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Episode 83

 後日、国王陛下によって、マリヴェル侯爵家は取り潰し、マリヴェル侯爵は牢にて死を待つのみ、残された家族や親戚縁者は国外追放という沙汰が下された。

 妃教育のために登城し、いつものように終了後パトリックの執務室でお茶を飲みながら、これから発表されるマリヴェル侯爵家の処罰について、パトリックから話を聞いた。


 呪い返しによって本人の命が風前の灯火だったために、わざわざ処刑するまでもない、ということでそのまま獄中で、という沙汰だったが、本来なら王族への殺人未遂は当然死罪だったようだ。

「取り調べの結果、家族や親類たちは今回の企てを知らなかったことが明らかになったから、処刑は免れた。でも、この国の国外追放は、二度とこの国には入国できないという制約魔法がかけられる。アスター帝国の親戚を頼るのも難しいとあれば、生きていくのはかなり大変だろう」

「そうですね…」

 侯爵家で貴族として暮らしていた人たちが、他国で平民になって暮らしていくのは、きっと想像を絶する苦労が待っているだろう。

「家族や親類の人たちが王家を逆恨み…なんてことはないんでしょうか?」

 苦しい生活を送っているうちに、その沙汰を下した国王陛下、ひいては王族を逆恨みする…という可能性がどうしても出てきてしまう気がする。

「もしも逆恨みしたとしても、国に対して反逆行為を行えない、という制約魔法もかけられるから、実際に行動を起こすことはできないようだ。破ろうとすると耐え難い苦痛が与えられ、それでも破れば死に至る、強力な魔法だそうだからな」

 私と同じ転生者のパトリックも、きっと心配になって確認したんだろう。不安要素を残したまま追放だけ、ということはないようで、少しほっとする。逆恨みからまた命を狙われる、なんてことになったら、永遠に安心できない。罰を与えるだけじゃなく、次の罪の芽をしっかりと摘んでおくことが大事だと思う。

「大変でしょうけど、何とか頑張ってほしいですね…」

 マリヴェル侯爵が犯した罪は重いけど、それでも共謀していたわけではない家族たちの行く末を心配せずにはいられなかった。

「幸いと言っていいのか、マリヴェル侯爵の子どもたちは皆成人済みらしいから、仕事を選ばなければ、何とかやっていけるだろう。王子の教育係を任されていたくらい、教育には熱心な家柄らしく、他の国に行っても学校の教員や家庭教師などの仕事ができるのでは、と国王陛下もお考えのようだったから。まあ、罪人の家族ではあるから、貴族が通うような学校や貴族の屋敷での勤務は難しいだろうけどな」

 貴族だった、というプライドを捨てて、再出発できるかどうか。それが家族が犯した罪に対する贖罪になるのかもしれない。


 色々な思いが渦巻いて黙り込んでしまっていた私の隣で、パトリックがお茶をぐっと飲み干した。私がおかわりをパトリックのカップに注ごうとポットに手を伸ばすと、パトリックがその手を止める。

「もう大丈夫、ありがとう。執務に戻るよ」

 パトリックの机の上には、いつもより多くの書類が積まれている。

「第二王子派と第三王子派がごっそりいなくなったから、まだ王城内がばたついてるんだ。彼らが担当していた業務もこっちに回ってきているし、キリアンの新たな教育係の選定もしなきゃいけないしな」

「何かお手伝いしましょうか?私にできることがあればですけど」

 私もお茶を飲み干して立ち上がった。この人の仕事の補佐なら、前世からやり慣れている。

「そうだな。せっかく申し出てくれたんだから、お言葉に甘えようか。――この辺りの書類の処理を頼めるか?イライザなら問題なくできるだろうから」

「承知しました!」

 私たちは重苦しい雰囲気を振り払うように頷き合い、積み上げられた書類の山を崩しにかかった。

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