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かりそめアパート。  作者: シュレディンガーの羊
なくして
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76/105

075。




よく考えれば俺がしぃについて知っていることは少なかった。

俺に向けられる笑顔と交わした言葉、それとあの花見の一件のあの震える肩。

どうして、俺の家の離れに一人で隔離して住まわされているのか。

そもそも、どうして外に出てはいけないのか。

しぃはどう俺の家に関係があるのか。

堰を切ったように溢れ出した問いは、本当に今更のことばかりだった。




新しい世話係の女性はとても事務的で、そしてしぃの側にいることをどこか避けているようだった。

だから、以前と変わらず俺は離れに忍び込むことができていた。

そして、その頃からしぃの様子が少し変わった。

その変化ははっきりとではなく、もっと輪郭の掴みにくいものだったけれど、しぃは以前よりよく笑うようになった。


「しぃ、何かあった?」


おずおずと尋ねれば、しぃはきょとんとしてからふふふと笑った。


「しぃは幸せ者だなって気付いたの。だって一人じゃないもの」

「幸せ?」

「そう」


そう言ってしぃは花びらが綻ぶように、微笑むから俺はそれ以上問いを重ねることが出来なくて俯いた。

安心できない自分がどこか恥ずかしくて、その日はうまくしぃの顔が見れなかった。




次の日、俺が離れに上がり込むとしぃは寝ていた。

それはとても珍しいことで俺はしぃを起こすことなく、その横にぺたんと座り込んでいた。

眠っているしぃは本当に普通の女の子で、また問いが溢れ出す。

その時だった。

「なんだ、無駄骨折ったな」


聞こえた声にはっと顔を上げれば、いつの間にか縁側に少年が立っていて、


「全然、似てねぇじゃんよ」


鬼の面をつけた彼はそう言って俺を見下ろした。


find a needle in a haystack(無駄骨を折る


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