074。
小学2年になった頃から、俺も小学校の友達と外で遊ぶことが増えた。
当然、しぃと遊ぶことも減ったけれど週に2回は以前同様に離れに忍び込んでいた。
その頃にはもうしぃの世話係に、忍び込むこんでいることを気づかれていた。
世話係は若い女性だった。
「今日もいらっしゃったんですか?」
「うん」
「私に見つからないように来る気はないのですか?」
「うん」
そのまま離れに上がり込むと、困ったように眉を下げられた。
「私はこの離れに誰もいれてはいけないと旦那さまに命をうけているのですけれど」
「うん、だから黙っててよ。俺も困るからさ」
「……私はなにも見ていませんから」
毎回同じようなやりとりをして、ふいとそっぽを向いて最後には黙認してくれる彼女が俺は結構好きだった。
けれど、一度どうしてかと悩んだことがある。
その日はしぃとトランプをしていて、どうせなら多い人数でやりたかった。
ちょうど彼女がいたから、しぃに誘ってくれと何気無く頼んだ。
その時は思いつかなかったが、よく思えばしぃと彼女が会話をするところを俺はそれまで見たことがなかった。
彼女は洗濯物を離れに運び終わり、ちょうど本邸に戻るところだったらしい。
しぃは離れの入口で彼女の背中に声をかけた。
「どうされ……!?」
振り返った彼女はさっと青ざめ、本邸に運ぶはずだった洗濯物を取り落とした。
そして、しぃに駆け寄ると離れの中に思い切り突き飛ばした。
その一連の流れを俺は見てしまって、呆然とした。
彼女はがたがたと体を震わせ、恐ろしいものを見るような目でしぃを見下ろしていた。
「いま、出るつもりだったでしょうっ!? いま、あなたここから出ようとしたでしょう……!」
違う、というしぃの声も聞こえない様子で彼女は完全にパニックを起こしていた。
俺にはわけがわからなかった。
数日後、彼女でなく別の女性がしぃの世話係になった。
そして、彼女はどうやらこの家で働くこともやめたようだった。
その日の夜から俺は来る夜も来る夜も考えた。
どうして、彼女はあんなにもしぃが外に出ることを怖がったのか。
そうして、しぃの置かれた状況の不自然さを俺はその時にやっと自覚した。
night in, night out(来る夜も来る夜も




