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第54話 ニート王子と接触

 真一たちは二チームに分かれて『エンジェルさん』について確認することにした。地下のパソコン室では、勇瑠王子、悠磨王子、フィオナ姫とシャナ姫が、MMORPG『World of legend』にログインして、悠磨王子が自キャラ(自分の分身となるキャラクター)、ニート王子を動かし、真一たちと接触する。そのゲーム画面を四人で観察をする。

真一から頼まれた確認事項は、モニターに映し出されるゲーム画面の自分たちの様子、例えば、真一の頭にマークやNPCなど文字が着いていないか、会話はどのように表示されるのか、など……。

一方のエンジェルさんとなった、ニート王子(悠磨王子の自キャラ)と接触する王の扉二階のカフェスペースに向かった面々は、真一、花琉姫、レオン王とアズキアス魔王だった。


さて、彼らの目には互いにどう映るのだろうか……。


 二階のカフェスペースに向かう真一たちは、診察室を出て、南の塔(召喚の部屋のこと、名称)の横にある大きなクローゼットの前に到着をしていた。


「真ちゃん、何でも良いわよ、ローブを羽織って」

「ああ、わかった」


真一は、クローゼットからローブを一枚取り羽織ってみるものの、


「花琉おばさん、えっと……」


そこまで言うと、固まってしまっている。

真一が手に取ったのは、通す袖が付いたタイプのローブで……、サイズが合わないらしく、


「あの、これ、袖を通すと……ヤバいと思う……」


パツンパツンである。袖を通して、体を伸ばすと破け散ってしまうだろう。


「あらあら真ちゃん、そうだったわぁ~、この子。大きいのよね……。あ~もう~袖を通さずに羽織りなさい」

「わかった」


すると、今度は肩から腕のところがパツンパツンで……。


「あの……花琉おばさん、これでいい?」


と、真一が言うと、花琉姫は目をパチパチとさせて、


「あらやだ、ちょっと、それ!」


側で見ている、レオン王とアズキアス魔王は、プッと吹き出し笑い出す始末。


「アッハハハハ、真一ぃ~、袖が腕の所で外に開いて羽のようになっているぞ。それは、動けば、破れて吹き飛んでしまうんじゃないかぁあ、プッ」

「し、真一、大きいとは思いましたけれど、先ほどまで見ていた真一は、サイズのあった衣服ですしね、その、そこまで大きいとは、フフフッ」


苦笑いをするしかない真一。

真一はひと言で言うとでかい。身長は189センチと本人は言っているが、190センチを越えているかもしれない。加えてジムで鍛えているものだから程ほどに筋肉も付いている。そうそう合う服はない。現在日本では、花琉姫に頼んでオーダーメイドを使っている。


「あらあら、どうしましょう! そうだ、一緒にマントないかしらマント!」


花琉姫はそう言うと、クローゼットを漁り出す。


「我も探してやるか」


レオン王が言うとアズキアス魔王も頷いて探し出す。そして、真一も探し出す。

暫く、皆でクローゼットを漁るが、マントは中々出て来ない。


「あ、在ったよ。これでどうかな?」


一番先に見付けたのは真一で、


「ふむ。それでは尻までしか隠れないが、いいのか?」

「あら、そうねぇ~」


レオン王と花琉姫が、マントを探す手を止めて言うと、


「えっと、現在日本の服装が隠れれば良いのですよね」

「そうなのよね、でもこのスラックスは……、ああ、ズボンね。この世界の物ではないから、隠したいのだけれど……、何処で誰が見て居るかわからないから……」


アズキアス魔王の言葉に花琉姫が答えながら悩み出す。


「ああ、じゃあ、花琉おばさん、さっきのローブを腰に巻けば……」

「真ちゃん、あなたの体の大きさだとローブの袖が腰を回りきらないでしょう?」

「ムッ、ウッ、かろうじて回るけどね……」


真一はローブと四苦八苦しながら言う。


「じゃあ、ローブを二枚使って、腰の横で袖同士を結ぶのはどうかな?」


アズキアス魔王のアイディアに、レオン王がそこらでひったくったローブと、真一がもたもたやっているローブを花琉姫が手に取り、二人は真一の腰でローブの袖同士を結ぶ。


「あの、前と尻がモコモコするけど、これでいいかな?」


真一が言うと、その姿を見た皆が吹き出す。


「プププッ、真ちゃん、その格好ぉ~~~」

「花琉おばさん、笑うなんて酷いよ!」

「真一、怪しい 頭陀袋(ずたぶくろ)のようだな、アッハハハハ」

「レオンまでぇ~」


大笑いをする二人にムッとしながら、真一はチラリとアズキアス魔法の方を見ると、袖口で口元を押さえながら腹を空いた手で押さえ大笑いをしていた。


「全く、皆、酷いなぁ~、そこまで笑うことないじゃないか。ああ、でも、時間が勿体ないから行くよ、ほら、もう~~~」

「そうね、そうね、真ちゃん! ププッ、あ、ほら、靴と靴下は脱いで行くのよ?」

「え? 裸足ぃ~」

「そうよ、この世界にその縫製の革靴は無いの、靴下もね」

「わかったよぉ~」


皆、クスクスと笑う中、ブツブツと言いながら真一は靴と靴下を脱ぐ、花琉姫の方を見ると、既にローヒールの靴や靴下を脱いでいたのか、裸足だった。


「じゃあ、行きましょう」


花琉姫が言うと皆が頷く。一行はスタスタと大部屋の中を歩き、大扉の前に着いた。


「ああ、そうだった。真ちゃん、この扉を開けてみて。王族しか開閉が出来ないんだけれどね」

「ああ、さっき花琉おばさんが試してて言っていたことだね」

「そうそう」

「えっと、手の平をかざして、開けっ! だったけ?」

「ええ、ええ」


カチャリ。

ギギィ……。


「あらいやだ、真ちゃんと話しているだけで開いちゃったわ。もう、緩い子ね」

「花琉おばさん、扉に緩い子て……」

「ああ、真ちゃん。大扉は、真ちゃんことを字を持つ王族として反応したみたいだから、伝えておくわね。王族しか開閉が出来ない扉はね、意思を思っているから、気に入らないと開閉が出来ないからね」

「え……」

「ああ、真ちゃん、ここ異世界ね、魔法も使えるから、意思のある扉くらいあるわよ」

「あ、そうなんだけど」

「他になにか? ああ、気に入らないと噛みつく扉もあるから気を付けてね」

「えぇええええ」

「冗談よ」

「もうぉ」


花琉姫と真一の会話に、レオン王とアズキアス魔王は、ローブの件から笑いを引き摺るように笑っていて、更にここに来て爆笑となる。


「あ~もぉ~、レオンもアズキアスも笑いすぎっ! 行くよっ!」


真一がそう言うと気を利かせたように大扉は更に開く。真一は、


「ありがとう、扉。通りやすいように開けてくれたんだね」


と、言いながら扉を出ると、バタン。と、大扉は閉まり……、ドンっと、誰かがぶつかる音もする。


「え?」


漏らした声と共に振り返る真一。

暫くすると、花琉姫が額に手を当てて出て来た。それを見て、


「花琉おばさん、大丈夫?」

「やぁ~ねぇ~、この大扉、真ちゃんのことが余程気に入ったのよ。だから、真ちゃんをからかった私の前で閉まったのねぇ~」


真一に向かいそう言うと、花琉姫は、


「大扉、あなた方を悪い冗談に使ってしまってごめんなさいね」


そう言いながら、大扉を撫でるのであった。すると、大扉は魔法陣を浮かび上がらせた。


「あら、反応してくれているのね。ありがとう、じゃあ、私たちが出たら扉の施錠はお願いね」


と言った。


レオン王に続き、アズキアス魔王も大扉を出ると、大扉は自然と閉まり、魔法陣も消えて大扉に収まった。


「本当に、意思があるんだね、扉」

「ええ、そうよ」

「じゃぁ、俺。挨拶しとくわ」

「え? 真ちゃん」


すると、真一は、大扉の前に立ち、


「さっきは俺の呼び掛けに答えてくれてありがとう。これからもよろしくお願いします」


と言って、胸に左手を胸に当てて大扉に敬意を払う。

ポカ~ンと見ていた、花琉姫だが、釣られて、


「家の真一をよろしくね」


こちらは大扉に深々と頭を下げた。


「あれ、花琉おばさん、こっちの挨拶て左手を胸に当てるんじゃないの?」

「そうよ、あら、私……。つい、現在日本の挨拶をしちゃったわ」

「ブッ」

「吹き出すことないじゃない、真ちゃん」

「そうだけど」

「ほらほら、行くぞ!」


レオン王が言うと、


「行きましょうか?」


鮮やかな笑顔を見せた、アズキアス魔王が言った。それを見ていたレオン王は、


「アズキアス、今日はよく笑うな! 我もなんだか楽しいぞ」


そう言った。


二人の王に先を促された花琉姫と真一は、共に広い廊下を歩き出す。階段は、この廊下の突き当たりにあるため少し長い距離を歩く。


「やっぱり、広いなぁ~この廊下ぁ~」

「ええ、レジェンド王国は土地が有り余っているから、何でも馬鹿でかいものを作るのよ」

「へぇ~」

「私と勇瑠兄様ね、ああ、いや、勇瑠おじさんね、現在日本に住みかけた頃はね、家の中で打ち身に切り傷が絶えなかったのよ? その、部屋の中の距離感が掴め無くてね……、それに勇瑠おじさんなんか、天井が落ちてくるぅぅううて、最初のころは、部屋の中でビクビクしていたもんよ」

「ああ、だから、スギナミの家は天井が高いんだね」

「そうなのよ、でもね、建築法やなんやらであれが精一杯なのよね……、あと少し天井も高ければ安らぐのに……」

「そうか、そういうものなんだね、こんな広い廊下と天井の建物の中で育ったらそうなるのかぁ~」

「あら、王城はもっと凄いわよ?」

「え?」

「真ちゃん、楽しみにしていなさい。あなたが鴨居で顔をぶつけることなんてないくらいよ。ほんと、ひとり暮らし止めて、スギナミの家に帰って来なさい」

「あ、え? 大分、鴨居で顔はぶつけなくなったよ。また、すぐ、帰れって言う」

「帰って来なさい」

「いやだ」


花琉姫と真一は、廊下を歩きながら話す。

そうこうしている内に階段へと辿り付き、


「ねえ、花琉おばさん、階段の横のスペースはなんなの? ここ穴が開いていない? 落ちると危ないんじゃ……」

「ああ、そこは、魔法陣のスペースね、真ちゃん、その空間に足を進めてみて」

「いやだよ、落ちるでしょう?」

「じゃあ、手を伸ばしてみて」

「え? こう?」


真一は恐る恐る腕を伸ばすと、


「あれ? なんか在るぞ? 透明の壁? あ、あれ、なにこれ?」

「透明の壁、そうかもしれないわね。そこのスペースにはね、魔法陣が発動しなければ、進めないのよ」

「えぇえ……、その魔法陣が発動したらどうなるの?」

「まあ、現在日本のエレベーターの代わりのようなものね、乗ってみたい?」


コクコクと頷く真一。


「あら、真ちゃん、魔法陣のエレベーターは今度ね、レオンとアズキアスが、もう階段を降りちゃってるわ」

「あ、え? そうなの、じゃぁ、行こう」


慌てて二人の王の後を追う、花琉姫と真一。

この時、魔法陣を発動しないことが最善だった。ということが後にわかる。


ハアハアと息を切らす花琉姫。


「三人とも、降りるの早いわよ、子供じゃないんだから、はしゃいじゃって」

「花琉おばさん、俺、この格好だし、レオンとアズキアスに着いて行くのに必死だったよ~、でも、なんで急いで降りようとしたんだ? 俺たち」

「ああ、つい、途中からだな、二階のカフェスペースに一番で着くのは我だ! というような乗りか?」

「ああ、それですよ、レオン。我も何となく、早く行かないとと……」

「まったく、いつまで経っても男の子ねぇ~」


花琉姫がそう言うと、レオン王、アズキアス魔王、真一の三人は顔を見合わせてニンマリと笑った。


二階のカフェスペースに着いた四人は、階段の踊り場に出て前に数歩あるくと、店舗がある廊下に出てた。階段は、建物(王の扉)の向かって左端の奥に在るため、皆、廊下に出ると右に体を向けた。すると、薄暗い廊下の突き当たりに、緑の光る物が浮いていた。

ああ、ニート王子だなと思い、皆は足を進める。


暫く歩くと、緑色の光る物が頭ら辺に付いた人影が見て取れた。更に歩いて行くと、向こうも気が付いたのか、彼方は、ブンブンと手を振っている様子で、こちらに向かって走ってくる。なんだか、スピードが速いっ!そして、


「真にぃいいい!!! やあ、レオン、アズキアス! 花琉姉様ぁああ」


ブオン! という音と共に、空間に文字が表示された画面が出た。


「悠くん?」



無事にエンジェルさんとなった悠磨王子(ニート王子)と、真一たちは会えたのだが……。どうなる?

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