037。
朝起きたら、目の前にとても綺麗な顔があった。一瞬、混乱のあまり息が止まる。
「おはようです……あか君……」
寝ている俺を覗き込んだまま降ってきた言葉に、ぎこちなく笑う。
「お、おはよう、桃音」
「あか君、案外と間抜けな顔した寝坊助さんです……結構待ったです……」
ふわりと肩からこぼれ落ちた髪が頬をくすぐって、俺はとりあえず仰向けになったまま両手を挙げ申し出る。
「とりあえず、起きるから、顔ち、近いのどうにかして……?」
目はもう完全に覚めたので、落ち着いて向かい合う。
「いきなりどうしたの? ってか鍵閉めてあった気がするんだけど……?」
「くろ君から密告を受けたです……あか君、秘密知ったです……?」
こちらの質問を素通りして、桃音が俺をまっすぐと見た。
その瞳は硝子玉のように色がないのに、どこかに強い意思が見えた。
「密告っていうか青葉と朝黄にはバレてるよ。でも知ったのは本当」
「なら、」
桃音が立ち上がる。
座り込んだままの俺を見下ろす形で、頬に手を伸ばす。
冷たい手が俺を上向かせて、瞳を覗き込まれる。
反らせない視線にとらわれる。
「私も、密告するべきです……?」
あか君の秘密、ぽつりと零されたその言葉に短く息を吸う。
俺の表情をすこし観察してから、桃音は飽きたように手を離した。
そして、無言で部屋を横切るとドアに手をかけてから振り返る。
「みんな、食堂にいるです……昨日のことの補足と説明するので来てくださいね、です……」
そうして、そのまま桃音は部屋を出て行く。
ぱたんと閉ざされたドアに俺は小さく口をつぐんだ。
put the finger on(~を密告する




