075。
よく考えれば俺がしぃについて知っていることは少なかった。
俺に向けられる笑顔と交わした言葉、それとあの花見の一件のあの震える肩。
どうして、俺の家の離れに一人で隔離して住まわされているのか。
そもそも、どうして外に出てはいけないのか。
しぃはどう俺の家に関係があるのか。
堰を切ったように溢れ出した問いは、本当に今更のことばかりだった。
新しい世話係の女性はとても事務的で、そしてしぃの側にいることをどこか避けているようだった。
だから、以前と変わらず俺は離れに忍び込むことができていた。
そして、その頃からしぃの様子が少し変わった。
その変化ははっきりとではなく、もっと輪郭の掴みにくいものだったけれど、しぃは以前よりよく笑うようになった。
「しぃ、何かあった?」
おずおずと尋ねれば、しぃはきょとんとしてからふふふと笑った。
「しぃは幸せ者だなって気付いたの。だって一人じゃないもの」
「幸せ?」
「そう」
そう言ってしぃは花びらが綻ぶように、微笑むから俺はそれ以上問いを重ねることが出来なくて俯いた。
安心できない自分がどこか恥ずかしくて、その日はうまくしぃの顔が見れなかった。
次の日、俺が離れに上がり込むとしぃは寝ていた。
それはとても珍しいことで俺はしぃを起こすことなく、その横にぺたんと座り込んでいた。
眠っているしぃは本当に普通の女の子で、また問いが溢れ出す。
その時だった。
「なんだ、無駄骨折ったな」
聞こえた声にはっと顔を上げれば、いつの間にか縁側に少年が立っていて、
「全然、似てねぇじゃんよ」
鬼の面をつけた彼はそう言って俺を見下ろした。
find a needle in a haystack(無駄骨を折る




