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天気・晴れ。
修練場にて訓練する騎士団を、執務室の窓から覗き見る。
サーシャ、十七歳。幼い頃に両親を亡くし、騎士団団長の養い子として騎士団と共に育ってきた。
幼い頃から騎士団の訓練に混ざったりしていたのだが、いかんせんどこかに運動神経を置き忘れてきたのか、剣も魔法もからっきしの才能だ。
騎士団員になる夢は早々に諦め、それならばと持ち前の記憶力を活かして、副団長の秘書官として騎士団に貢献している。
副団長・ラインハルト様。サーシャの直属の上官であり、幼馴染であり、共に過ごしてきた家族である。彼も、騎士団長に引き取られた孤児のひとりだった。
兄のように、共に育ち歩んできた彼に、サーシャは淡い恋心を抱いている。
まっすぐに腰まで伸ばされた黒髪に、出不精な白い肌。顔の半分を覆う大きな丸メガネ。
子供の頃から読書が好きで、昼も夜も読書に明け暮れていた結果、知識は頭の中に詰め込まれたが、目はどんどん悪くなっていった。
秘書官の制服も着崩すことなくマジメに着て、おしゃれな女の子とは程遠い、垢抜けない芋くさい容姿。
つい、癖となってしまった溜め息を吐いた。
ラインハルトは、年々格好良くなっている。
太陽を受けて輝く金髪に、理知深さを秘めた碧眼。いいところのご令嬢がこぞって夢中になる色男。
青を貴重とした騎士団の隊服も良く似合っており、彼のために拵えられたのかと思うほど。
小説で例えるなら、彼はメインキャラクターで、私は町娘Aとかそのへんのモブだろう。
「――好きなんだよなぁ」
窓の外、訓練に精を出すラインハルトを見つめる。
恋心を、伝えるつもりはない。
伝えても、彼は困ってしまうだろう。だって兄と妹のように過ごしてきたのだ。
なによりも、聖女様から釣書が届いたのだ。
きっとラインハルトは聖女様と結婚するだろう。聖女様と言えば、大層美しい人だと聞いている。近々、顔合わせもさせよう、と養い親が言っていたのを盗み聞いた。
「……親離れ、兄離れの時かなぁ」
ずっと、頭の中で考えていることがある。
懐に忍ばせた辞表、いつ提出しよう。




