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エピローグ

 

 腕の中に抱いた少女の名前を呟く。


 細く白い肢体。艶やかな黒髪。満天の星空を映し出す蒼い瞳。全てが愛おしかった。

 髪の毛一本だって、誰にもやりたくなかった。

 平らな頬に口付けをする。


 聖女の釣書が届いたときは流石に驚いたが、事は上手い方向に進んでくれた。

 彼女の細い左手の薬指に嵌められた指輪をなぞる。既成事実を作ってしまえばこっちのものだ。


 自由に外を歩き回る彼女が心配で、歩けなくしてしまいたい衝動を堪えるのが大変だ。


 関係の形さえ定めてしまえば、後は簡単だ。サーシャも諦めて笑みを零した。


 養い親にはこれまで育ててくれた恩はあるが、結婚相手まで決められるのは違う。ましてや、サーシャの見合いだなんて言語道断。


 艶やかな黒髪に指を通し、晒されたうなじに口付ける。ほのかな甘い香りは、ラインハルトが好んでつけている香水と同じ香りだった。


「サーシャ、好きだ、好きで、好きでたまらない。――愛してるよ」


 深く眠りについているサーシャは、凶暴なまでに深く黒い感情の塊に気づきやしない。

 可哀想に。俺はサーシャを自由にしてやれない。逃がしてやれない。


 腹に飼っている凶暴な化け物は、愛に狂い、永遠とサーシャのことを想い恋焦がれるのだ。




 ― 了 ―

 


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