↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界配信革命〜追放された無能ポーターをバズらせる転生イベント屋、死の大地でダンジョン配信と領地経営を始めます〜  作者: プロテイン長田
第4章「追放者たちの逆転配信」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/39

第22話「元仲間が絶体絶命になるまで生配信します」

## 第22話「元仲間が絶体絶命になるまで生配信します」


### 【あらすじ】


 同じダンジョンへ挑む二組の配信が、王都中の注目を集めていた。


 エリオットの演出を受けた“バッド・クレイジー・ドッグス”は、エマに支えられながら五階層へ到達。一方、“レイド・スターズ”は大量の魔物を相手に、一階層から苦戦を強いられる。


 二組の実力が比較され始めたところで、エリオットは順調な探索を打ち切り、配信の“仕上げ”に入ると宣言するのだった。


### 【本文】


「“仕上げ”っつったか。どういう意味だ」


 バルガスはエリオットへ詰め寄った。


 五階層のセーフゾーンには、完成したばかりの転移門が淡い光を放っている。


「今、“レイド・スターズ”も、このダンジョンにいます」


 エリオットは落ち着いた声で告げる。


「おそらく、今は二階層か三階層にいるでしょう」


「レイド・スターズが……」


 エマの表情が曇った。


 頭に浮かんだのは、ルシアンではない。追放に反対できなかったことを今も悔やみ、それでも自分を案じてくれたリゼットだった。


「そりゃ、本当か!?」


 バルガスの顔が一気に明るくなる。


「お頭ぁ! こりゃあチャンスですぜ!」


「待ってください!」


 カーネルが慌てて二人の間へ入る。


「以前、配信へ乱入して痛い目を見たの、忘れたんですか!?」


「知るか! こりゃ、また突撃するしかねえ!」


「そうこなくっちゃ!」


 バルガスとニックは、すっかり乗り気だった。


 シグは黙々と刀を鞘へ収め、すでに出発の準備を終えている。


 盛り上がる四人を横目に、エマはエリオットのそばへ歩み寄った。


「……エリオットさん。みんなの様子は?」


「苦戦、というほどではないでしょう。ただ、僕たちと比べれば、かなり手こずっているようです」


「そう……ですか」


 エマの両手が、胸元で固く組まれる。


「気になりますか?」


「それは……もちろん」


「あなたを追放したパーティーですよ」


「それでも、です」


 迷いながらも言い切ったエマを、エリオットは嬉しそうに見上げた。


「では、決まりですね」


 エリオットは配信魔導具へ手をかける。


「皆さん! ここからは“レイド・スターズ”へ合流するために動きます!」


「盛り上がってきたぜ!」


 バルガスが太い腕をまくる。


「お頭、行きやしょう!」


「うう……僕は反対なんですが……」


「……是非もなし」


 四人が三階層への登り階段へ向かう。


 エマも魔導袋を背負い直し、不安を振り払うように前を見た。


(リゼットちゃん……待ってて)


 しかし、彼女たちは知らない。エリオットが描いた“仕上げ”は、単なる人気配信への突撃ではなかった。


◇◇◇◇◇◇


 ――ダンジョン、三階層。


 “レイド・スターズ”は通路の中央で、群がる魔物へ武器を構えていた。


「ルシアン、これ……まずいわよ」


 ヴェロニカが、配信へ拾われないほどの小声で警告する。


「分かっている」


 ルシアンは苛立ちを表情に出さず、剣についた汚れを振り払った。


 彼らの配信魔導具は一人につき一台。


 さらにパーティー全体を映す一台がある。


 エリオットのような一括管理ではないため、全配信を即座にミュートして、内密に作戦会議を行うことができなかった。


『レイド・スターズ、大丈夫か?』

『さっきから全然進んでないぞ』

『ガレスの盾、傷だらけじゃないか?』


(どうなっている……!)


 ルシアンはコメントを一瞥し、奥歯を噛む。


(奴らは、どうやって五階層まで進んだ!?)


 戦闘を重ねるたび、魔物を倒す速度が落ちていく。


 誰も口には出さない。


 弱音が配信へ乗れば、迷惑系配信者との比較で不利になると分かっているからだ。


「きゃあっ!?」


 その瞬間、魔物の爪がミレイユへ迫った。


「危ない!」


 ガレスが割って入る。

 

 だが、大盾は間に合わない。


「ぐっ……!」


 鎧の上から攻撃を受け、ガレスの巨体が床を滑った。


「ヴェロニカ!」


「分かってるわよ!」


 ヴェロニカが回復魔術を放つ。


 白い光に包まれたガレスは立ち上がり、大盾を構え直した。


 だが、同じような場面は、すでに何度も繰り返されている。


 コメント欄にも、心配の声が増えていく。


「ルシアン。私、そろそろ魔力が……」


「何……? 魔力回復薬はどうした」


「それが――ないのよ」


 ルシアンが初めて表情を崩した。


「出発前に用意したはずだぞ」


「あの新ポーターが、積み荷から外したのよ」


 ヴェロニカはミレイユを睨みつける。


「“追放ポーターが一人で挑めるダンジョンに、そんなものはいらない”って」


「だ、だってぇ……荷物を軽くしたほうが、たくさん素材を持って帰れると思ったんですぅ」


 ミレイユは魔導袋を抱え、身を縮めた。


「……クソッ」


 ルシアンは再び剣を構える。


(このまま無様に撤退する姿を見せるくらいなら、配信を止めるべきか……?)


 彼が考えたのは、仲間の状態ではない。自らのブランドと人気を守るための最善策。


 その思考が、判断を遅らせた。


 配信でどう見えるかを意識するあまり、彼らは疲労も、負傷も、残りの魔力も、互いに正確には伝えていない。


 ルシアンが知らないまま、仲間たちはすでに限界へ近づいていた。


 魔物の一体が、ヴェロニカへ飛びかかる。


 彼女を守るのはタンクの仕事。しかし――


「ガレスっ!!!!」


 リゼットの叫びが、ダンジョンに響いた。


 直後、配信画面が捉えたのは――


 ヴェロニカを庇い、魔物の鋭い爪に防具を貫かれたガレスの姿だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。