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終わりゆく世界の片隅で  作者: アンチョビ


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14/19

決闘前日

アドリアン卿に決闘の返事をして次の日にヴェラ嬢から紹介された鍛冶屋に向かう。さすがに、寮や教室で武器の確認は許可されないし第三者立会いの下確認と貸し出し許可を行う、盗難防止のためだね。


「こちらがマルゴー公爵家に保管された1本の刀よ。貸せるのはこれのみで他のは無理なのよ、ごめんなさいね。大聖女スズカが使っていたとされる刀を真似て作られた物よ。名前は、確か、イチモンジだったと思うわ」


ヴェラ嬢から渡された一振りを受け取り案内された部屋にて抜いて刀身の状態を確認していく、錆は無く保存状態は良好だ。刃文が表と裏で一致している所から村正になるんじゃないかな?違ったっけ?まぁ、良いか。爺ちゃんが刀匠でもあった為、多少は見方が分かる。この刀は造りを見るになかなかの物だと思う。


「ヴェラ嬢、本当にお借りしてもよろしいのですか?素人ながらもかなりの一振りに思えるのですが。」

「ほお~お前さん。若いのになかなか見る目を持ってんじゃねえか!ああ、鑑定スキルを持ってんのかい?ならそれでわかるのか?便利じゃねえか。がはははは!」


豪快に笑うドワーフ、異世界の定番です。鍛冶屋=ドワーフですな。名前を聞いたらオヤッサンと呼べと言われたのでそう呼んでる。オヤッサンと話しているとレピが影から出てきた。


【シンガ。お前さんの言う通り、こいつは業物だ。ただ残念だがね、この刀には寿命が来てる。この音をよく聞いてみな】


キーン・・キーン・・キーン・・カン


レピが刀身の先から鍔元に尻尾を当てていくと甲高い音が響いていくが最後に音が変わる。


【鍔元から3寸、お前さんの目には見えないが傷が入ってる。】


「レピ、その傷は元に戻せないかい?オヤッサンに頼めば・・・」


【ナマクラならどうにでもなろうさ、だがね、良い物、業物ってのは直しが効かないんだ。だから業物、一点物って言うんだぜ。お前さんの腕で打ち合えば、3合で折れる。どうするね?】


「おいおい、なんだ今の音は、その刀は寿命が来てんじゃねえか?その蛇が気づいたのかよスゲーな、店に働きに来て欲しいぜ。がはははは」


オヤッサンは笑うが、俺に取っては笑い事じゃない。3合、今の俺の腕ではとても自信が無い。命をかける決闘で相手にも失礼だ。


「シンガ、気づかなくてごめんなさいね。決闘も取り止めて大丈夫よ。」

「ヴェラ嬢、ありがとうございました。目の保養になりました。」


申し訳なくするヴェラ嬢に刀を返してお礼を言う。刀の寿命なんて分かる人は少ないからね、しょうがないさ。


「なんだ、刀が欲しいなら店で作ってやるぜ。材料があれば1か月で打ってやる。どうだ?」

「ありがとうございます。機会があればよろしくお願いします。」


決闘まではとても間に合わない、仕方ない、諦めよう。オヤッサンに挨拶をして店を出る、ヴェラ嬢から帰りも馬車を進められたが断り、あてもなく街を散策する。気づけば公園に来ていた。ベンチに腰掛け周りを見渡す、老若男女楽しそうにそれぞれの時間を楽しんでいる。目の前を俺と同じ年頃の女の子が妹の手を引いて道を歩いているのが見える。


(あの子がもし、明後日死ぬとなったらどうするのだろうか?変わらぬ日を過ごすのか、自分勝手に過ごすのか・・・)


「シンガ卿、少しいいだろうか?」


ボーっと道行く人を眺めていたら声を掛けられる。レピが反応してないから敵意はないのが分かっていた。


「カロン卿、かまわないよ。」


俺の横にすわり同じ方向を見つめる、しばらく無言の時間が流れる


「カザル卿は友達なんだ、偶然にも誕生日が一緒でね。誕生日を一緒に祝ったりした事もある、僕には妹しかいないから、彼のお姉さんやお兄さんと言う存在が羨ましくて・・良い人達なんだ・・良い人達なんだよ。それがこんな事に・・・」

「カロン卿、君は何を伝えに来たんだい?僕に何か言いに来たのじゃないのか。」


カザル君の家族が良い人達と聞いても会ったこともない人物に俺にはどうとも思わない、そりゃ、良い人の1人や2人は居るだろうさ。


「っつ、そうだね、そうだった。シンガ卿、出来ればカザル卿の願いを叶えて欲しい。彼に、安らかなる、聖なる・・・死をお願いする。」

「何をもって聖なる死なのか僕にはわからないけど、決闘はするよ。」


「あ、ありがとう、ありがとう。本当に・・」

「なぁ?お前は頭イカレてんのか?友達だったんだよな、なにがありがとうだよ。目の前の男はお前の友達を殺すんだぞ!ふざけてんのか!」

「本来は、本当は、僕が・・彼の寄親(よりおや)で嫡男の僕の手で毒杯を渡すことになっていたんだ。」


「なるほどね、自分の手を汚さなくてありがとうって事か、どういたしまして。」

「シンガ卿、カザル君に彼に・・・頼む」


両ひざを地面に着き頭を垂れる、カロン君なりに、きっとカザル君を助けられないかいろいろしたんだと思うよ。今日も本当は俺からヴェラ嬢に取り成して欲しいと言いたかったんだろうな。俺達、しょせん6歳のガキなのにな、友達に毒杯を渡さなければならないってさ、どんな罰ゲームだよ?まったく責任だけ大きいよな。


「カロン卿。若輩浅学、未熟者なれど学びし技にて答える事を約束するよ。だから、手加減はない。」


彼に告げて公園を出る。ヴェラ嬢に頼みごとが出来た、寮に戻り黒耀と琥珀を使いに出して明日の予定を決める。


「レピ。僕が学びし技は示現流、一撃に全てを。3合などいらない」

【シンガ、お前さん・・わかった、わかったぜ。確か、お前さんの人型の師匠、大聖女スズカの十八番だったな】


決闘前日、昨日の鍛冶屋でヴェラ嬢と待ち合わせて刀を受け取る。


「シンガ、本当に良いの?だってこの刀はもう折れるのでしょう。貴方にもしもがあれば・・・」

「ヴェラ嬢、ご安心下さい。すぐに折れる訳ではありません。後、静かな部屋を1部屋お借りしたいです。何処、ありますか?」


俺の言葉にオヤッサンが苦い表情を一瞬浮かべるが、口止めを頼んだのを守ってくれている。それと精神統一の為に、静かな部屋をヴェラ嬢にお願いする。


「・・・シンガ、よければ、その、イヤじゃなければ、私の家にくる?マルゴー公爵家の別館だからそこまで広く無いけれど、部屋は幾つかあるから、どうかしら?(照)」


「さ、さすがに、穢れの僕がマルゴー公爵家に行くのは、色々と良くないのではありませんか?」


ヴェラ嬢の提案に即座に拒否をする。オヤッサンは目を瞑り、耳を塞いでいるしルナリスお姉様はジト目で俺を見てる。イヤイヤ、ヴェラ嬢を止めなさいよ。


「気にしないで大丈夫よ。私が居る別館には、両親もお姉様も弟も誰も居ないし基本来ないわ。ちょっとだけ、先っちょだけでも来ない?大丈夫よ、そう平気だからね」


ヴェラ嬢、尚更ダメではないですか?先っちょとか平気とか何?ふと見ると静かにオヤッサンは去って行った。またんかい!どう、断ろう、でも、集中できる部屋があると有難いのよね。


「シンガ様、もちろんコクヨウやコハクもお連れください。アドリアン様もこの後、お呼び致しますので対外的にも問題ないかと、お食事やお風呂も準備出来ますし、お部屋でお過ごしなら、シンガ様、お泊りになられても大丈夫です。」


「・・ルナリスさんもそこまで言ってくれるなら。その、お邪魔いたします。」


「はぁ、ルナリス。余計な事を、アドリアン卿?要ら・・・・・泊り?来た!いやまって、ニヤけてはダメ・・・・・駄目よニヤけちゃう。特に何もしないわ、こっちからはね。でも、うれしいのはホントだものね、シンガが家に泊まりに来る、・・・うひひひ。ルナリス、アンタほんまええ仕事しはる、前から思てたけど出来る子、あんた出来る子や、今日はめっちゃ褒めるで、ブリバリに褒める!やばい、この後の事を想像するだけで、うきゃきゃ、・・・・頭の中が幸せの宝石箱や~!」


ヴェラ嬢が少し、ちょっと、かなり気味悪い笑顔?みたいなのを浮かべてめっちゃ古いロボットダンス?みたいなものをカクカクンと踊ってる。ルナリスお姉様が頬を引き攣らせてヴェラ嬢から視線を逸らしてるのが気になるけど、黒曜や琥珀が居るなら・・良いかな?アドリアン卿もくるみたいやし、大丈夫でしょう!


ひとまず、寮に戻り黒耀、琥珀と共にマルゴー公爵家に行く準備をする。ちなみに、2人は普通に授業を受けてたりするし俺よりも学校生活を満喫している。友達も出来たらしい、俺、おらんのに・・


マルゴー公爵家の馬車に乗りルナリスお姉様に案内されて別館へ向かう、はい、デカイ、広いです。三階建ての洋館です。旧岩崎邸庭園の感じかな?そらそうよね、言うても公爵家の別館やもんデカイわな。家の玄関を入りヴェラ嬢が待つ部屋に案内されて入ると


「シンガ、いらっしゃい。ど、どうかしら?に、似合ってる?、シンガはこう言った格好が好きとルナリスから聞いて着てみたの・・・(照)」

「・・・シンガ、マニアックすぎる。さすがに引いた。」

「・・・これは、ウチもドン引きにゃ。」


黒曜と琥珀が少しづつ俺から離れていく。えっと、グルグル目玉の表情のヴェラ嬢。頭にウサギの耳、紺色のスクール水着に胸に白い布でゔぇらの名前、腰には白にピンクのヒラヒラメイドミニエプロン、両足はガーターストッキング。・・・・ふぅ~~~・・・なんじゃこれ!!!なんやねんこれ!!あかん泣きそうや・・正直、前世で言うと一個一個は癖ってたけど、全部乗せはあかんて。・・・いや何ゆうてるねん。ああ、目玉グルグルで頬を染めて返事を待ってるヴェラ嬢が見てられへん。


「ヴェ、ヴェラ嬢、その、何故そのような格好を?」

「だって、ルナリ・・」

「言ってません」


「ルナ・・」

「言ってません(怒)私がお伝えしたのは、そういった格好がお好きな方も居るとお伝えしました。」


「でも、好きな物がいっぱいあればうれしいじゃない?だから、アドバイスの全・・・」

「お嬢様、シンガ様が絡むと何故ここまでポンコツになるんです(泣)」


「ええ?変かしら?シンガ、わたきゅう。」


なんか可哀そうすぎて、不敬ながらレピさんに噛んでもらいました、大丈夫ですよね?罪になりませんよね?気を失い倒れこむヴェラ嬢をルナリスお姉様がとてもとても綺麗にお辞儀をして抱えて別室に連れて行った。


【シンガ。あまりマニアックな格好をヴェラ嬢にお願いするんじゃないぜ。ありゃ~子供の手が離れてなお、突撃ラブハートな妻にでもさせない格好だぜ。】

「お願いしてませんし、しません。・・・いい加減、黒曜も琥珀もこっちに来なよ、離れ過ぎだって。」


レピさんなんやねん、突撃ラブハートって。それと部屋の隅でこちらを伺っている2人に声をかける。しばらくしてヴェラ嬢が部屋に入ってくる。


「シンガ、ごめんなさいね。貴方の緊張を解そうと思っての事なのよ、決して癖を刺激してあわよくば襲われてキス位はなんて考えてなかったの、もちろん、抵抗してるフリはするわよ、安心してね」


「そ、そうだったのですね?ああ、えっと、緊張は解けました、ありがとうございます。」

【シンガ、私はヴェラ嬢が徐々に心配になって来た。一度無免許ながら天才と呼ばれてる医者に診てもらってはどうだろう?】


グルグル目玉じゃない普通の表情でヴェラ嬢が変な事を言ってる。レピさんその人がこの世界に居るなら是非ともお願いします。お金は払います。


「シンガ様、ご希望の部屋はどちらになさいますか、幾つかご案内させて頂きます。さっそくご覧になられますか?」


「ルナリスさんよろしくお願いします。黒耀、琥珀。行くよ。」


微妙な空気を断ち切る様にルナリスお姉様が声をかけてくれて、ようやく本題に入る。俺だけが付いて行くともしかしたら、問題になるかもしれないので、黒耀と琥珀にも来てもらう。


まずは一階からと道場に案内される。中々良い感じです、ただ、広すぎるかな。瞑想や精神統一にはもう少し狭い方がありがたい。次は二階へ、ワザワザ物置小屋を片付けてくれたみたいで、何もない十畳位の部屋ですね、ここが一番良い感じです。


最後に三階に案内されました、部屋に入ると可愛らしいベッドに高級な家具。そして、清涼な香り。


「こちらがシンガ様にオススメのお嬢様のお部屋になります」


【シンガ。ルナリスも一緒に医者に診てもらってはどうだろう?】


もうヤダ!泣。イヤ、三階って言われて想像したけど、ルナリスお姉様はボケ無いと信じてたのに、これ大丈夫か?俺も不敬罪で毒杯か?振り替えれば、真っ赤な顔をしたヴェラ嬢が居る。


「ルナリスさん、こ、ここ・・」

「シンガ、ここにするのね?言質取ったり!ルナリス、逃げない様に早く荷物を持って来て!」


「レピ、た・・」

【すまない!本当にすまない。】

『私、ウチ達も居るから大丈夫。にゃ。』


イヤイヤ、瞑想も精神統一もできませんが。


「楽しそうだけど、さすがにダメだよ(笑)ヴェラ嬢。君は良くても、公爵家令嬢だ。シンガ君を世間は・・ね」


廊下から救世主の声が聞こえる。


「アドリアン様。まだ、お越しになられるお時間ではありません、不法侵入になるかと思いますが?」


ルナリスお姉様、何故に喧嘩腰ですの?貴女はヴェラ嬢の暴走を止める人ですよね?


「もちろん、メイドさんに案内されて来たよ。時間は少し早いけどね」


「アドリアン卿。イヤ、アドリアン・ド・オーブリオン様。ありがとうございます、本当にありがとうございます。」

【シンガ、私のおかげだぜ。】


綺麗に90度頭を下げる、涙が出そうになったわ。レピ、お前何もしてないやん。(怒)


「っち、・・シンガ、よくある公爵家ジョークよ。大丈夫、1割冗談だから」


ヴェラ嬢がハイライトの無い目で笑顔で呟いた。公爵家ジョークって何?よくあるの?。ドタバタしたけど、アドリアン卿が来たので、一階の部屋で明日の事を話し合う。


「さて、シンガ君。カザル君以外の家族は今日、処刑(毒杯)された。家族からの希望でね。もちろん、カザル君にも知らせてる。彼は特に反応しなかったよ」


「家族の死を何故、カザル卿に知らせたのですか?明日の決闘に支障が出るのではないですか?そんな・・」


「本人が望んだからだよ。それだけさ」


ああ、クソたれ!この世界はホンマに、6歳やぞ?前世で小学生や・・アカンな、目の前の大人を殴りたくなる。


「・・・二階の部屋をお借りします。レピ、頼む」

【ああ、わかったぜ。任せな。】


二階の部屋に入って正座をして少し高い位置にある目の前のロウソクの明かりを見つめる。レピの毒で身体は極限状態になり、ひたすら前世の記憶にあるお爺ちゃんの素振りや動きに自分を重ねて行く。前世で学んだ示現流、天真正自顕流と言う。一の太刀を疑わず、二の太刀は敗北の心得。


頭の中でひたすら立木に打ち込んでいく。レピの毒で冷えていく身体が、打ち込んでいくイメージを反映して熱を帯びる。冷める、打ち込んでいく、冷める、打ち込んでいく。


しばらくして、一口水を飲み立ち上がる。木刀、風林火山を手に一度素振りをする。


「キェェイ!!」


蜻蛉と呼ばれる型から猿叫(えんきょう)を上げ身体の熱を放つ様に振り下ろす。また、正座をしてロウソクの明かりを見つめる。音が消えて行く。身体が冷えるよりも早く熱を帯びていく、爺ちゃんと一緒に刀を振り下ろす、同じように動く。


しばらくして、今までわからなかった部屋の外の雰囲気、物音が聞こえる、部屋の外にヴェラ嬢が居ると分かる。意識が薄く広がって代わりにお腹の中心に熱い気が籠り立ち上がり放つ猿叫、一振の素振り。


ロウソクを見つめる。お爺ちゃんと素振り、刀と対話する。立木に打ち込む、レピがさらに毒を身体に打つ、冷えるスピードが早くなる、身体が震えて打ち込むイメージが出来ない。身体の感覚がなくなり、正座してるはずが首だけが宙に浮いているようだ。


先ほどとは逆に徐々に意識も、視界も小さくなっていく。小さい熱い熱量が何かに抵抗するかのようにドクンと灯る、グールグールと熱がトックントックンと熱が回り脈動する。


ロウソクの揺らぎが止まる、何も感じない、聞こえない。お爺ちゃんと対峙して斬られる、蜻蛉の型から刀を振り下ろす。斬られる・・・振り下ろす。斬られる・・振り下ろす。斬られる・振り下ろす。斬られる振り下ろす。斬られ振り下ろす。斬ら振り下ろす。


首から下の身体の感覚は無いのにボール玉の様な形の熱量だけは感じる、お爺ちゃんの斬り下ろし、ボールが弾けて熱が出口を求めて溢れ出す。お爺ちゃんと俺の斬り下ろし。


「キェェェェェェェェェエイィィイ!!!」


自分の声で世界が戻る。音が聞こえる、風の圧を感じる。振り下ろした風林火山がロウソクを縦に真っ二つにして明かりを灯している。爺ちゃんが笑っているのが見えた気がした。


【シンガ、見事だ。】


レピの声に視線を向ければ、満足げな表情が見える。周りを見合せば窓から朝日が差し込んでいる、一晩掛かった様だ。だが、今出せる全力を、悔いのない全力をもって・・斬る。


「これだから、理事長は、いや指導者や教育者は辞められない。わずかな時間でここまでの成長の開花を特等席で見れるんだからね。研究者としてもたまらないね。・・・まぁ、シンガ君には教育・指導のどちらもしてないけどね。」


いつのまにか部屋に入ってきたアドリアン卿が興奮して話す横で、ヴェラ嬢が静かに微笑んでいる。ああ、一晩起きていたのか、お腹も減ったし、少し、スープを頂こう。


「ヴェラ嬢、少しだけスープを頂けますか?」


「朝食は用意してるわ、スープと言わずに遠慮しないで食べて。」

「いいえ、お腹を斬られて見苦しい事は出来ません。本来は水なのですがさすがに体力が持たないのでスープで十分です。」


俺の斬られると言った言葉でヴェラ嬢の表情が曇る。あのね、これから殺し合いに行くんだよ、斬られる覚悟がないと斬れないさ、だから一晩中お爺ちゃんに斬られたんだよ。俺が弱いだけって事もあるけどさ。


水にて身体を清め、身支度を整える。馬車に乗り決闘場に向かう、馬車の中はヴェラ嬢とアドリアン卿が同乗しもう一つの馬車に黒曜・琥珀・ルナリスお姉様が乗っている。俺は目を瞑り呼吸を整える、馬車の中はまるで俺だけの様に静かな空間が広がっていた。





■■■


「面白いぐらいに、彼女が彼に堕ちてるね。あははは!いや~良いよ。この後の殺し合い、きっと彼は傷つく、いや、傷つけクソが・・・あ~あ、鬱陶しい。なんだよ、忌々しいあれ、あの技、そうだった、彼があいつの兄弟子だったわ。忘れてた、穢れてるんだからよ綺麗なもんを見せるなよ!!この世界では成長?開花?要らない要らないんだよ!・・・はぁはぁはぁふぅ~やっぱ殺すか?でもな~こう、あっさり過ぎると苦労して呼んだ意味がな~神が6歳のガキを殺すってどうなん?ってあの子に嫌われちゃわないか?・・・よし、取り合えず傍観しよう。気分直しにまず、あの子へのプレゼントを考えよう。ああ、後、彼女の恋がうまくいくようにさらに手助けしよう!楽しまなくっちゃ!そうだった、楽しまなくっちゃね。」



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