012
「あぁん? てめぇ、今なんつった」
「い、いえ、これは、その」
今にも掴みかかりそうな緑野に、逃げ腰になる。
でも、ここで逃げたらもう円滑なコミュニケーションが二度と取れない気がして、どうにか踏み止まった。
「す、すみませんっ! 悪気はなかったんです!」
顔を見ていられなくて、勢いよく頭を下げる。
下げてから、この態勢だと殴られそうになっても避けられないと気づくがもうそんなことは知らない。
そのまま頭を下げていれば、緑野がふん、と鼻を鳴らした。
「反省してんならしょうがねぇ。今回は許してやる」
「あ、ありがとうございます……」
「今度、ローシェルトバークスのことサボテン呼ばわりしたらぶっとばすからな。よく覚えとけ」
「…………あ、はい」
予想の斜め上を行く怒りの理由に目が遠くなる。
緑野の世界はこのサボ……いやロッ君で回っているようだ。
「お前、チビの紹介で越してきたんだったな」
「チビ?」
「あー、あいつなあいつ、あの寝起きが悪いチビ」
青葉のことだろうか。
寝起きが悪いのは初めて知った情報だけれど。
「あいつにもよろしく言っといてくれ。あいつは俺のこと避けやがるからな」
ロッ君を抱えたまま、緑野が背を向ける。
そして数歩歩いてから、思い出したようにこちらを振り返った。
「なぁ、どうせならチビに伝言頼む。そろそろ身長伸びたかって俺が言ってたってな。伸びてないなら鉄棒にぶら下がるのがいいらしいぞってな。よろしく伝えてくれ」
嫌味でなく純粋にそう言って、ひらひらと振られた手に、本日二度目の遠い目をする。
なんとなく青葉が緑野を避けている理由がわかった気がした。
get up on the wrong side of the bed(寝起きが悪い




