079。
俺の家は呪術の家だった。
その筋の中では名家と呼ばれるほど有名な家だったらしい。
らしい、というのはその職だけで食べていくことが辛い時代になったということだ。
それでも時々は依頼が舞い込むことがことがあったという。
俺が生まれる前、ひとつの依頼が舞い込み、そして両親はその依頼の遂行に失敗した。
呪術の扱いを失敗するということは、呪いを受けるということだ。
その呪いは愛する者を蝕む類の呪いだった。当時、本人すら認知していなかったことらしいが、すでにお腹の中に俺がいたらしい。
「なら、俺が呪われてる、ってこと……?」
重い空気が体にまとわりつく。
やっと言葉を吐き出せた口はからからに渇いていて、落ちた言葉はひび割れて乾いていた。
母親の赤い目が俺を縋るように見た。
「違うわ、あなたは選ばれた。呪いを解く術に選ばれたのよ」
「そんなものは所詮詭弁だ。結局は生贄か、そうでないかだ」
その後、両親の口から語られた針術は俺の頭を真っ白にさせるには十分だった。
「しぃ」
気づけば、離れにふらりと足を踏み入れていた。
「しぃ、」
「いらっしゃい、あっくん」
しぃはいつもと少し違った笑みで俺を迎え入れた。
しぃの顔を見たら、俺の頭は変な熱に侵されて口がぺらぺらと勝手に話し出す。
「今日は、なにして遊ぼうか。朝黄が来るならしぃが前にやりたいっていってた大富豪やろうよ。朝黄が来ないならそうだな、今日ははしゃぎたい気分だから久しぶりに覆面戦隊ごっこでも……」
「あっくん、知っちゃったんだね」
「なにが? あ、今日は学校でさ」
「――――あっくん、」
ふわりとしぃが音もなく立ち上がる。
日が傾いてオレンジ色に染まる部屋の中で、彼女は無邪気に俺の知らない顔をしていた。
「嘘つき」
くすくすと零され た笑い声はどこか温度がなかった。
「もう、知っちゃったんだよね。でも、しぃはずっと知ってたよ。いつかあっくんがしぃに終わりをくれるんだなって。ここから出られないしぃはあっくんのためなんだよね」
「し、ぃ……」
思わず名を呼ぶ。
しぃはくるりとその場で俺に背を向けた。
「あっくんが半分持つはずだった呪い、全部しぃが受けたんだもの。あっくんがしぃのこと殺してくれたら、それで呪いは消えるんだよ。楽しかったな、きーくんにはよろしくてって言っておいてね」
淡々と零された言葉に俺は泣きたくなった。
stick in the mud(泥沼に嵌まる




