092。
ふっと、目を開ければ額縁の外にいた。
真っ暗の周囲と、目の前で壊れかけのテレビのように時折ノイズが混じりながら現実が再生される額縁。
倒れた僕の脇で泣き叫ぶ桃音と、糸が切れた人形のように膝をつく青葉、肩を震わせて壁に拳を叩きつけた緑野がそこにはいて、赤城は呆然と立ち尽くしていた。
「気が狂ってるね」
額縁の外からそんな悲劇を鑑賞していれば後ろから静かな声がした。
振り返らずに僕は苦笑する。
「そうかなー? 僕にしては今までよくやってきたと思わない?」
「どうして?」
まっすぐと僕を見透かす問いに、思わず顔が歪んだ。
額縁の中の光景は遠いのに、確かに現実だった。
「……僕はさ、君たちが羨ましかった。家族の仇討ちなんてこれっぽっち考えてなかったよ。あの人たちと言葉なんてろくに交わしたことすらないんだから。あそこへ忍び込んだのは声が聞こえたからだよ。楽しそうに笑ってた。あそこには僕の、俺の欲しいものがみんなあった」
家の離れで二人の子供が楽しげに、けれどどこか秘密めいた小さな声でくすくすと笑いあっていた。
悪意に満ちた家族と呼ばれる人たちとも、冷たい目をして家を壊した人間とも、違う暖かな瞳がいたずらっぽく輝いていた。
あんな世界が欲しかった。
本当はあんな温かな世界で生きたかった。
異形と疎まれてきたけれど、それでも本当は幸せになりたかった。
それでも怖くて、必死に自分を守って、二人の前に出て行ったのに、ただ優しく眩しく僕を受け入れてくれた。
物のように扱われた名前も顔も恥ずかしくて惨めで隠していた。
でも、二人は名前をくれて、顔のことも聞かずにお面をくれた。
これはヒーローのお面だと、赤城が俺に鬼面じゃなく鬼でもなく新しい顔をくれた。
「結局、たぶん僕はヒーローにも赤樹にもなりたかったんだよ。だから成功じゃない? 僕は君も赤樹も救えた」
振り返れば白いワンピースの彼女はまっすぐと僕を見ていた。
ワンピースの裾が音もなく翻る。
「気が狂ってるね。ヒーローになる為にこんな茶番をしたの、こんな狂った悲劇で幕を下ろす気なの」
「手厳しいね。僕は君たちを救えて嬉しいのに。やっぱり僕じゃ、ヒーローにはなれないってことかな?」
くしゃりと顔が歪むのを自覚する。
彼女の純粋で無垢な瞳が、瞬きの内に生きた色を灯す。
彼女の中で生が目覚める。
彼女は言った。泣きながら言った。
「嘘つき」
be out in the left field(気が狂っている




