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最初の夢


ジェヒは、「田舎」と呼ばれる小さな町で生まれ育った。


この町で一番高い建物といえば、ジェヒが暮らしている七階建てのアパートくらい。

アパートの前には大通りよりも広い田んぼ道が広がっていて、静かで、のどかで、少し退屈な田舎町だった。


市場へ行こうと思えば、バスか車で十分以上は出なければならないほど小さな町で、デパートどころか、大型スーパーやコンビニ、ましてや有名チェーン店なんて一つも存在しなかった。


それでもジェヒは、この町が大好きだった。


小さな町だからこそ、住んでいる人たちはみんな顔見知りで、その分だけ情も深かった。

ジェヒも同じだった。出会う人みんながジェヒを知っていて、ジェヒもまた彼らを知っている。


友達の両親はもちろん、叔父さんやおばあちゃん、親戚のおばさんたちの顔まで全部わかるくらい、人と人との距離が近い町だった。


ジェヒは、そんなこの町がとても心地よかった。


けれど、今日は少し違っていた。


今日はジェヒの高校入学の日だった。


ジェヒが通うことになるこの高校は、近隣の町を合わせても唯一の高校だった上に、田舎の学校だから成績が取りやすい——そんな根拠のない噂が、いつの間にか周辺地域の学生たちの間で広まっている学校でもあった。


そのせいで、毎年入学してくる新入生のうち、地元出身者はせいぜい二十人ほど。

その代わり、高校のない隣町の生徒や、噂を聞きつけてやってきた他地域の学生が七十人近くもいた。


だからだろうか。


新しい友達に出会える期待が半分。

知らない土地から来た人たちへの警戒心が半分。


幼いジェヒの胸は、いつもよりずっと落ち着かなかった。


「もう行くの?」


換気のためにベランダの窓を大きく開けながら、母が尋ねた。

まだ冷たい朝の空気が、一気に部屋の中へ流れ込んでくる。


「うわ、寒っ。教室も寒いだろうし、もう少し時間合わせて出れば?」


「大丈夫。友達と同じクラスになったか気になるし、早く行って確認したい。」


ジェヒは制服のジャケットを羽織りながら答えた。


母は「好きにしなさい」という顔をしながら、冷蔵庫からチョコレートミルクを一本取り出してジェヒに渡す。


「うちの娘も、もう高校生かあ。本当に大きくなったね。」


母はふざけたように笑いながら、ジェヒのお尻をぽんぽんと軽く叩いた。


ジェヒはそんな母を背に、早々に玄関を出た。


気分が浮き立っているからだろうか。

今日はいつもより、朝の空気がやけに爽やかに感じられた。


ジェヒの住むアパートから学校までは、歩いて十分もかからない距離だった。

アパート前の田んぼ道の脇を通れば、それすら五分ほどに短縮できるくらい近い。


ジェヒはしばらく、大通りへ出る道と田んぼ脇の近道の入口の前で立ち止まり、どちらへ行こうか迷った末、結局近道を選んだ。


一分でも早く学校に着きたかったのだ。


ただ、この近道には一つ欠点があった。


終わり際あたりで、一メートル近くはありそうな排水路を飛び越えなければならないのだ。


運動神経がそこまで良くないジェヒは、毎回そこを飛び越えるたび着地が不安定だったため、普段はあまりこの道を選ばないようにしていた。


幸い、一ヶ月ほど前に誰かがその上に丈夫な木の板を渡してくれたおかげで、それ以来は楽に通れるようになっていた。


ジェヒは道端に咲く名前も知らない野花を眺めながら、足早に歩いていった。


「えっ、うそ! どこ行ったの!?」


ジェヒが近道の終わり——つまり問題の排水路までたどり着いた時だった。


本来そこに置かれているはずの木の板が、どこにも見当たらなかったのだ。


ここを渡らないと学校への近道に出られないのに——最悪だった。


しかも今日はスカートを履いている。


無理に飛び越えようとして、この前みたいに足を踏み外して転びでもしたら……。


今日初めて着た新品の制服が汚れるのはもちろん、入学初日から運勢まで最悪になりそうだった。


だからといって、今来た道を戻るのもかなり面倒だった。


『橋代わりになりそうな板とか棒とか、どこかにないかな……。』


ジェヒは目を大きく開き、辺りをきょろきょろ見回し始めた。


「ない……全然ない。」


しばらく探してみても、橋代わりになりそうなものは見つからない。


結局、ジェヒは深いため息をついた。


「最初から大通りで来ればよかった……うわっ!」


頭を抱えて嘆いていた、その時だった。


排水路の向こう側、木々の隙間から誰かが歩いてくるのが見えた。


「ねえ、手伝おうか?」


ジェヒと同じ制服を着た男の子だった。


きちんと整えられた髪。綺麗な肌。しっかり着こなした制服。

そして百七十八センチくらいはありそうな高身長。


雰囲気からして同じ一年生のようだったが、ジェヒには見覚えのない顔だった。


ジェヒが知らないということは、きっと他地域から来た新入生なのだろう。


少し警戒していたからだろうか。


ジェヒは返事をすることも忘れたまま、その男の子をじっと見つめていた。


すると彼は照れくさそうに笑った。


「ごめん。先に挨拶するべきだったよね。」


その言葉でようやくジェヒも我に返り、不器用な笑みを返した。


「あ、こんにちは。」


男の子は肩にかけていたクロスバッグを外し、近くの木に立てかけながら尋ねた。


「向こう側に渡りたいんだよね?」


ジェヒはこくりと頷いた。


「ここに大きな板があったんだけど、なくなっちゃって……。」


「ああ、そうなんだ。」


男の子は排水路の近くまで歩み寄った。


「俺、イ・ジョンウ。君は?」


ジョンウはジェヒへ向かって手を差し出した。


まるで「掴んで」というように、軽く顎を動かしながら。


ジェヒは少しだけ迷ったあと、その手をぎゅっと握った。


そして勢いよく右足を排水路の縁へ乗せる。


「キム・ジェヒ。」


「ジェヒ、か。」


ジェヒの手を握るジョンウの手に、ぐっと力が入った。


「はい、できた。」


気づけばジェヒは排水路を渡り切っていた。


ジョンウが支えてくれたおかげで、着地も危なげなかった。


「あ、ありがとう。」


ジェヒがお礼を言うと、ジョンウは「こんなの大したことないよ」という顔をしながら、地面に置いていたバッグをまた肩にかけ直した。


しばらく、気まずい沈黙が流れる。


なんとなく居心地が悪くなったジェヒは、もじもじと歩き始めながら、顔は向けないまま少しだけ振り返って尋ねた。


「でも、なんでここにいたの? ここって地元の人しか知らないような近道なのに。」


「あ、そうなの? どうりで道が結構大変だと思った。」


ジョンウは飄々と答えた。


ジェヒは泥で靴を汚さないよう慎重に歩きながら、さらに質問を続ける。


「まだ登校まで三十分もあるのに、君も早いね。」


「うん。こんなに早く着くとは思わなかった。明日からはもっと遅く出ようかな。」


「そっか。」


ぬかるんだ道を抜け、大通りへ出ると、二人の前に大きな校門が現れた。


小さな町だからか、防犯にはあまり厳しくなく、校門は一年中ずっと開きっぱなしだった。


「ところで、どこに住んでるの?」


「この町。数週間前に引っ越してきたんだ。」


ジョンウが答える。


「あ、そうなんだ。前はどこに住んでたの?」


「うーん。」


ジェヒが道路を渡ろうとした瞬間、ジョンウは素早くジェヒのジャケットの裾を掴み、自分の方へぐっと引き寄せた。


「危ない。」


「えっ……?」


突然のことに戸惑う間もなく、大きな車が二人の前を勢いよく通り過ぎていった。


「うわ、びっくりした……。」


車が通り過ぎる風で、ジェヒの前髪がふわりと揺れる。


「あ……ありがとう。」


驚いた胸に手を当てたまま、ジェヒは小さな声で呟いた。


ジョンウは左右を確認し、車が来ないことを確かめてからようやくジェヒと一緒に道を渡った。


その間もずっと、ジェヒのジャケットの裾をしっかり握ったままだった。


道を渡り終えてから、ようやく手を離す。


「俺、ソウルから来たんだ。ここ、父さんの故郷だから。」


「あ、そうなんだ。じゃあ、うちの家族が知ってる人かも?」


「うーん、どうだろ。」


ジョンウは首を傾げながら、小さく呟いた。


「ここに戻ってくるの、すごく久しぶりらしいから。」


「ジェヒー!」


その時、二人の背後から聞き慣れた声が聞こえた。


ジェヒの一番仲の良い友達、ヒョンジュの声だった。


振り返ると、ヒョンジュが明るく手を振っている。

その後ろでは、他の生徒たちも次々と校門をくぐり始めていた。


ジェヒも軽く手を振り返す。


「じゃあ、俺先に行くね。」


ジョンウが言った。


「友達とゆっくり来なよ。」


「あ、うん。先行って。」


ジョンウは頷きながら、後ろ向きにゆっくり歩き始めた。


ジェヒが軽く手を振ると、その様子を見たジョンウがふっと笑う。


「同じクラスだったらいいな。」


ジョンウは眩しいくらい明るく笑いながら言った。


「祈りながら歩いていかなきゃ。」


両手を合わせ、祈る真似をしながら、さらにいたずらっぽい表情を浮かべる。


本当に、澄んでいて明るい笑顔だった。


「これからよろしくね、ジェヒ。」


「う、うん。あとでね!」


学校へ向かって歩いていくジョンウの後ろ姿を見ていると、なぜだか胸がどきどきした。


顔がもっと熱くなる前に、ジェヒは慌てて顔を背ける。


心臓の音が耳を伝って喉の奥まで響いているみたいだった。


「同じクラスだったらいいな」という言葉が嬉しかったのか。


それとも、ただ新しい出会いへの小さなときめきだったのか。


よくわからない。


でも、一つだけ確かなことがあった。


『私も……同じクラスがいい。』


同じ気持ち。


火照った両頬にそっと手を当てると、その熱がそのまま手のひらへ伝わってきた。



——

ジェヒがジョンウと初めて出会った日。


今から十五年前の春。


名前も知らない野花が咲いていた、あの季節。


十七歳になった年。


高校の入学式の日。


あの「近道」での出来事だった。

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