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かりそめアパート。  作者: シュレディンガーの羊
さよなら
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94/105

093。



自分が何をしたかわからなかった。


「あさ君、あさ君……っ!」


泣き叫ぶ桃音の声が廊下に響く。

呆然と立ち尽くす。

俺は激情に突き動かされて、朝黄に詰め寄った。そこまでは覚えている。

そして、気づけば朝黄は倒れていた。


「なに、が」

「てめぇ!!」


どんっと胸ぐらを掴まれて壁に叩きつけられる。

ぐっと胸が押されて思わず呻いた。


「なにした、てめぇ、お面になにしやがった!」

「みど、りの」


痛いほどに打ち付けられた体と、ままならない呼吸に顔が歪む。

緑野の表情は怒りと、混乱に染まっていた。


「なんなんだよ、どうなってんだよ、説明しろ!」

「やめろ、緑野」

「なに冷静になってんだ! こいつが、こいつはお面を!」


青葉の制止を振り切って、緑野が俺に手を上げようとしたその時、ぴんっと一瞬にして、その場の空気がピアノ線のように張り詰めた。

はっと俺たちはその空気を作り出した人物に目を向ける。

ふらりと立ち上がった桃音の表情は髪の毛に隠れて見えない。

ぽつりと桃音の唇から音がこぼれる。


「……でよ」

「え、」

「死んでよっ」


弾けた声はあっという間に俺の目の前に迫って、交錯した視線、後ろに体を引っ張られたことで辛うじて彫刻刀の一閃から逃れる。

たたらを踏みかけた俺と桃音の間に涙が落ちる。

すぐさま、桃音がキッと俺の後ろにいる誰かを睨んだ。


「なんで邪魔するです」

「向こう見ずな行動をとって無駄足にするな、オレの頑張りを」


その声に慌てて振り替える。

そこに立っていたのはいつぶりかの黒雪だった。

戸惑いと安堵に、知らず知らず開いた口から出る言葉は責めるような口調になる。


「黒雪、今までどこいってたんだよ!」

「情報を集めてきた。でも、それはいまいい。……お前に動くなって言っていったつもりだったぞ、オレは」


倒れている朝黄を一瞥して、黒雪は舌打ちする。

それから、全員の顔を見渡すと凛と言い放つ。


「今ならまだ間に合うはずだ。だから急いで帰ってきた。朝黄を救える方法を持ってきた、オレが」


黒雪のその言葉に俺は目を見開いた。


a leap in the dark(向こう見ずな行動  

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