099。
世間様はもうクリスマス一色だ。
商店街はイルミネーションで輝いているし、流れる音楽はトナカイの鼻が赤いとか鈴が鳴るとかなんやらだ。
頼まれた買い出しを終えて、家路を辿るとそんな喧騒からも少しずつ遠ざかることになる。
そんな些細なことで少しだけ、感傷的な気持ちになった。
はじめは住むところが危うくなって、友人の青葉から紹介されアパートに入居することになった。
そこから変な住人たちとの生活が始まって、なんだかんだと楽しく賑やかな暮らしをした。
学校では文武両道のクールな美男子で通っているのに、低身長を言われると涙目になる青葉。
少し柄が悪く長身で、そのくせサボテンのロッ君に話しかけるなんて奇行を平然とやってのける緑野。
ふわふわした髪に人形みたいな綺麗な顔立ちなのに、口を開けば毒舌で彫刻刀を投げるなんて恐ろしいことをする桃音。
横暴でナルシストじみていて一見かっこいいのに、その実淋しがり屋でかまって欲しがりな黒雪。
それぞれに異端の血を四分の一ずつ持つ、彼ら変人奇人と過ごした日々。
決して穏やかではなかったその日常がいつしか失いたくない大切なものになった。
別れはどこにだって平然と転がっている。
悲劇なんてこの世のどこにだって存在する。
でも、だからこそ人は足掻くんだろう。
俺はそれが人として一番素晴らしいところだと思う。
顔を上げれば、もうそこはアパートの前だった。
感傷に浸っていた自分に苦笑して、ドアを開ければ、クリスマスの飾り付けをしていた少年がこちらを振り返る。
「お、やっと帰ってきたか」
「ただいま、緑野」
「みんな、もう準備できてんだよ。お前を待ってたんだ」
ほら、と手を引かれ食堂に足を踏み入れる。
振り返る面々はそれぞれに違う表情で俺を迎えた。
「遅い、待ちくたびれたぞ、オレは」
「赤城、買い出しありがとうな」
「私のトマトジュースあるです……?」
「ごめんごめん、遅くなった。トマトジュースもちゃんと買ってきたから」
買い物袋を持ち上げて笑えば、3人の向こうから声が届く。
「あっくん」
白いセーターを着た白夜が俺を瞳に移して微笑んだ。
「おかえり」
クリスマス仕様の食堂を皆で囲んで、笑い合う。
楽しんでいるのに、それでも欠けた椅子が気になって知らず知らずに顔が曇る。
「あっくん?」
俺を気遣うように白夜が眉を下げた。
ここにいる人数分に切り分けられたケーキにぽつりと言葉がこぼれる。
「本当にこれでいいのかな……だってこんなのおかしい。これじゃ何の意味もないよ」
「おかしいもなにもどうしょうもねぇことだろうが」
「でもさ!」
「吸血鬼の血を引く私の説明に文句あるです……? 私だってこんな結果は嫌です、でもあの出血量じゃ無理なことぐらいわかってたです、それでもギリギリまで待ってこの結果です、諦めて、としか言えないです……」
桃音はそこまで喋ると、俯いてケーキを一口食べる。
あの時、一番初めに動いたのが桃音で、その際に桃音の血の話を聞いた。
以前に俺の血を口に含んだことで情報を読み取ったことも本人の口から説明してもらった。
「でも、」
「これ以上はやめろ、赤城。俺たちが幸せじゃないなら、あいつも浮かばれない」
「でも!」
青葉にたしなめられても、収まらない気持ちに声を荒げれば、食堂のドアが開く音がした。
the juwel in the crown(最も素晴らしい部分




