093。
自分が何をしたかわからなかった。
「あさ君、あさ君……っ!」
泣き叫ぶ桃音の声が廊下に響く。
呆然と立ち尽くす。
俺は激情に突き動かされて、朝黄に詰め寄った。そこまでは覚えている。
そして、気づけば朝黄は倒れていた。
「なに、が」
「てめぇ!!」
どんっと胸ぐらを掴まれて壁に叩きつけられる。
ぐっと胸が押されて思わず呻いた。
「なにした、てめぇ、お面になにしやがった!」
「みど、りの」
痛いほどに打ち付けられた体と、ままならない呼吸に顔が歪む。
緑野の表情は怒りと、混乱に染まっていた。
「なんなんだよ、どうなってんだよ、説明しろ!」
「やめろ、緑野」
「なに冷静になってんだ! こいつが、こいつはお面を!」
青葉の制止を振り切って、緑野が俺に手を上げようとしたその時、ぴんっと一瞬にして、その場の空気がピアノ線のように張り詰めた。
はっと俺たちはその空気を作り出した人物に目を向ける。
ふらりと立ち上がった桃音の表情は髪の毛に隠れて見えない。
ぽつりと桃音の唇から音がこぼれる。
「……でよ」
「え、」
「死んでよっ」
弾けた声はあっという間に俺の目の前に迫って、交錯した視線、後ろに体を引っ張られたことで辛うじて彫刻刀の一閃から逃れる。
たたらを踏みかけた俺と桃音の間に涙が落ちる。
すぐさま、桃音がキッと俺の後ろにいる誰かを睨んだ。
「なんで邪魔するです」
「向こう見ずな行動をとって無駄足にするな、オレの頑張りを」
その声に慌てて振り替える。
そこに立っていたのはいつぶりかの黒雪だった。
戸惑いと安堵に、知らず知らず開いた口から出る言葉は責めるような口調になる。
「黒雪、今までどこいってたんだよ!」
「情報を集めてきた。でも、それはいまいい。……お前に動くなって言っていったつもりだったぞ、オレは」
倒れている朝黄を一瞥して、黒雪は舌打ちする。
それから、全員の顔を見渡すと凛と言い放つ。
「今ならまだ間に合うはずだ。だから急いで帰ってきた。朝黄を救える方法を持ってきた、オレが」
黒雪のその言葉に俺は目を見開いた。
a leap in the dark(向こう見ずな行動




