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かりそめアパート。  作者: シュレディンガーの羊
しりたい
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53/105

052。



「馬鹿が」


緑野から降ってきた声は苛立ちと呆れでできていた。


「お前の秘密も教えねぇのに、俺たちにだけ教えろって? それはお門違いじゃねぇのか」

「そ、れはこれからおいおい考える!」

「はぁ?」

「しょうがないだろ、俺だって俺の秘密がわかんないんだから……」

「は……?」


気まずくなって、ぼそぼそとそう言えばさらに緑野が呆れの声を出す。

馬鹿を見るような視線に耐え切れなくなって、ムキになって叫ぶ。


「俺だって知らない! 俺だって俺の秘密を知りたいさ!」

「どういうことだ、それは」

「俺の、記憶は綻びがあるみたいなんだ。時々、懐かしいのに知らない夢を見る」


うつむいて、言葉をこぼす。

桃音は一体、俺の何を知っているのか。

初めに秘密があると言われた時、ひどく恐ろしかったのだけは覚えている。

未完成のまま生きてきたということを、自分の記憶への違和感を、まるで思い出すように自覚した。

俺はあの時、自分も知らない自分の秘密を知ることが恐ろしかった。

でも今日、目が覚めてひとつだけ決めたんだ。


「俺は緑野たちのことも、俺のことも知りたい。それでここで、このアパートで、みんなと暮らしていく、そう決めたんだ」


ずっと持っていた鉢植えを緑野にそう言って押し付ける。

受け取った緑野はなんとも言えない顔をして、


「……欲張りだな、てめぇは」


少しだけ口元を緩めた。




in the rough(未完成のままの

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