃない・・・っと思っている。まぁ、あれだ、俺はエリリ義母さん達やカインが好きなんだよ。だから、俺を嫌っていてもムートン男爵領を守ってくれるなら良いと思っている。その為に俺に出来る事で2種族を繋ぎとめておきたいんだよ、人族は寿命が短い。でも彼らは長命種だ、過ごしやすい領地になればきっとカインとその子孫を守ってくれる。縁あって生まれ落ちたこの地を出来るだけ存続させたいって思う事はおかしなことか?」


「・・・そうですね、おかしなことではないですね。私がシンガ様の手伝いをすればきっと2種族から感謝されますよね?」

「ああ、なんなら死後は当領内の教会にスズカの像の横にお前の像を建てるように指示しておくけど(笑)」


「それは魅力的ですね(笑)以前の私がもし、変わらず王都に居たなら名も残ることないただの1聖女で生涯を終えていたでしょうから。・・・・シンガ様のお手伝いをラクスは喜んでさせていただきます。」


「ああ、よろしく。2種族の守り人聖女ラクス。」


「うふふふふ、素敵な二つ名をありがとうございます。名に負けない様に頑張ります。後、シンガ様の今の口調の方が私は好きです。(笑)」


「ちなみに、誰かに話せば殺すからな。」

「はい、二人だけの秘密・・ですね。(笑顔)」


お互いが握手を交わして笑顔を見せあう。よっしゃ!やった。これで2種族の出産問題は何とかなる。義覚に用意してもらった地図も申し訳ないが活用させてもらった。正直途中まで殺す気満載やったけど結果往来やな・・危なかった。


【まぁ、彼女が裏切ればその時は私の出番だぜ。シンガは心配しなさんな。】


レピの言葉に静かにうなずく・・でも、心配はしてないんだよね。彼女はきっと裏切らない、俺の共犯の方が自分に取って良いからね。どうせこんな田舎で過ごすことになるならちょっとでも良い環境になるなら満足するはずさ。


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