029。
あっという間の形勢逆転を、俺は間抜けに口を開けて見ていた。
ぱんぱんと手をはたいて、朝黄が床に叩きつけられ呻いている黒雪を見下ろす。
「ブラック、構って欲しいならもっと別の方法考えたらいいじゃんねー。まぁつまり何が言いたいって餓鬼臭いことしてんじゃねーよってことー」
声は和やかに聞こえるのに、纏った空気はひたすらに笑っていない。
「レッドに自分の位置とられるとか思ったんだろうけど心底僕らに迷惑じゃーん。かっこつけて暴君気取っても、甘えてるのバレバレだからねー。だから歓迎会やるって聞いて焦って帰ってきたんじゃんねー」
「え、焦って?」
「挙句、窓ガラス割って飄々としやがったじゃんねー」
本当にないわー、と首を傾げた朝黄に、いつの間にか俯いていた顔に黒雪が手を当ててくつくつと肩を揺らす。
「全く正しいな、朝黄」
「別に褒めてないからーその言い方うざいからー」
「なんだと、朝黄!」
ばっと顔を上げた黒雪の顔は真っ赤だった。
眠そうな顔でも冷めた顔でもなく、照れたよう怒ったように顔を赤くしている黒雪に今度こそ言葉がない。
朝黄が俺を振り返り、声がふわりと普段の調子に戻る。
「レッド、本当に気にしないでー。ブラックって僕らのこと大好きなんだー。だからレッドにヤキモチ焼いただけなんだよー」
「ヤキモチを焼いた、オレが? 何様のつもりだ、朝黄?」
「……そういうこと言うと絶交す」
「ヤキモチを焼いて何が悪い、オレが?」
朝黄の言葉を食い気味に、一瞬で黒雪が発言をひっくり返した。
その鮮やかさに久しぶりに乾いた笑いが零れた。
振り回された自分が馬鹿みたいだ。
dead on(全く正しい




