076。
誰だとか、何がとか、どうしてだとかそんな問いが巡って混乱に頭がパンクしかければ、白いワンピースが俺を追い越した。
「きーくん!」
わっと彼に飛びついてしぃは嬉しくてたまらないという声を上げた。
「昨日の今日なのに来てくれたんだね。嬉しい!」
それは俺が一度も聞いたことのない音で、思わず眉をひそめた。
しぃのこんなにはしゃいだ姿も、いきなり現れた鬼面も気に食わなかった。
「離せ、うっとおしい。後ろであいつが睨んでるぞ」
「あ、そうだね。あっくんにも紹介しないと。こちらはきーくん。鬼のお面だからきーくん。それでこちらはあっくんだよ、きーくん」
「なんだよ、それ」
示された彼の紹介にさらにイライラした。
心の中で黒いものが渦巻いて、知らず知らずにしぃを責めるような口調になる。
「この離れに人は入れちゃダメなんだよ。しぃ、わかってるの。なんでこんな変な奴入れるの」
彼をにらめば、きょとんとしぃが俺を見る。それから彼と俺を見比べて、首を傾げた。
「あっくんだって入ってるよ? それにきーくんは」
「白夜」
彼が咎めるようにしぃの名を呼んだ。
俺も呼んだことのないその名前を当たり前のように口にして、彼は続ける。
「白夜、勝手に情報開示するな。今日のところは帰る」
くるりと踵を返して、風のように彼はいなくなった。
それこそ目を疑うほどあっさりと姿を消す。
「しぃが淋しい時にね、最近きーくんが来てくれるの」
ぽつりとしぃがそう呟きを零した。
しぃが安心したように、口元を穏やかに綻ばせる。
その顔を見てしまって、悔しくなった俺は小さく口の中で、嫌な奴め、と呟いた。
a pain in the neck(嫌なやつ




