073。
ある時、俺はしぃを外に連れ出そうとしたことがある。
小学生男子が室内遊びだけで満足するわけがない。それが理由だった。
けれど、しぃはそっと笑って俺の手を解いた。
「あっくん、しぃは外には出ちゃいけないんだよ。外で遊ぶなら、友達と遊んできていいんだよ」
それがあんまりにも当然のこととして諭されて、俺はむくれた。
俺はしぃと遊びたかったし、しぃのために誘ったということもあったのに、理不尽だと拗ねた。
しぃはそんな俺を見て、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「しぃはあっくんが遊びに来てくれるのが嬉しいよ。だけど、しぃだけじゃあっくんを幸せにはしてあげられないから」
「……俺はしぃと一緒に花見に行きたいよ。しぃと行きたいんだよ」
膝を抱えて口を尖らせる。
その時、世間は花見日和で親が付き合ってくれないというのもあって、俺はしぃと桜を見に行きたかった。
しぃは俺が拗ねると大抵のことは折れてくれる。
その時だってそれを狙っていた。
けれど、しぃはその時はじめてくしゃりと顔を歪めた。
「いいなぁ……しぃも桜、見たいな……」
涙を堪えるように、しぃが唇を震わせる。
でも、俺が目を見開いているのを見ると、白いワンピースの裾を握りしめて、ふにゃりと笑った。
「しぃ、今度お土産に桜の花びらが欲しいな」
そう笑ったしぃの肩がそれでも震えていたことが俺にとっては衝撃だった。
次の日から、俺は世間でちょっとした評判になった。
大きな袋を持って降ってくる桜の花びらをかき集める子供がいろんな場所で目撃されれば評判にもなるだろう。
俺は舞い散る花びらをたくさん集めて、しぃのところへ持って行った。
離れの部屋でそれをぶちまければ、驚いたしぃが一拍おいてきらきらと目を輝かせて俺を見た。
俺は照れ臭くて、くすぐったくて、て叫びたいくらいそれが嬉しくて。
そして、俺もしぃもその時が一番幸せだった。
make a noise in the world(世間の評判になる




