↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界配信革命〜追放された無能ポーターをバズらせる転生イベント屋、死の大地でダンジョン配信と領地経営を始めます〜  作者: プロテイン長田
第3章「追放者たちの領地経営」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/39

第15話「追放した元仲間の配信が気になっています」

## 第15話「追放した元仲間の配信が気になっています」


### 【あらすじ】


 死の大地で領地経営を始めたエリオット。


 食料を確保するため、エマとともに基地の庭を耕し、クレハには周辺の探索を依頼する。


 クレハが発見したのは、カオスワームなどの強力な魔物が一階層から出現するダンジョンだった。


 エリオットは危険なダンジョンを配信で宣伝し、冒険者を領地へ呼び込もうと考える。


 カオスワームが“レイド・スターズ”でも全力で戦うほどの相手だと知るエマは逃げようとするが、エリオットに捕まってしまうのだった。


### 【本文】


「リゼット。王都を出ていたんだな」


 王都にある、とある酒場。


 一番奥の席に、豪華な装備を身につけた男が座っていた。


 磨き上げられた銀色の胸当て。


 椅子へ立てかけられた、美しい装飾の直剣。


 男の前で、リゼットは顔を伏せて立っている。


「……まあ、オフの日にどこへ行こうが勝手だが――いかんせん、妙なタイミングでな」


 酒場には二人と店のマスターしかいない。


 普段なら冒険者で賑わう時間だが、すでに人払いが済んでいた。


 男が指を動かす。


 マスターは黙ったまま、壁に設置されたライブクリスタルへ魔力を流した。


 光が広がり、“とある配信”が映し出される。


『皆さん! 昨日は驚かせてしまってごめんなさい!』


 元気よく頭を下げるエマが、画面いっぱいに映っていた。


『私、なんとか逃げ切りました! そして今日は、死の大地で新たに発見されたダンジョンの攻略に来ています!』


 死んだと思われていたエマが無事だったことを喜ぶコメントが、画面を埋めていく。


 同時に、危険な土地で再び配信を行う彼女を心配する声も流れていた。


「あのエマが、一人でダンジョン配信……にわかには信じがたいよなあ」


 男は頬杖をつき、リゼットを見上げた。


「なあ? そうだろ?」


 鋭い視線が突き刺さる。


「はい……そうですね。驚きです」


「……チッ」


 男の舌打ちに、リゼットの身体がびくりと反応した。


「うちの人気を使って、華麗なる転身ってか?」


 男は椅子の背へ身体を預ける。


「ヴェロニカの話じゃ、どこぞの貴族の坊ちゃんとパーティーを組んでるって聞いたが――」


 ライブクリスタルへ一瞥をくれ、口元を歪めた。


「まあ、あの女の使い方をよく心得てるってのは、評価に値するな」


 リゼットの拳に力がこもる。


「おいおい! なんだよ、その顔は!?」


 男は愉快そうに笑った。


「お前も、あいつの追放には賛成だっただろ? いや、“反対しなかった”ってのが正解か? どっちでもいいがな」


「…………」


「昨日の配信は驚いたぜ。売名のために、うちの元メンバーを死の大地へ送り込んで殺したのかと思ったが……どうやら、その貴族の坊ちゃん、なかなかのやり手らしい」


「もう……やめて」


 リゼットが、震える声で呟く。


「こうやって死ぬか死なないかの配信を続ければ、確かに登録者は増える。胸糞悪い下衆のやり方だが、理にはかなってる」


「違う……! あの子のやり方は――」


 そこまで口にして、リゼットは息を呑んだ。


 男の目が細められる。


「おーいおいおい!!」


 男が勢いよく立ち上がった。


「やっぱり会いに行ってたのか!? ええ!? リゼットさんよぉ!」


 男が目の前のテーブルを蹴り上げる。


 大きな音を立てて倒れ、酒の入っていない杯が床を転がった。


 リゼットが一歩、後ずさる。


「俺はな……ルールを守らねえ奴が嫌いなんだよ」


 男は倒れたテーブルを挟み、リゼットへ近づいた。


「あの女もそうだ。言ったことも満足にできねえ。だから切った。お前もわかるよな?」


「…………」


「もう一度言う。追放された奴は、もう仲間じゃねえ。二度と勝手な真似すんな」


 低く告げられた言葉に、リゼットの手が震える。


 男は何事もなかったかのように座り直した。


 それから、隣の椅子を指先でトントンと叩く。


「じゃ、分かったら、この配信を一緒に見ようぜ」


「……え?」


「追放されたポンコツが、死の大地のダンジョンでどうなるか。お前も気になるだろ?」


「…………はい」


 リゼットは震える手を押さえ、男の隣へ腰を下ろした。


「マスター! テーブルの弁償代は会計につけといてくれ」


 男――“レイド・スターズ”のリーダー、ルシアン・ヴァルモントが、倒れた机を顎で示す。


「この俺が払うんだから、文句はねえよな?」


 マスターは、黙って頷く。


 ライブクリスタルには、巨大なカオスワームと対峙するエマが映っていた。


◇◇◇◇◇◇


『エマさん! 今回は討伐が目的ではありません! 少し戦って、危険になる前に撤退すれば大丈夫ですからね!』


 死の大地にある、新発見のダンジョン。


 その一階層で、エマはカオスワームと向き合っていた。


 巨大なミミズに似た身体。


 円形に開いた口の中には、何重もの鋭い牙が並んでいる。


「そ、それでも、怖いものは怖いんですけどぉ……!」


 カオスワームが、地面を這って迫る。


 エマは悲鳴を上げながら横へ跳んだ。


 直後、彼女が立っていた場所を、巨大な口が抉り取る。


 エリオットが操る風が、エマの身体をわずかに押していた。


 その補助で、エマが華麗な回避をした“ように映る”。


 そして今回も、見た目の上では一対一の戦闘である。


 ダンジョンの奥ではクレハが闇魔術で姿を隠し、他の魔物を間引いていた。


 エマの周囲へ余計な敵を近づけず、逃走経路も確保する。


 画面に映っていないだけで、彼女は安全を守るための役割を担っていた。


(本当に……クレハさんと出会えてよかった)


 最終的に、クレハはエリオット領の領民となった。


 魔族であることを秘匿する代わりに、彼女は配信や領地経営へ協力する。


 魔王国領を追放され、この大陸にも居場所がないクレハにとって、死の大地は人目を避けて暮らせる数少ない場所だった。


 両者に利益のある契約である。


 当初は“領民”という、人間族に下ったような立場に難色を示していた彼女だったが、領地が発展した暁には重役へ抜擢すると持ちかけると、クレハは『そこまで言うなら仕方あるまい』と、まんまとエリオットの口車に乗った。


『今です!!』


 そんなことを考えながらも、エリオットはカオスワームの動きから隙を見つけ、エマへ合図を送る。


「はああああっ!」


 風がエマの踏み込みを加速させる。


 同時に、エリオットの風魔術がカオスワームの頭部を押さえつけ、動きを一瞬だけ鈍らせた。


 エマの短剣が、その頭部へ命中する。


 硬い皮膚の表面に、わずかな傷が刻まれた。


 当然、与えたダメージは少ない。


 しかし、大型の配信魔導具が捉えるエマの必死な表情と、宙に浮かぶカメラ二号が映す巨大な魔物の全景。


 二つの映像を切り替えることで、画面には大迫力の戦闘が展開されていた。


『当たった!』


『あれに近づけるだけですごい』


『一階層でカオスワーム!?』


『このダンジョン、どこにあるんだ?』


『下層で獲れる魔水晶、やばいんじゃないか!?』


 コメントには、エリオットが期待していた反応が流れ始めていた。


「く、くそ~! なんて強いんでしょう~!」


『エマさん、棒読みすぎです!』


「きょ、今日は、この辺にしておきましょう~」


 直後、エマは白々しい演技を炸裂させ、出口へ向かって走り出す。


 カオスワームも、その背後を追った。


 しかし、エリオットの風魔術が追撃を妨げているため、追いつくことはできない。


 エマが無事にダンジョンの外へ飛び出す。


 そのまま配信を終えるはずが、エマは出口で足を止め、カメラへ振り返った。


 配信を終えようとしていたエリオットの手が止まる。


「……今日は逃げます! で、でも、私、もっと強くなって――必ずこのダンジョンに戻ってきますね!」


 ――エリオットは目を見開いた。


 今の台詞は、カンペに出していない。事前に伝えてもいなかった。エマが自分で考え、自分の意思で視聴者へと伝えた言葉だった。


 コメント欄に、応援の言葉が次々と流れ始める。


 エリオットはエマの笑顔を数秒間映してから、今回の配信を終了した。


◇◇◇◇◇◇


「棒読みセリフ以外は、素晴らしい配信でした」


「うう、それは忘れてください……」


 拠点へ戻ったエリオットたちは、配信結果を確認していた。


 登録者数は、以前ほど急激には伸びていない。


 それでも一万三千人を超え、配信中の視聴者も安定して八千人前後を維持していた。


「これは……すごいのか?」


 表示を覗き込みながら、クレハが尋ねる。


「上々です。クレハさんも、ご苦労さまでした」


「あ、ああ……あの程度なら何でもない」


 クレハは少し得意そうに胸を張った。


「これで、食料を分けてくれるんだよな?」


「もちろんです。皆で夕食にしましょう」


「あのお芋じゃないですよね?」


 エマが不安そうに尋ねると、クレハが思い出したように手を叩いた。


「そうだ。ダンジョンから、こんなものも持ち帰ってきたぞ」


 クレハは荷物から、あるものを取り出した。


 それは、基地の庭へ転がしたものとよく似た芋だったが――


 黒紫色の皮は淡い乳白色に変わり、禍々しい魔力も漂っていない。


「どういうわけか、このような無味無臭の芋が群生している場所があった。人間族にとっては都合が良いかと思い持ってきたが――」


「無味無臭の芋……?」


 エリオットは一つを手に取り、じっと観察する。


「クレハさん……その周辺には、どんなモンスターが?」


「ん? そうだな……マッドスライムエリートが異様に湧いていたな。都合のいい餌でもあったんじゃないか?」


(なるほど……これは――)


 配信による宣伝。


 ダンジョンを目当てにした人々の誘致。


 そして、人が暮らすための食料確保。


 領地経営と配信の両軸が、少しずつ軌道に乗り始めた――ように思えた。


 一方、王都では。


 死の大地で、通常のダンジョンなら中層、場所によっては最下層に出現するほどの魔物が、一階層から現れるダンジョンが発見された。


 その噂が、冒険者たちの間で急速に広まり始めていた。


 もちろん、それはエリオットの狙いどおり。


 しかし、その配信に目をつけたのは、新天地を求める冒険者たちだけではなかった。


◇◇◇◇◇◇


 配信が終わっても、ルシアンはライブクリスタルを見つめ続けていた。


 隣に座るリゼットは、俯いたまま動かない。


「一階層からカオスワーム、か」


 ルシアンの口元に、ゆっくりと笑みが広がった。


「次の配信、決まったな」


「……え?」


「“レイド・スターズ”が、そのダンジョンを攻略する」


 ルシアンはそう言うと、リゼットを置いて酒場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。