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第53話 やっと動き出す者たち

 「ふむ」


レオン王は、腕組みをして考え出す。それを固唾を呑んで皆が見守る。

ここに現在居る者は、真一、勇瑠王子、花琉姫、悠磨王子、フィオナ姫、シャナ姫、レオン王、アズキアス魔王の八人だ。


「地下のパソコン室とやらに行き作業をする者と、実行部隊とに分ければ良いのだな」


レオン王の言葉に皆がコクコクと首を縦に振る。


「ふむ、では、地下の作業部隊は、勇瑠王子、悠磨王子、フィオナ姫、シャナ姫。王の扉実行部隊は、真一、花琉姫、アズキアス、我で、どうだ?」


皆の顔が、パァアと明るくなりコクコクと首を縦に振る。振り分けに満足したようだ。そこへ、


「なあ、スマホ(スマートフォン)は、使えないのかな?」


真一がボソリと言うと、


「ああ、悠磨! ルーターは地下のパソコン室に繋いであったけ?」

「勇瑠兄様、フフ~ン」

「その顔は……、繋いでいるな?」

「おうよ! なにせな、俺には宝物があるんだぜ? 真にぃから貰ったノートパソコン!!! これがあるところにはルーターありだっ!」

「よくわからんが、真一、ルーターの接続はあるそうだ」

「そうなんだな……。というか、悠くん、まだ、俺のお古のノートパソコンを持っていてくれたのか?」

「おうよ! 俺の宝物だ!!!」

「悠くん……」


何やら感動する真一と、照れくさそうにする悠磨王子であった。


「じゃぁ、スマホは使えるんじゃないかな? あ、でも、どうなんだろう? ああ、Dcordとかで試してみる?」


真一は、ひとり言のように言うが、


Dcordディコードとは現在日本にあるボイスチャットサービスだ(架空のもの。とあるボイスチャットサービスをもじって作者が作りました)。


「そうね、ギルドルームもあるけれど……。待って、茶々と部屋を作ってしまうわね。ここでスマホを持っているのは、四人よね? 真一、勇瑠兄様、悠磨に私」


花琉姫が言う。


しかし、何故なのか? 何故、花琉姫は、さっとスマホを取り出すことが出来たのか? よくよく彼女の服装を見てみると、現在日本で働いていそうなパンツスーツ姿だった。ついでに言うと、勇瑠王子もスーツ姿である。もう一人、悠磨王子はというと、この国の衣服のようだ。

軽く皆の服装に触れておくと、ひと言で言うならまさに現在日本で描かれているファンタジー世界そのもので、割と華やかな服装だ(まあ、説明になっていないが……、またの機会に詳しく解説しよう)。


「なあ、ルーター繋げておいたんでぞ? もっと俺を褒めろよぉお」


悠磨王子が思い出したように言うと、


「我はよくわからんが、よくやった! 真一たちが助かっているようじゃないか?」


そう言いながら、レオン王は悠磨王子をまたくすぐり出す。どうも彼は悠磨王子が気に入っているようだ。


「悠くん、ナイス」


真一が言うと、くすぐられて体はクネクネと動かし笑い声を零しながらもニパッと顔を明るくする悠磨王子。

このこのとくすぐるレオン王。止めてとぇ~笑いながら言う悠磨王子。その様子は兄弟がじゃれているようだ。


「えへへっ。俺、スマホは地下に置いているから、そこでボイチャ(ボイスチャット)に入るね」

「ええ、悠磨、招待(ボイスチャットルームへ入る為の招待)を送っておいたわ」

「わかった」

「俺は、タキシードの上着に……」


真一は、ベッドの柵に引っ掛けてあった上着からスマホを取り出すと、


「花琉おばさん、電波、生きてる……」

「そうなのよ……、私もさっき思い付きで言ったんだけどね……」

「おお~本当だ、試すぞ、真一、花琉」


勇瑠王子が言うと、真一と花琉姫は、スマホの画面を見ながらスースーという具合に指を動かす。それをレオン王とアズキアス魔王は不思議そうに見て居て……、


「真一、その板は何です?」


意外にもアズキアス魔王が、レオン王よりも先に口に出した。


「ああ、アズキアス、これはな、現在日本で使っている道具かな? その一つでスマートフォンと言うんだ。これで声や文字を使って会話をするんだよ」

「板の名前がスマートフォンですか? それで声や文字を使って会話をする、ということは、互いに声や文字が送り合えるということですか?」

「そうなんだ! 飲み込みが早いな、アズキアス」


小首を傾げながら言う、アズキアス魔王に、


「ちょっと待ってろ、アズキアス」


そう言うと真一は立ち上がり、座卓を回り込んで向かいに座るアズキアス魔王の元に行く。そして、


「勇瑠おじさん、花琉おばさん、なんか、文字送って」

「ええ、いいわよ」

「わかった」


すると、真一の携帯は震え、


「ほら、文字が送られて……、ああ、もうぉ! 二人共、絵文字ばっかりじゃないか!」


ウヨウヨとスマホの上では、アニメーションの絵文字が動いていた。それを珍しそうに見る、アズキアス魔王と、先程までじゃれていたレオン王と悠磨王子。


「ほんとだ! 勇瑠兄様、花琉姉様、絵文字好きだなぁ~」


クスクスと笑う悠磨王子。


「なんと、小さなものが板の上で踊っているではありませんか!」


アズキアス魔王が、パァアと顔を明るくして笑顔になり言うと、


「ふむ、これはレジェンド王国原産の猫という生きものだな。猫が手を振っているな」


何故かこの異世界では、猫の原産国はレジェンド王国となっている。そして、各国に少なからず生息をしている。もしかしたら、現在日本に通じるゲートから、いつの間にか紛れ込んだのかもしれない。ああ、獣人種族の中にはネコ科の獣人種は居る。


レオン王も興味津々といった具合にスマホを覗き込む、


「レオン、もうひとつ動いているのは、人ですかね?」

「そうだな、小さな剣士のようだ」


真一のスマホをまじまじと見るアズキアス魔王とレオン王。画面に映っているのは、スマホの画面四分の一くらいの大きさの腰に剣を下げた男性キャラが横向きでテクテクと歩いて行くアニメーションだった。


「なあ、真一。このスマホは、我の国でも使えるのか?」

「え? レオン」

「そうですね、我の国でも欲しいです!」

「あ、その、アズキアス?」


真一は困ったとばかりに勇瑠王子と花琉姫の顔を見ると、


「ムッ、レオン、アズキアス。それは大変な事業になります」

「大変なのか?」

「そうねぇ~、少なくとも五年、いや十年とかね? 電波塔を設置しないといけないし……」

「電波塔?」

「ええ、アズキアス」


勇瑠王子と花琉姫、レオン王とアズキアス魔王。四人はあーでもないこーでもないというよな感じで、ボソボソと話しながら首を傾げたり笑顔を見せたりしている。


「まあ、五年、十年など、我らにとっては昼寝をしている間に過ぎるな、検討してくれ」


レオン王の言葉で話しが終わったのか?


「真一、これは大変な事業だぞ!」

「ええ!」


何故か、勇瑠王子と花琉姫は闘志を剥き出したように拳を握り熱く言い切った。


「あ、えっと。落ち着いたかな? そろそろ動こうか?」


真一が恐る恐るという具合に、皆に声を掛けると、皆はコクコクと首を縦に振る。ほっと胸をなで下ろす真一。


「あ、ねえねえ、服装はそのままで良いの?」

「あら?」


シャナ姫の言葉に花琉姫が気付いたように声を上げる。


「あら、そうね、どうしましょう。すっかり自分が現在日本の服装で居ることを忘れていたわ」

「そうだな、俺もだよ、花琉」

「あ、シャナ」

「何? フィオナ姉様、ここ、魔術用のローブを置いてなかったかしら? ほら、召喚術式の時にたまにローブを忘れる人もいるじゃない?」

「そうよね! 確か、大部屋の南の塔の横にでっかいクローゼットが合ったはずよ」

「それだ!」


勇瑠王子と花琉姫は、声を揃えて言う。


「じゃ、真一と私はそこからローブを拝借して現場に向かいましょう。わかった? 真ちゃん」

「ああ、花琉おばさん」


場の皆は顔を見合わせて頷くと、


「あ、待って待って」


と、悠磨王子が立ち上がり掛けた皆の足を止める。


「うん? どうしたんだ、悠磨」

「もう、皆、焦りすぎ! 『World of legend』は誰のキャラを出すかも待ち合わせ場所も決めていないよ?」

「あーーーーー」


大声を出すと勇瑠王子が大袈裟に頭を抱える。


「もう、皆ぁ~抜けているんだからぁ~」


こちらは大袈裟に呆れた様子で、肩を上げて両手を外に広げ言う悠磨王子。


「そうだったな、悠磨。キャラはへっぽこ剣士にするか……」

「あ、勇瑠兄様、それって目立たない? ギルドの子たちもログインしたら話しかけてくるだろうし、付いて来る子もいるかもしれないわ」

「あーーーーー」


花琉姫の言葉に、再び、声を上げる。勇瑠王子、気が焦っているのか?


「ああ、もう、勇瑠おじさん、落ち着いて。そうだな、悠くんはそのニート王子はどうなの? 友達登録やギルドは?」

「あ、その、俺……」


悠磨王子が言い淀むと、


「そうか、ゲームを始めたばっかりなんだね?」

「ああ、そうなんだ、その……、色々、街中を歩き回っただけで……」

「そうかそうか、なら、悠くんのニート王子を出して貰おうよ」

「わかった!」


一つ返事の悠磨王子だが、ソワソワとしている。


「悠くん?」

「あ、えっと、その、俺も真にぃたちのギルトに入れて欲しい。実は俺、パソコンはハードやソフトが楽しくて、その、そっちばっか、いじってて……。ゲームをしたのは今回が初めてなんだ……。どっちかというと、ネットサーフィンしてゲームで遊んでいたのは、フィオナ姉様というか……」

「ええ、私はゲームと言えば、乙女ゲームの『ジュエル・I  LOVE・アンジェリール』のアーサー様ぁ、一筋ですけれどね!!! でもまあ、王道MMORPG『World of legend』は姉妹ゲームなので、今度、やってみますわ! 『ジュエル』で育てた私の姫キャラなら、直ぐにそちらの世界(『World of legend』)に行ってもグイグイレベルが上がるはずですわ!!!」


オープンから今年が十五周年記念の王道MMORPG『World of legend』だが、何をとち狂ったのか(あ、いやいや……失礼)、昨年、オープンした姉妹ゲームは乙女ゲーム『ジュエル・I  LOVE・アンジェリール』だった。その乙女ゲームは、主に個人プレーなのだが、物語の中で育成したキャラクターを『World of legend』へ転送出来る。

乙女ゲームの中で育成されるキャラクターは、イベントや毎日のルーティン、それに加え、攻略キャラとのストーリーの中で、ボーナス特典として剣や防具、ドレスなどが貰える。この装備が結構優越で評判も良い。ちなみに、『ジュエル・I  LOVE・アンジェリール』にも、攻城戦、対人戦もあり、モンスター退治をしてレベルも上げられる。それらは、ゲーム内にあるサロンというところで仲間を集い行うお祭りのような位置に設定してある。

まあ、ソロ好きも遊べて仲間と共に遊ぶことも出来る。ああ、MMORPG、初心者向けのゲームと言っても良いかもしれない。そんな異色のゲームなのだ。


熱く語るフィオナ姫に、


「はいはい、フィオナ姉様、わかったわかった」


軽くあしらおうとする悠磨王子。


「悠磨ぁああ」


向かいの座卓の席、下手の方からフィオナ姫が声を上げると、


「はいはい、姉弟喧嘩は後でねぇ~」


花琉姫が呆れたように言う。いつものことなのだろうか?


「さて、決まったな、『World of legend』のキャラは悠磨のニート王子を出して貰うとして、待ち合わせ場所だな」

「一階と二階、どっちがよさそうだったの? 悠磨」


勇瑠王子と花琉姫の言葉に悠磨王子は、


「そうだなぁ、エンジェルさんが少ないのは二階だと思うけど、カフェスペースにはお客さんがいるだろう? ここ高台だから、午後八時まで営業してなかったけ?」

「ああ、そうだな。カフェスペースはっと……」


悠磨王子の言葉に勇瑠王子がスマホを覗き込むと、時計は、もうすぐ午後八時を指す。


「おお~ちょっど、八時じゃないか!」

「あら、そうね」


花琉姫も何故か勇瑠王子のスマホを覗き込み、皆も乗り出してスマホ覗き込む。


「じゃぁさ、接続環境が不安定だって言ってたよね? だったら今回は、この王の扉二階のカフェスペースで待ち合わせをして顔合わせだけするのはどうかな?」


真一が言うと、


「それもそうね、時間も時間だし。顔合わせをして、今日はお開きにしましょう。皆、疲れているだろうから」

「ふむ、そうだな」

「ええ、ええ。我も今日は、刺激がいっぱいでした」


花琉姫の言葉に、レオン王とアズキアス魔王が返事をすると、皆は頷く。


「じゃ、勇瑠おじさん、悠くん。頼んだよ、フィオナとシャナもよろしく」

「ああ、わかった」


勇瑠王子が真一の言葉に返事をすると、皆が口々に返事を返す。そして、


「ああ、あとね、エンジェルさんの視点でさ、俺たちがどういう風にモニター画面に映っているのかも観察して欲しいかもしれない。例えばさ、NPCてマークが頭に付いているとか、台詞はどんな感じで画面に表示されるのかとか……、まあ、そんな感じ」

「わかったぞ! 真一」


勇瑠王子の返事を聞くと、


「じゃ、こちらは二階に行きましょうか? ああ、レオン、アズキアス、大部屋のクローゼットに寄り道するけれど、良いかしら?」

「ふむ、付き合おう」

「ええ」

「じゃあ、真ちゃん、行くわよ」

「わかった」


花琉姫の言葉に、二階のカフェスペースに行く者たちは返事をする。と……、


「なあ、その前に……」

「あ~もう~、折角、皆、良いノリで動き始めたのに! 勇瑠兄様はっ!」

「あ、いやな。最後に酒を酌み交わして、私たちの行動が実のあるものになるようにとだな? それから、最後に残った者たちでこの宴を閉めることをしようじゃないかとな……」

「あら、それもそうね」


勇瑠王子の言葉に花琉姫は乗り、それを聞いた真一は、


「あ、まだ、グラスあるよぉ~」


グラスの乗ったトレイをワゴンから見つけ出すのであった。


グラスが配られ酒が酌み交わされ、皆がグラスを掲げると、


「皆の健闘祈る。そして、真一の全快祝いかっこ仮かっことじの祝いの席を御開とする」


勇瑠王子が更にグラスを掲げた後に、グラスに口を付けると皆も口を付け酒を呑み干す。


「では、行くか!」


その勇瑠王子の掛け声に、皆は立ち上がり動き出す。


「あ、花琉おばさん、片さなくていいの?」

「あ~もう~、こんな時にぃ~真ちゃんいいの、行きますよ」

「ああ、いいんだね?」


相変わらずというか、間の抜けるというか、お約束のような真一であった。



 診察室に最後まで残った者たちは宴を〆、やっと動き出すのであった。

ふぅ~長かった……。

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