決闘
しばらく馬車に揺られながら、ふと疑問が頭を過りアドリアン卿に質問する。
「アドリアン卿、どちらに向かっているのでしょうか?決闘場とは聞いていますが。」
「ああ、そうだったね。中位、高位学校の中にある決闘場だよ。」
その後も立ち会い人はヴェラ嬢とアドリアン卿がする等の説明を聞いて、もう一つの疑問って言うか、こっちは隠し事になるのかな?出来るだけ冷静に話をしよう、この後に決闘があるからね。
「アドリアン卿。師匠、ノワールは来ませんよ。基本的に他人に興味を持たれないので、僕が決闘しようが、死のうが気にされませんよ。」
「おや?何故、そう思ったのかな、僕は何も言って無いよね?」
アドリアン卿が特に表情を変えずに答えるが、レピさんによれば、身支度中にこっそりと使いが出たと聞いている。隠れて見学者、他の公爵家の人間が来るのだと思う。
「アドリアン卿。僕の技が大聖女スズカが使っていた技と同じだと思われた、又は、同じだとわかった。つまり、僕の師匠は本物のノワールだと他の公爵家に連絡を入れましたよね?」
「うん、シンガ君の技が大聖女スズカと同じゃないかと連絡はしたよ。そう言うルールだからね」
「そもそも、僕に決闘をさせるように誘導し本当は当日で良かったが前日に技を確認できた。まぁ、師匠に会える事は無理でも、僕の師匠がノワールかどうかが分かれば良いから問題はないって所ですかね」
「シンガ、何を言っているの?技の確認?」
ヴェラ嬢が困惑した声で質問してくる。どうするかな?何れ分かる事だからね。
「ヴェラ嬢、今回の決闘は4大公爵家が僕の師匠が本当のノワールか確かめる為にカザル卿、カロン卿、そして、ヴェラ嬢を使って、僕を欺ったのですよ。カザル卿とカロン卿はアドリアン卿の派閥の人間ですから行動や思考は簡単に調べられますし、ヴェラ嬢は教え子ですからね。僕との関係で使いやすいでしょうから」
「り、理事長?貴方、私をシンガを騙す為に道具にしたのですか?・・・お前!」
「ヴェラ。僕は年長者であり、オーブリオン公爵家次期当主だ、同じ公爵家でも次女如きが、言葉に気を付けてよね。ノワールの存在を確認する為の道具ならありがたいと思いなよ。王国貴族でしょ。」
ヴェラ嬢が自分の言動が俺を決闘に駆り出す原因の1つ、道具にされた事に気付きアドリアン卿を睨み付け、声を荒げるが一瞥される。項垂れ、スカートの端を掴む手が震えているのが見える。・・・シンガ、お前は冷静だ。誰よりもクールな男だ。海の男エイハブ・イシュマール・アリだ
「・・・言葉に気を付けろよ、アドリアン卿。僕が、僕しかノワールと接点はない。これ以上、ヴェラ嬢を傷つけたらノワールの事は諦めろ、せっかく4大公爵家が考えたのに残念だな。」
【ああ、まぁ、気持ちは、分かるからな。ダメだけど、公爵家次期当主にダメだけどな】
俺がアドリアン卿を睨み付けるとレピが彼の横で威嚇している。
「おお!?言うね、シンガ君。・・・わかった、わかったよ、ヴェラ嬢悪かった。言いすぎたよ、ただね、ノワールの情報は聖王・聖女協会も喉から手が出る程で、王国の悲願なのはわかって欲しい。何せ、人間でありながら大聖女スズカに匹敵する存在で敵対勢力にとっての脅威だ。黒死病の事だって何か知ってるかも、治せるかもしれない。」
「・・・分かりました。シンガ、ありがとう。でも、本当にダメよ、理事長は公爵家次期当主なのだから不敬罪で貴方が居なくなるのは、辛いわ。」
「ああ、そうだったね。シンガ君、さっきの発言は不敬罪だよ。(笑)なにしてもらうかな~やっぱり、ノワールと会い・・・」
「アドリアン卿。レピは変わった毒を持ってまして、1週間の嘔吐感と5年程の記憶を失くせるらしいですが、・・・どうなさいますか?」
「ふぅ、わかったよ。先ほどの発言を見逃すから、この質問には偽りなく答えて欲しい。何故、ヴェラ嬢にそこまで、・・・・惚れた弱みではないよね?先ほどの言葉も立場を考えてない、君にとってヴェラ嬢はどんな存在なんだい?」
アドリアン卿の惚れた弱みじゃない、好きじゃないと取れる言葉の部分でヴェラ嬢の表情が曇るが一応俺はまだ6歳で、前世で考えても12歳の子に恋愛感情はわかないよ。少し長くなりますがと断りを入れてアイテムボックスから茶色い油紙に包まれた物を取り出す
「そうですね、これを見てもらっていいですか?これは、僕の義母、エリリ義母さん達が今回の入学時、入用になるからと渡してくれたお金です。金貨1枚。2人にとってはこう言っては何ですがはした金ですよね?当家は僕のせいで2種族が居ませんから人族も減ってすごく貧乏です、日々の暮らしが精いっぱいで貯金などとてもとても、・・・きっと私物を売って準備してくれたと思います。まぁ、買い叩かれたでしょうね。縁起が悪いだなんだと、形見の品もあったと思います。で、決めたんです、ただただ、勝手に、カインやエリリ義母さん達は僕が守ろうと、3人を傷つける存在は神でも殺すと、ああ、どんな手を使っても殺してやる。」
【シンガ、落ち着きなさいな。殺気が駄々洩れだぜ、馬車の中の空気が良くない。】
レピの声が頭に響き、慌てて意識を切り替え、2人の表情を見ると苦笑しているのが見える。
「あっと、すいません。で、ヴェラ嬢は、なんて言うのですかね、そう、最初の食事が温かかったんですよね。温かい食事は記憶にないから、とてもおいしかったです。もちろん、ヴェラ嬢にも色々と思惑があったでしょう、僕のつたないテーブルマナーも気になさらず、僕に出される食事は今はヴェラ嬢が内緒で前もって毒見をしてくれています、公爵家令嬢が考えられますか?ああ、ヴェラ嬢、怒るなら告げ口したレピを怒ってください。他にも一族の名乗りの許可を王国から頂くことも出来ました。お陰さまで、2種族の奴隷が3人に良くしてくれている、そうだ、家もリフォームしてくださいました。ヴェラ嬢は僕を守ってくれている、守りたい人を守ってくれている。師匠が一度呟いていた言葉に、 士は己を知る者の為に死す と言う言葉があります。」
2人を見る、共に真剣な表情が見て取れる。アドリアン卿を見て、ヴェラ嬢に視線を向ける
「貰った金額じゃないんです、してくれた大きさでも無い。ヴェラと言う一人の女性が僕に寄り添ってくれた。それに全力で答えたいだけです。ただ、これも、勝手に僕が恩と感じたからしてる事です。見返りなど必要ないですし要りません。後、僕には愛だの恋だのはまだわからなくて・・・ごめんなさい。」
言葉を告げて、ヴェラ嬢に頭を下げる。しばしの沈黙と揺れが馬車の中に流れる。
「私も勝手にしていることよ、シンガ気にしないでね。でも、喜んでくれて、貴方の力になれて居るなら良かった。・・・まぁ、今はね、これからチャンスは幾らでもあるわ」
「なるほどね。ノワールの教えは怖いね、彼自身がそうであったと言われているけれど、形のない、目に見えない心や恩にと教えるのか。ちなみにだけど、僕の妹がヴェラ嬢以上の事をムートン男爵家や君にすればシンガ君は妹に同じ気持ちを持ってくれるのかな?」
横に座るアドリアン卿をヴェラ嬢が殺気を込めた視線で見ている、しかもその手の動き、まさか南斗水鳥拳⁈アドリアン卿が気づいて額から滝のような汗を流し始めている。
「アドリアン卿、当家に援助は有難くお受けします。・・・が、妹さんには満開の枝に炭を塗ると答えます。」
「まいった、降参だ。下手なことはしないよ。ああ、ヴェラ嬢。手の動きを止めてくれないかな?何故かすっごく怖い、切り刻まれそうなんだけど。後、レピ君を離してくれると嬉しい。」
「すいません。目の前にバカでかいクッソ気持ち悪いハエが居たので、払ってました。レピ、離れて良いわよ。」
【は!御心のままに】
口の悪いヴェラ嬢の影から現れたレピがアドリアン卿の左腕に巻き付き歯を突き刺そうと口を開けている。もうね、諦めました。ええ、諦めた。何で使い魔契約者でない、ヴェラ嬢がレピを召還して従わせてるのか、考えません。
「しかし、毒見ね。何故、ヴェラ嬢はそこまで?」
「今、シンガが言った言葉、 士は己れを知る者の為に死す 私の心に落ちましたわ。シンガは最初から私を見てくれた、悩みを解決してくれた。地位ではないのです。ただ、私が出来る事をシンガにして上げたいだけです。」
真っ直ぐな視線を受けて、照れ臭い。でも、毒見は辞めて欲しいかな、一度寝込んでますよね。
「ああ、改めてノワールは噂以上に凄い人物なんだね。この場に居なくても教えを広めるか。さて、シンガ君。決闘場にはもうすぐ着くよ、控え室で欲しい物があれば遠慮なく言ってね。」
学校の敷地内に入り、進んだ先の建物に着く。控え室に案内されて、1人にしてもらう。
【シンガ、この場にきてなんだがね。迷いは無いのか?】
「ああ、あるよ。人を斬るのは初めてだし・・・殺すのも初めてだからね。やりたくないよ」
【そうだな、それが普通だな。】
「ふぅ、しばらく、呼吸を整えるよ。」
【ああ、わかった。私も潜るとしよう、1人で過ごしな】
瞑想に入り時を過ごす。どれだけの時間が経ったのか、ノックの音がして、ヴェラ嬢とアドリアン卿が部屋に入ってくる。
「時間だ。準備は良いかな?案内するよ」
「シンガ、その、気を付けてね。」
2人の後ろをついていく、開けた所にでると全体の雰囲気はよくあるコロシアムだ、中央に舞台が見えるがまだ、カザル君は来てない様だ。
「急遽、もう1人立ち会い人がくるよ。聖女ラクス、人間族の聖女さ。」
俺の横に立つアドリアン卿が説明する。何でも、ノワールが来る可能性がゼロじゃないならもちろん参加する、イヤ、参加させろと言って決まったらしい。俺の師匠、ノワールって凄い人物なんだね、偽物だけどね。
やがて、カザル君が現れる。横に、よく見る白い神官服に焦げ茶色の髪に薄い茶色の瞳の女性が立つ。年齢は20代前半?10代後半?女性はようわからんな。
「初めまして、穢れ人よ。私は聖女ラクス。決闘の立ち会い人として参りました。」
「シンガ・ド・ムートンです。よろしくお願いいたします。」
【穢れ人ね、結構な物言いだな。】
レピの声を聴きながら聖女ラクスに挨拶を返し、カザル君を見る。
「シンガ卿、俺は・・」
「カザル君、今日でお互いに会う事はなくなるんだ。堅苦しい口調はもうやめないか?」
「・・・ふぅ。そうだなシンガ。今日でお別れだ、最後ぐらいはかまわんか。」
見た感じは特に焦燥などは無い様子でいつも通りに見える。俺の会う事は無いとの言葉に一瞬驚いた表情を見せるがすぐに苦笑して口調を砕けたものにする。
「まずは、決闘を受けてくれてありがとう。お陰で、カロン卿に・・・とりあえず礼を言う。」
「かまわないよ、僕も君に少しだけ感謝している事があったんだ。まぁ、それのお礼だよ、物騒なお礼だけどね。」
カザル君のおかげである意味、なんていうのかな、寂しくなかった。やっぱりね無視されるってつらいよね。いちゃもんだなんだと言っても絡んでくれるのは楽しい時もあったんだよね、10割中8割は鬱陶しくてもね。
「そうか、やはり俺のような素晴らしい人間は意識しないでも感謝される行動をとっているんだな。じゃ、シンガ、決闘でももちろん負けてくれるんだな(笑)」
「悪いけどカロン卿と約束してね。手加減なしで相手するよ。」
「なんだ、残念なことだ。ヴェラ嬢の前で恰好をつけたかったのだが・・無理みたいだな。」
「何故、ヴェラ嬢なんだ?」
本来ならば、公爵家令嬢のヴェラ嬢と会う事も話す事もない。学校が違うだけでなく、爵位も大きく違う、まさに雲の上の存在だ。まぁ、むっちゃ絡んでる、俺が言うのもなんだけれどね。
「単純に気になった女性だからだ。ワインレッドの髪に瞳、春のやさしい風を思わせる声、うつろい行く季節の変わり目を感じさせる香り、過度に主張していない洗礼されたスタイル、どれもが素敵だと思う。」
めちゃくちゃ饒舌に語りますやん。ええ!?めちゃくちゃ饒舌ですやん。イヤ~なかなかやるね。6歳でそこまで喋れたら凄いよ。見習わねばならんな。よし!
「カザル先生!どうすれば、先生の様に女性を褒める事が出来ますか?」
「先生?、急にどうしたシンガ?」
「僕も、カザル先生の様に格好良く女性を褒めてモテモテになりたいです。」
「おお!そうか?やっぱり俺はモテるよな?男たる者、ハーレムを目指すべきだよな!」
「はい!カザル先生、僕もハーレムを・・」
「うおっほん!(怒)」
咳払い一つ、夏が近く今日この頃の日々に何故か真冬の寒さに身体が震える。カザル先生と視線を、ヴェラ嬢の方に向けると、白イタチのノロイを背後に立たせていて、アドリアン卿が青い顔をして震えているのも見える。・・・・・行くぞカザル君、シッポを立てろ!(でぇべてらんボイス)
「シンガ。後で少し話をしましょう♪」
「シ、シンガ、大丈夫か?その、俺が言うのもなんだが決闘出来るか?」
ヴェラ嬢にガンギマリした瞳で睨まれた。めちゃくちゃ怖い、シッポもヘニャヘニャさ。ああ、カザル君のやさしいさが身に染みる、もう帰りたい。
「はははは、しかしあれだな。こうして話をすれば、なかなか、俺とお前は・・・まぁ、無理だろうな。でも、話をする事は大事だな。俺は知らなかったが、姉は子供が産めない身体だったそうだ。だから、相手が別の人を選んでも気にしなかった、両親も兄も姉がそうならと、別に・・・」
話をし始めた、カザル君の顔が徐々に悲しげになっていく。そうか、そんな理由があったんだね。
「俺は、爵位に負けたと思ったんだ。でも違って姉なりに納得してて両親も兄も納得してて、俺だけ知らなくて、・・・信じられなくなって、気付けばお前に嫉妬心に駆られあんな手紙を書いて、昨日、俺のせいで、家族の皆が・・・もっと話をしてれば・・・すまない、少し、少し・・」
「ああ、わかった」
カザル君に背を向けると、すすり泣きが聞こえてきた、言葉もない。姉と両親、兄達はカザル君に心配をかけない様にした事が正しく伝わらなかった。少しほんの少し話せば、聞けば起こらなかった悲劇。前世ならばここまで大事にはなっていないと思う。今更、後悔しても戻らないけど。
「カザル卿、そろそろ。穢れ人も準備を」
聖女ラクスの声でいよいよ、別れの時が迫ってきた。お互いが武器を立会人と相手に見せて不正がないことを、戦いの女神アルテナに踊りを捧げて流派と名乗りを上げる。立会人、特に聖王・聖女協会や王族、4大公爵家気にしているのは俺の流派だと思われる。偽りの宣言かどうかを判断する魔道具が設置されており、宣言に嘘偽りはご法度、その時点で決闘を穢したと処刑される。
この為に、ここに俺を引っ張り出すためにカザル君に、カロン君に毒杯をちらつかせ決闘を持ち掛け。俺に、ヴェラ嬢を使い・・・ふざけやがって。他にやり様はあっただろうに、簡単に一線を越えやがって、いいぜ。お前たちの聞きたい答えか知らないが教えてやるよ。
「シンガは変わった武器を使うんだな?確か、カタナだったか。・・・カッコつけてヘマをするなよ(笑)」
「もちろん、師匠より許可された時以外は使用しない。まだ未熟で手加減が出来ないからね。」
アイテムボックスから出した俺の刀を見て、聖女ラクスの目が一瞬見開かれる。カザル君は綺麗なロングソードを使う様だ、綺麗って使用してないじゃなく手入れされたって意味ね。その後、カザル君がボフォパリャ・フォドリンを踊り、俺がハカ。カ・マテを踊る。
【シンガ、武運を。】
レピが声を掛けて俺から離れていく、決闘で使い魔のい使用は今回は許されなかった。まぁ、そうなるわな。
「アルゴ流剣術 カザル・ド・ガルシア!」
カザル君が剣を抜き流派と名乗りを上げる。目は赤いままだがなかなかに様になっている、剣術の練習はしていたんだろう。もしかしたら、共に戦う日もあったかもしれないな。
「天真正自顕流 シンガ・ド・ムートン」
「お待ちください!・・・穢れ人よ、そのような流派はありません。一部の人間しか知りませんがスズカ様もノワール様も流派はジゲン流です。貴方の師匠はノワール様ではありません!師匠を偽った罪で処罰すべきです。」
呼吸を整えて流派と名乗りを上げると聖女ラクスが抗議の声を上げる。示現流ね、んん~大聖女スズカはやっぱ日本人か?いや、日本住の外国人説か、日本の文化が好きな外国人説が濃厚やな、チョイチョイなんかズレてんのよ。気のせいかな?あれか?前世では男でこっちでは女性の可能性もあるか、結婚してないし。ムムムと頭の中でいろいろと考えていると、アドリアン卿が聖女ラクスに声を掛ける
「聖女ラクス。それならば何故、魔道具が反応しない?戦女神であるアルテナ様が偽りなしと判断したからではないかな。」
「それは・・いえ、きっと穢れ人が不正を・・」
「いい加減にしてください!さっきからシンガを穢れ人と発言した上に不正ですか?言葉に気を付けてください。」
「あら?マルゴー公爵家の出来損ないが聖女たる私にそのような口を利いても良いのですか?」
バチバチにやりあい始めるヴェラ嬢と聖女ラクス。しょうがない、混乱を招いたから訂正しますかね。
「聖女ラクス。ではもう一度名乗りをやり直します。それで変化が無ければ問題なしと判断願えませんか。」
「良いでしょう、やり直しを許可します。貴方の師匠から学んだ流派を名乗りなさい。本当にノワール様が師匠ならジゲン流です、それ以外は偽物です。」
示現流もいくつかあるんだけどな。前世で天真正自顕流は示現流の元になった流派だとお爺ちゃんから聞いてたし学んだのがそれだから名乗ったんだが、拘ってもな。聖女ラクスの顔を潰して聖王・聖女協会と揉めても面倒だし示現流と名乗りますか。
「天真正自顕流 シンガ・ド・ムートン」
バーカ!譲る気ないわ!ヴェラ嬢の事、何って言った?ふざけんなボケ!今回ももちろん魔道具に変化なし。だって嘘ついてないもん(笑)聖女ラクスが怒りに真っ赤な顔をしてるしヴェラ嬢が何故か勝ち誇った顔してる。
「聖女ラクス。魔道具に変化は無いようですので不問としましょう。あと、先ほどの発言で聖王・聖女協会はシンガ卿の師匠をノワール様と認めないと判断された。今後は我らで確認と調査いたします。」
アドリアン卿の言葉でいったんは場が収まる。聖女ラクスは自分のミスでイライラしてるけどね、ざまあ(笑)
「シンガ、お前は中々いやらしいいな。聖女ラクスを・・・まぁ、気を取り直して始めよう。まったくお前のせいで緊張感がなくなった・・・怖さもな。ありがとう。」
カザル君が再度構えを取る。俺は抜き身の刀の刃を外側にして頭上に自然に振り上げた状態に、左足をやや前に出し腰を落とし下半身を安定させ強靭な、全力の一撃を繰り出す準備をする。集中、相手の呼吸と瞬きがゆっくり刻むのが分かる。カザル君の踏み込みに合わせて俺も踏み込む
「セイ!」
「キェェェェェェェェェエイィィイ!!」
猿叫を上げ脇腹付近に置いた左肘を固定したままで右手で石を投げるように刀を捻って振り下ろす。全身の力を使い抵抗なく置き蜻蛉から残身へ。驚愕の表情を浮かべていたカザル君が微笑んだ様に見えた次の瞬間に頭から体半分が真っ二つに切れ離れていった。
「お見事!ノワール様直伝の技ってすごいね!」
地面に横たわり血を流すカザル君に視線を送ることなくアドリアン卿が声を上げる。ああ、だめだ、こいつら殺してやりたい。今回の件は本当にカザル君の暴走か?お前たちが仕組んだんじゃないだろうな?一連の事に疑いしかない。
「シ、シンガ。私のせいでごめんなさいね。あと、無事でよ・・・ありがとう。」
悲しげな表情で俺に声を掛けるヴェラ嬢に鞘に戻した刀を手渡した。目の前で知り合いが死んで良かったとは言えんよな。今日の所は・・・・寝たいな。




