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第42話 異世界の者、紹介を再び

 悠磨王子、フィオナ姫とシャナ姫たちは、よっしゃ! と小さくガッツポーズをする。


その様子を微笑ましく見るのはルーブル魔術師。

竹千代王の言葉に、皆が酒の入ったグラスを掲げる中、


「三の字の父王、私からですわ。五の字を持つ者として勇者真一様に紹介下さいませ」

「ふむ。ルシーニャ、父王に任せろ!」


竹千代王も酒が入っている、ちょっとは酔いが回ったか?


「では、先ほどの五の字を持つ者、ルイ王、サラ王妃、ルベルト王子に続いて紹介しようぞ。

ルベルト王子の可愛い妹、ルイ王とサラ王妃の可愛い愛娘であったがしかし!!! 字を持つ者の王子、姫の中で、唯一、ゆういつぅ~嫁に行った、ルシーニャ・五・グラン・レジェンド・ロクシャール!!!

彼の姫は、ロクシャール第一王国の現王、レオン・グラン・ノアール・ロクシャールの元に嫁ぎ、現在はレジェンド王国の五の字も持ち、ハイエルフ種族の国、ロクシャール第一王国とハイヒューマン種族の我が国との架け橋に見事なった姫。

閉ざされがちだった我が国とロクシャール第一王国始め、ハイエルフ種族の国ではロクシャール第一王国に続き大国のロクシャール第二王国とロクシャール第三王国との貿易も盛んになり、人々の往来も増えた。

そんな我らの様子を近年まで指を加えて見ておった各国が、ハイエルフ種族の国との貿易の交渉人を求め、多くの使者が各国からレジェンド王国に訪れるようにもなった昨今。

これらはルシーニャ王妃の大きな功績である。ああ、レオン王の人柄とルシーニャに対する誠実な愛も支えであることは付け加えて置こう。

おお~それから忘れてはならんのが、ルシーニャの特技、才能と言うべきか!

彼の姫は、紡ぐ魔法が得意での、魔法の元となるMP(魔力)を糸のように扱いそれを編んだり織ったりして形にしたものを使い、様々な試みに経て実用化しておる。

例えばなんじゃが……、MP(魔力)の細い糸を作り布地のように織り、シャツを作る。それは素材がMP(魔力)であるから、様々な付与が付けられる。そのシャツを冷たくする、暖かいする、防御値を付ける。などが出来る。まあ、付与を付け発動させた時点からMP(魔力)は消化されていくので消耗品ではあるのだがな。だがしかし、この使い勝手の良いことといったら!

加えてこの技術を発展させたのがルシーニャで。現在この世界で、この技術は我がレジェンド王国とロクシャール第一王国~第三王国にしかない! ときておる! 誇らしいことではないか!!! ハッハハハハ!!!

そして、この技術を習得した者は国内には少ないのだが……。ハイエルフ種族の国では、相性が良かったのか、割とルシーニャの技術を習得出来る者が居てだな、両国は思い掛けず貴重な技術の財産を得たのじゃ。我ら字を持つ者のルシーニャは、誇りである。

おおぉ~いかんいかん、我はつい、ついのぉお、字を持つ者の王子、姫の中で、唯一、ゆういつぅ~嫁に行ったルシーニャのことを語ってしもうたわぁ~」


竹千代王は、未だ独身の字を持つ者たちをわざとらしく見回して最後の方は言った。

その視線に、ワーキャァワーキャァと騒ぐ字も持つ独身の者たち。なまじ酒が入っているだけに大騒ぎだ。

その独身貴族たちを見て、真一はクスリと笑う。真一の場合は独身がどうのこうのというよりは、竹千代王と皆とのやり取りが可笑しかったのだと思われるが……。皆からは、お前もな! というような思いの籠もった視線を貰うのだった。その飛んで来た皆の視線に少しは気付いたのか、真一は、こちらも酒が入っているので素直なくらいシュンとするのであった。


「どうだ、我が妃は! 美しく賢く才能もある。真一もとっとと妃を娶れ。結婚はいいぞ! わっはははは」


いつの間にか起き出して来たレオン王が真一に絡んでいる。真一は愛想笑いを浮かべながら、小さくなっていて。字を持つ王子と姫たちはジロリとレオン王を見る。が、酔っ払いのレオン王にはその視線は通じず、真一が小さくなるばかりだった。


「ルシーニャ、其方の紹介はこんなところかの」

「三の字の父王、ありがとうございます。あの、父王?」

「なんじゃ、ルシーニャ」

「私、あのように紹介頂きますと、ちょっぴり恥ずかしいですわ」

「何を言うか、胸を張れルシーニャ。其方は字を持つ者の誇りじゃよ。大事な姫でもあるしの、ああ、今は王妃であったわ」

「父王、ありがとう。勇者真一様にご挨拶しますわね」

「ふむ、胸を張ってな」

「はい」


ルシーニャは、スクッと立ち上がって真一の方に体を向けた。ルシーニャから見て真一は右手の方向に座っており、


「勇者真一様! 三の字の父王に紹介をして頂きました、ルシーニャです。その、勇者真一様にじゃれついている酔っ払いの妻にございます。どうぞお見知りおきを」


言葉を言い終わると、困ったような顔をしながら微笑む。その顔も清楚で愛らしい。ルシーニャは、スラリとしているがやや華奢な体付きをして華奢な割に豊かに胸があり、胸元を少し透けるレースで飾るドレスは美しいスタイルを引き立たせていた。そして、髪はストレートな銀髪で足首辺りまであり、翡翠色の吸い込まれそうに綺麗な瞳をしていた。

真一は、ルシーニャの丁寧な挨拶に立ち上がり挨拶を返そうとするが、絡んで来るレオン王に手を焼いていて立ち上がれないでいた。


「あ、すみません、ルシーニャ王妃。立ち上がってちゃんとご挨拶をしたいのですが……、その、レオンが、いえ、レオン王が……」

「いえいえ、お構いなくそのままで」

「あ、では失礼して、このままで。磨嶋真一です。よろしくお願いします」


真一はペコリと頭を下げる。真一が頭を上げると、ルシーニャ王妃と目が合い、互いにちょっぴり苦笑いをした。

そんな様子を見届けた竹千代王は、


「さて、では六の字を持つ者を紹介するぞ、真一。タルマとナーシャには会っているな。

タルマ・六・グラン・レジェンドは、六の字を持つ王だ。そして、ターニャ・六・ダリア・グラン・レジェンドは六の字を持つ王妃。二人は主に内政を一手に任されている。ターニャの方は魔法省の仕事も掛け持ちでやっている」

「三の字の父王、続きは私がお話ししたいですのぉー。それで、魔女コーニャも紹介をして良いかしら?」

「おぉ~、ターニャ、良いぞ。そうじゃな、魔女コーニャも一緒に紹介とな、よいよい。任せたぞ」

「はいですの! 父王」


酒の力は凄い! 何を言われても上機嫌な竹千代王。まあ、字を持つ者たちが可愛くて仕方がないのかもしれないが……。


「勇者真一様、私はタルマやナーシャと共にお目に掛かれませんでしたの。どうぞ、隣にいる魔女コーニャ共々もお願いしますの」


六の字を持つターニャ王妃も少し酔いが回っているのかもしれない。ついついでてしまう、……ですの。と、口癖を連発している。しかし、とても可愛らしく微笑ましい。


「す、座ったままで失礼します」


相変わらず、楽しそうに真一に絡むレオン王。

初対面にも関わらず、レオン王とアズキアス魔王にすっかり気に入られ……、否、懐かれてしまった真一は、末尾の席でタジタジとして、しかし、楽しそうにしながら答えた。


「ターニャ王妃、磨嶋真一です。よろしくお願いします。お隣の魔女コーニャ様もよろしくお願いします」


真一は深々と頭を下げる。すると、


「ターニャ、私までよろしくされちゃった。嬉しいわ」

「コーニャ、紹介したのですもの。フフッ、私も嬉しいわ」

「コーニャです。職業は魔女ということになるのかしら? 私はターニャと魔法省で仕事をしています。一度、見学にも来て下さいませ」

「あらコーニャ、それは良いアイディアね!」

「そうでしょう?」

「ええ」


二人は手を取り合って微笑む。まるで双子のようだ。


「ルルゥールーインク姉様、勇者真一様に魔法省の見学をして頂きとうございますの」

「あらあら、ターニャ。それは素敵なことですね、是非、そうしましょう」

「はいですの!」


ターニャ王妃は、子供が贈り物をされた時のように零れんばかりのキラキラとした笑顔をルルゥールーインク王妃に向けた。そして、


「勇者真一様、是非、魔法省に見学に来てくださいですの」

「はい、ターニャ王妃。先ほどのルシーニャ王妃のお話も興味深かった、喜んで伺いますよ。魔女コーニャ様、見学を進めて下さりありがとうございます。ルルゥールーインク王妃、見学に伺った際には、どうぞよろしくお願いします」


真一は、ターニャ王妃、ルルゥールーインク王妃、そして魔女コーニャに丁寧に言葉を返すと、持っていた酒の入ったグラスを掲げた。

皆はその様子を見て、ポカンとした。すると、真一は、


「あれ? 敬意や礼を表すときなども酒を掲げるのではないのですか? 俺、失礼なことをしてしまいましたか?」


と、小さくなりながら言うと、


ウォオオオオオオ!!!


宴が湧く。

皆もグラスを掲げ、そして酒を飲み干す。


「真にぃ、凄いよ!!!」

「え、なになに? 悠くん」

「皆の反応だよ!!!」

「そうですわ」

「うんうん」


悠磨王子、フィオナ姫とシャナ姫が、パァ~と顔を明るくして真一に押し迫りながら言うと、


「そうですね、凄い、真一」

「ふむ、真一はー、ルシーニャの先ほどの話の功績や魔法省の見学の礼を酒に込めて掲げたのだろう?」


アズキアス魔王は目を輝かせ言い、レオン王は真一に問うた。


「そうです、レオン」

「皆にその真一の気持ちが伝わったんだよ」

「そうなんですね、俺、失礼なことをしでかしたかとヒヤリとしましたが、俺の気持ちが伝わって嬉しい、レオン」


真一の言葉を聞いてレオン王は、全く此奴は……、初奴よの! と心の中で思ったことを真一にじゃれついて表した。


「全く此奴は、全く此奴は」

「止めて下さい、レオンー」


酒の入ったグラスを持った手は真一の肩に回し、もう一方の手で真一の頭をグリグリと撫でる。


「いつまで猫を被って、我に敬語を使い話すか、此奴め此奴めー」

「止めて下さい、止めて、止めて~レオン~」


今度は、真一を擽り出すレオン王。何の意図があるのか……、否、もう、ただの酔っ払いである。そんな彼らを見て、微笑ましさにいたたまれず? ルーブル魔術師は、大地に足を付け踏ん張るというような出で立ちでその場を立ち上がり、酒の入ったグラスを高々と掲げぇ~、


「皆、呑もうぞ!!!」


と、音頭を取り出す。すると、案の定ぉーというように、


ウォオオオオオオ!!!


即座に反応する。こうなるともう、ドンチャン騒ぎである。先程までダラダラと、酒やお茶、料理にスイーツを楽しんでいた皆は、酒を煽り出す。

呆気に取られる真一。そんな真一も、笑顔が零れ宴を楽しんでいるようだ。


しかし、三十人以上居るこの宴の席、この勢いでは、酒や料理がすぐに無くなってしまいそうだが、一向になくなる様子がない。不思議なことだ、魔法で酒や料理が出て来るものかと観察をしていれば、たまに席を立つ者あり。そしてその者は半開きの扉を出ると、暫くすれば、酒瓶を数本抱え戻って来る、ある者はワゴンを押し戻って来ては、サクサクと片付け、新しい酒や料理を出す。なるほど、これは酒も料理も尽きることはないだろう。更に観察をしてみると、辺りをキョロキョロと見回す者が暫くすると立ち上がり扉を出て行く。そして酒や料理、そしてスイーツを持って戻ってくる。どうやら、自分のお目当ての酒や料理が無ければ取りに行く。というような感じなのだろう。そう言えば、周りに侍従、侍女、使用人といった者は見当たらない。

王族の宴となれば、大勢の使用人が付き、世話をしそうなものだが……、この異世界では違うのだろうか? それともそういった趣向の宴ではないのだろうか……。


ドンチャン騒ぎは続く。そんな中、ふくれっ面でチビチビと酒に口を付けていたナーシャ姫。その姫が急に立ち上がると、


「んっもうぉおおお!!! ナーシャの紹介がまだですのぉおおおおお」


と、雄叫びの如く言葉を叫ぶ。

すると、一瞬、ピタリと静まる。が、


ウフフッ。

アハハハッ。


というように楽しげに酔っ払い同士は笑い合い、ドンチャン騒ぎが直ぐに始まってしまう。それでは気の済まないナーシャ姫。


「勇者……、真一様ぁあああ」


これまた雄叫びの如く言葉を叫ぶと、ズンズンと席に座る皆の後ろを歩いて来る。

自分の名前を叫ばれた真一、ビクッとし思わず立ち上がると、ナーシャが向かって来るので、つい、真一もナーシャ同様、足を踏み出してしまう。それを見たナーシャ姫、


「ムゥ~~~」


と、ふくれっ面に迫力が増し。それを見て、


「え、え、え?」


真一は、歩みを進めて、宴の席の皆の後ろを歩き出す。


「真一様ぁあああ、何故、逃げますの?」

「あ、いや、逃げているつもりは……」


そう言いながらも一歩足が自然に出てしまい、


「ほら、逃げていますのぉお」

「あ、いや」


その様子に、皆は、最初こそキョトンとしていたが、大笑いをしたかと思いきや誰かが手拍子を始めた。すると、皆は調子に乗って、ナーシャ姫と真一、二人が動くと手拍子をするようになり……、更に煽りとばかりにリズミカルに手拍子をする。

その手拍子に釣られて、ナーシャ姫と真一は、皆の後ろを回り出す。


「し、真一様ぁああ、待つのですのぉおお」

「あ、いや、姫。体が勝手に……」


皆の後ろを追いかけっこするナーシャ姫と真一。更に調子に乗り、皆が手拍子を早く打つと、乗せられて二人は走り出す。


「ま、待つのですのぉおお」

「あ、はい、姫」

「ハアハア、真一様ぁああ、ナーシャから逃げてますのおぉお」

「あ、違うんだけどね、姫、その」

「んっもうぉおおお」

「アハハッ……」


ハアハアと息を切らすナーシャ姫、乾いた笑いを口にして小走りをする真一。

普段、鍛えているせいか、真一の息は上がらない。


そんな追いかけっこに飽きた誰かが、『アッ!』と大声を上げた。その声に真一はビクッと足を止め、ナーシャ姫は反応が遅れてしまい、そのまま歩みを進めた。結果……、


「つぅかぁまえたぁああ(大きなハート)」


見事、真一をその腕に捕まえたのであった。

真一はというと、


「うわっ」


と、声を上げ、後ろからガッツリ抱きつくナーシャ姫の抱擁に、瞬間冷凍したように見事に固まるのであった。


「フフッ」


ふくれっ面は何処へやら……。

幸せそうに微笑む、ナーシャ姫だった。

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