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異世界配信革命〜追放された無能ポーターをバズらせる転生イベント屋、死の大地でダンジョン配信と領地経営を始めます〜  作者: プロテイン長田
第6章「追放者たちの居場所」

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第31話「魔族を匿う十歳領主が騎士団に問われます」

## 第31話「魔族を匿う十歳領主が騎士団に問われます」


### 【あらすじ】


 エリオットから居場所をもらったクレハは、その恩に報いるため、皆が寝静まった夜に一人でダンジョンへ向かった。


 そこで彼女を待ち受けていたのは、邪悪な気配を追ってきた騎士団長シルヴィアだった。魔族を警戒するシルヴィアへ、クレハは自ら武器を捨てて敵意がないことを示し、背後から迫った魔物から彼女を救う。


 それでも領地への影響を避けられないと悟ったクレハは、抵抗せず魔力封じと拘束を受け入れた。翌朝、エリオットはエマから彼女が騎士団に捕らえられたと知らされる。


### 【本文】


「領主殿。朝早くに呼び立ててしまい、申し訳ない」


 エマに起こされたエリオットが向かったのは、領内に仮設された騎士団の詰め所だった。


 簡素な木造の建物にも、入口には王国騎士団の紋章が掲げられている。その奥の部屋で待っていたのは、騎士団長シルヴィアと――後ろ手を縛られたクレハだった。


(……なんてことだ)


「……昨晩、ダンジョンでこの者を捕らえた」


 クレハに目立った傷はない。拘束も縄だけで、エリオットとの面会さえ許されている。


 最悪の事態には至っていない。そう理解しても、胸を締めつける焦りは消えなかった。


「……すまない、エリオット少年。軽率だった」


「待て。まずは我々の立場を表明しておこう」


 クレハを遮り、シルヴィアが口を開く。


「騎士団は、彼女を差し迫った脅威とは見なしていない。魔族ではあるが、今のところ敵意はないと判断した」


「それなら、すぐに縄を――」


「その前に答えてもらう。なぜ、彼女の存在を隠していた?」


 向けられた視線は、十歳の子どもに対するものではない。一つの領地を預かる貴族へ、責任を問う目だった。


「私もギルド職員も、結界内の怪しい気配について忠告した。だが領主殿は、魔族がいると知りながら黙っていた。何をするつもりだったのだ?」


 エリオットは膝の上で拳を握った。


 魔族を匿った。それは否定しようのない事実である。


「……騎士団長のおっしゃる通り、僕はクレハさんのことを隠しました」


「なぜ相談しなかった」


「あの時、あなたにクレハさんの存在を明かしていたら、彼女がここの領民であることを保証してくれましたか?」


「それは……」


 シルヴィアの眉がわずかに動く。


「魔族は王国中で忌避される存在だ。しかるべき措置を取っていただろう」


「では、今は? どうしてクレハさんは無事なんですか」


「ここだけの話にしてくれ」


 シルヴィアは声を落とし、エリオットとエマへ身を寄せた。


「彼女は捕縛の際、一切抵抗しなかった。それどころか、私が見落とした魔物を倒し、助けてくれさえした」


「だったら――!」


 エマが椅子から身を乗り出す。


「言いたいことはわかる。だが、その事実だけで解放はできない。現に騎士団内でも意見が割れている」


 エリオットは俯いたクレハを見た。


 彼女が夜のダンジョンへ向かった理由など、聞くまでもない。領地の役に立とうとし、見つかった後も自分たちを守るために抵抗しなかったのだ。


(このままでは、クレハさんは永遠に隠れて生きることになる)


 変えなくてはならない。処分の軽重ではなく、魔族というだけで忌避される前提そのものを。


 エリオットは立ち上がり、シルヴィアを正面から見た。


「クレハさんは、僕の領地の領民です」


「……領民だから隠した。ということか?」


「はい。今の情勢では、彼女を堂々と歩かせることはできない。だから、人の目から隠して安全を守りました」


「その言葉に偽りはないな?」


「誓って」


 シルヴィアは額へ手を当て、しばらく考え込んだ。


「事情は分かった。できる限り穏便に運ぶよう計らおう。だが、この件は王国へ報告しなければならない」


「そんな……!」


「厳しい処分が下る可能性もある。少なくとも、この王国――いや、この大陸にはいられなくなると考えておいてくれ」


 エマが息を呑む。


 死罪を免れただけでも、今は幸運なのかもしれない。けれど、クレハを再び一人で追放させる結末を、エリオットは受け入れられなかった。


「処遇が決まるまで、彼女は領主殿の基地の地下へ幽閉する。騎士の見張りも置かせてもらうぞ」


 クレハは促されるまま立ち上がった。最後まで抵抗する素振りはない。


 シルヴィアとクレハが退室すると、重い静寂が残った。


「エリオットさん、どうしましょう……」


「…………どう、しましょうね」


 逃がすだけでは、何も変わらない。王国へ逆らえば、領地で働く全員を危険にさらす。


 クレハを隠す必要のない存在へ変える方法。王国中の人間に、彼女が敵ではないと認めさせる方法。


「おい、エリオットの旦那ぁ!」


 扉を勢いよく開け、バルガスが飛び込んできた。後ろにはニック、カーネル、シグ、そして呆れ顔のリゼットまでいる。


「騎士団のやろーが魔族の姉ちゃんを連れて行っちまったぞ!? 一体何が――」


「クレハの姉さんは、捕まるようなことしてねえですぜ!」


「か、かわいそうですけど……魔族ですから、仕方ないのかも……」


「…………しかし、悪党ではない」


「あんた、どうするのよ」


 全員の視線を受け、エリオットは静かに答えた。


「なんとかします。必ず」


 そう言い残して部屋を出る。その背中を、エマは誰よりも心配そうに見つめていた。


◇◇◇◇◇◇


 その日の深夜、王都へ衝撃的な情報が走った。


 ――死の大地で、魔族が発見された。


 騎士団のどこかから漏れた噂は酒場から酒場へ、そしてライブクリスタルのコメント欄へと広がっていく。


『魔族が王国へ侵入したって本当か!?』

『死の大地なら前から潜んでたんじゃない?』

『今すぐ討伐しろ!』

『でも騎士団長を助けたって噂もあるぞ』


 恐怖、拒絶、そしてわずかな疑問。王国中が魔族の処遇を巡って騒ぎ始めた頃、さらに一つの通知が人々のライブクリスタルへ届いた。


「おい、BCD(バッド・クレイジー・ドッグス)の緊急配信だってよ!」


「こんな時に、今度は何をやらかす気だ?」


 王都の酒場で、男たちが一斉に配信を開く。


 画面に映ったのは、妙に神妙な顔で並ぶバッド・クレイジー・ドッグスの四人。そして、見る者の目を疑わせる配信タイトルだった。


【緊急】魔族と一緒に生活してました【魔族って案外いいやつなんじゃね?】


 同じ通知を基地で見たエマは、真っ青になってエリオットのもとへ駆け込んだ。


「エリオットさん! あの! 宣伝大使のみなさんが、勝手に配信を!」


「ええ……見ています。まったく……恐ろしい人たちですね」


「今すぐ止めないと――」


「いいえ。その必要は、あり……ません。おそらく」


 エリオットは流れ続ける夥しい数のコメントを、鋭い目で追っていた。


 これは――炎上する。間違いなく、王国中を巻き込む大騒動に。


 下手をすると、エマの配信がある種の“やらせ”であったことも露見する。


 しかし――エリオットの頭にはある革命的なアイデアが浮かんでいた。


 クレハを救うには、まず王国中に彼女を知ってもらわなければならない。彼女の本当の姿を知ってもらわなくてはいけない。


「…………彼らには、先に世間の反応を確かめてもらいましょう。当事者である僕たちが弁明するより、よっぽど効果的です」


 ――この騒動は、忌避されていた魔族を表舞台へ立たせる――前代未聞の配信へとつながる、最初の一手になる。


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