↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界配信革命〜追放された無能ポーターをバズらせる転生イベント屋、死の大地でダンジョン配信と領地経営を始めます〜  作者: プロテイン長田
第3章「追放者たちの領地経営」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/39

第19話「迷惑配信者を領地の宣伝大使に任命します」

## 第19話「迷惑配信者を領地の宣伝大使に任命します」


### 【あらすじ】


 エリオットに救われ、旧ノクスヴェルト探索基地へ招かれた迷惑系配信者“バッド・クレイジー・ドッグス”。


 彼らはエマの歓待を受けながらも領地経営を嘲笑し、無断で彼女のお墨付きを名乗ると、ダンジョン攻略開始を宣言してしまう。


 配信終了後、身勝手な客人たちの前へ姿を現したエリオットは、穏やかな笑顔のまま「このままダンジョンへ行ったら死にますよ?」と告げ――!?


### 【本文】


「ですから、みなさんの魅力は、向こう見ずな挑戦と――それに伴う、ある種の“断罪”なんです」


 旧ノクスヴェルト探索基地の食堂。


 古びたテーブルを挟み、エリオットと“バッド・クレイジー・ドッグス”の四人は向かい合っていた。


「ど、どういう意味だ、てめぇ!」


 盗賊風の男が椅子を蹴って立ち上がる。


「そのままの意味ですよ。みなさんの視聴者は、一部の熱狂的な方々を除けば、みなさんが酷い目に遭うことを期待しているんです」


「な、なんて酷いことを……!」


「承知の上で配信しているものと思っていましたが、違うんですか?」


 三人から睨まれても、エリオットは子供らしい微笑みを崩さない。


 その横に座るエマだけが、今にも喧嘩が始まるのではないかと青ざめていた。


「面白い“意見”だなぁ……」


 ただ一人、お頭は真剣な目でエリオットを見ていた。


 椅子の背にもたれていた巨体を起こし、低い声でエリオットを威嚇する。


「喧嘩を売ってんじゃねえなら、坊ちゃんの意見を聞かせてくれよ」


「ええ。今回、みなさんは半ば強引にこの地を訪れ、領主である僕の許可を得ずにダンジョンへ行こうとしている」


「…………それで?」


「正直に申し上げます。あのダンジョンは、みなさんの実力では一階層すら突破できません。全滅は必至です」


 食堂が静まり返った。


 彼らはつい先ほど、死の大地の魔物に追われ、エリオットに救われたばかりである。誰も子供の戯言だと笑い飛ばすことはできなかった。


「しかし――“演出”が入れば、話は別です」


「…………なるほどなぁ」


 お頭が組んでいた足をゆっくりと組み直す。


「追放ポーターのお嬢ちゃんの配信も、アンタの“演出”ありきってことか」


 エマの肩がわずかに跳ねた。


「すべてではありませんよ。最終的にはエマさん自身の力で成し遂げていますから」


 エリオットは即座に言い切った。


「へえ。なら聞かせてくれよ。坊ちゃんの“演出”とやらを」


「その前に、ひとつ条件があります」


 エリオットは鞄から一冊の魔術書を取り出し、テーブルの中央へ置いた。


「僕と契約をしてください。みなさんには、この領地の宣伝大使になっていただきます」


「せ、宣伝大使ぃ!?」


 盗賊の男の素っ頓狂な声が響いた。


「正気とは思えねえな。俺たちゃ冒険者ギルドからも目ぇつけられてる札付きだぜ?」


「お頭ぁ……それ、自分で言うんですかい?」


「お前ぇは黙ってろ――で?」


「そこに関しては問題ありません。むしろ、あなた方のようなアウトローこそ、この場所の宣伝にうってつけです」


 お頭は笑った。


「誰も寄りつかねえ死の大地には、俺たちみてえな無法者がお似合いってか」


「少し違いますね」


 エリオットは人差し指を立てる。


「完全な無法者――王国に追われるような方々はお断りです。みなさんは素行こそ悪いですが、獄に繋がれる一線は越えていない。そこが非常に重要です」


「褒められている気がしませんねぇ……」


 魔術師の男が力なく呟く。


「……で、結局俺たちゃ何をすればいい?」


「僕が配信の“演出”に関わっていることを口外しない。それさえ守れば、あとは普段通り、自由にダンジョンを探索していただいて結構です」


「俺たちは一階層で全滅するんじゃなかったのか?」


「僕の“演出”があれば大丈夫です」


「……胡散臭え」


 疑いの目を向けられても、エリオットは涼しい顔だった。


「じきにここは多くの冒険者で溢れます。そうなれば、別にみなさんでなくても構わないのですが――」


「……チッ」


 お頭はわざとらしく舌打ちし、机へ太い肘を乗せる。


「新発見のダンジョンを好きに配信できる。それは魅力的だわな」


「お頭、まさか乗るんですかい? こんな子供の話に――」


「年齢は関係ねえ。俺たちゃ配信のネタになることなら、なんだってする」


 お頭は、三人の顔を順に見回した。


「今回のヤマはでかい。うまくいきゃ、一気に超人気配信者の仲間入りだ。街をでかい顔で歩けるようになるぜ?」


 三人が息を呑む。


「貴族の坊ちゃん――いや、エリオット。その話、乗らせてもらうぜ」


「ありがとうございます。では、こちらの契約の魔術書にサインを」


「…………癪だなぁ、こっちが乗るのもお見通しってか?」


 最初に、グループのリーダー、お頭のバルガスが署名する。


 続いて盗賊風の男ニック、刀使いのシグ、魔術師のカーネルも名前を書き込むと、四人の署名が淡く輝き、魔術書へ焼きついた。


 これで契約は成立。


 エリオットの領地に、最初の宣伝大使が誕生した。


◇◇◇◇◇◇


「エリオットさん、本当に大丈夫なんですか? あんな人たちと契約して……」


 探索準備のため、バッド・クレイジー・ドッグスへ一室を貸したあと。


 契約の一部始終を見守っていたエマが、不安そうに尋ねた。


「リスクはゼロではありませんが、十分なリターンが期待できる契約ですよ?」


「リスク、あるんですか……?」


「彼らが配信のネタ欲しさに、僕のことを暴露する可能性はあります。実家には多少の風評被害が出るでしょうね」


「それ、大丈夫じゃないですよね!?」


「エマさんの配信にはノーダメージなので、問題ありません」


 エマは、それ以上深く考えないことにした。


「それで、どうでしたか? クレハさん」


「えっ?」


 エリオットが何もない空間へ呼びかけた直後、エマの背後に闇が滲んだ。


 その中から、黒髪の女剣士が音もなく姿を現す。


「きゃあっ!? クレハさん! どうして毎回、私の背後を取るんですか!?」


「ああ。一階層はあらかた確認してきた。いつでも指示できる」


「無視しないでください〜!」


 涙目になるエマの横で、エリオットは満足げに頷いた。


 バッド・クレイジー・ドッグスがエマへ絡んでいる間に、すでに次の一手は打ってある。


 今夜のダンジョン配信。


 彼らの視聴者が期待する“断罪”を、この領地を広く知らしめる最高の宣伝へ変えるために――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。