083。
長い間、俺は何も言えなかった。
帰ってきた過去は鮮やかでそして大きかった。
何も言えないまま涙ばかりが溢れて零れていく。
ようやく口にした言葉は震えて答えにはなっていなかった。
「俺、何も知らなかったんだよ。白夜のことも朝黄のことも。それで気がついたらみんななくしてた。それに、その記憶すらなくしてた」
視線を落とした掌には何も見えない。青葉は何も言わない。
だから、俺は深呼吸してから青葉に視線を戻す。
もう声は震えなかった。
「俺は知らなきゃだめなんだよ。今度こそ知らなきゃだめだ。このアパートも、ここの皆も巻き込んで申し訳ないと思ってる。でも、俺はもうあんな思いはしたくない」
「それでいいのか」
「それがいい」
俺の断言に、青葉はふっと緊張を緩めた。
それから、おもむろに立ち上がると見上げた俺の頬を両手でぱんっと叩いた。
「痛っ!? え、なに!?」
叩かれた両頬に手を当てて、混乱すれば青葉がむっとしたように口をへの字にする。
「申し訳ないとか、巻き込んだとか勝手に俺を蚊帳の外にするな。俺はここのいわば先住民で、赤城は新入りだ。新参者のお前が先輩風吹かすなたわけ」
きょとんとしてから、自分がいまなんだか泣き笑いみたいな顔をしているだろうなと思った。
青葉の言葉の端々に一人で抱えるな、と言われている気がした。
青葉の手を借りて俺も立ち上がる。
「朝黄に会おう。会って話をしなきゃダメだ」
「あぁ」
そうして二人で俺の部屋を出れば、
「桃音、」
「話、聞かせてもらったです……」
廊下に一人佇む桃音がいた。
桃音は俺たちの顔を見ると、どこか自嘲気味に顔を歪めた。
「私、どうしたらいいです……?」
in a blue moon(長い間




