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第41話 ルーブル・オージェ魔術師

 「ルーブル!!!」


三人の王子と姫が立ち上がる。


「ルーブル! パソコンで書く術式や魔法陣の相談に乗ってくれよ、俺一人じゃ出来ないよぉ~」

「もう、また、おじいちゃんの格好をしてぇ~。可憐に乙女ゲームを決めている私は、幻術じゃないルーブルも見たぁいぃい~」

「フィオナ姉様、それをいうならレイヤーの私だって、白いローブ姿のルーブルとコラボしたいわ」

「えっ、白のローブ? 良いわね、シャナ!」

「でしょう? フィオナ姉様!」


二人の姫は手を合わせ、それから指を折り組み、キャッキャとはしゃぐ。悠磨王子は王子で期待に目を輝かせている。


「フォホホホ」


ルーブル魔術師が笑うと、三人の王子と姫も笑い。


「ではの、今日は特大の特別じゃ」


そう言うと、体を少し屈めローブで顔を隠すとその場でくるりと一回転する。そして、両腕をバッと一瞬広げローブを後ろに跳ね、顔を上げて堂々とした出で立ちで立ち、


「姫様方、これでよろしいかな?」


キャァアアア。


フィオナ姫とシャナ姫のキラキラと色付いた歓声に、釣られたように、


パチパチパチパチ……!!!


皆からの拍手が湧き上がる。


ホォオオオ。


拍手のあとは、溜め息にも似た喝采が起こる。


とうのルーブル魔術師はというと、年の頃は二十四、五くらいだろうか? スラリと背が高く細身な感じで、見事なストレートの金髪は肩に掛かるくらいの長さで、オッド・アイの瞳は金色と灰色、優しげな甘い顔立ちをしていた。姫たちがキャキャッと騒ぐはずだ! という容姿だ。


「う~ん、ローブが地味なのが悔しいわ、ねえ、フィオナ姉様」

「そうね、茶色じゃなくもう少し明るい色だったら良かったのに」

「フォホホホ、無理を言うでないわ。姫様方」

「もうぉ~駄目っ!!!」

「おじいちゃんの喋り方になってるぅ!!!」


二人の姫は憤慨する。それを見てルーブル魔術師は、また笑い……。


「気を付けますよ、姫様方」


にっこりと微笑むと、


「約束よ」

「お願いよ」


キラキラと目を輝かせて微笑みながらフィオナ姫とシャナ姫は言う。そして、


「ねえ、ルーブル」

「何かな、シャナ姫」

「前々から気になっていたんだけれど、どうして普段はおじいちゃんの姿なの?」

「そうですね、髭を蓄えた爺の姿であれば、見た者はまず、髭に目がいくでしょう? ですから、記憶に残るのは、白い髭の爺というくらいでしょう。ですが、この容姿では先ず、左右色が違う目が目立ちます。瞳の色と連動して金髪も記憶に残りやすいでしょう。あまり、人の記憶に残りたくはないのですよ」

「そうなの?」

「ええ」


小首を傾げながら言うシャナ姫。

シャナ姫は、字を持つ者の中では最年少だ。つい最近と言って良いくらいの……、時間年齢にして十八年と少ししか生きてはいない。

内政にも外交にもまだ関わったこともないシャナ姫は、ルーブル魔術師の意図することには、気付かないでいた。


「あの、ルーブルですか?」


消え入りそうな声でアズキアス魔王が不意に言う。


「ええ、アズキアス魔王」

「あの、ルーブルですよね? 我の国に治癒の魔法などを教えに来てくれる」

「ええ、そうですよ、アズキアス魔王。私と魔女コーニャがよく伺います」

「ああ、やっぱり!」

「フフッ」


ルーブル魔術師はアズキアス魔王に笑顔で答える。


「あの、よくわからないので質問してもよろしいか、ルーブル」

「如何しました、アズキアス魔王」

「あ、その前に、アズキアスと呼んで欲しい。我は王で、魔族だから魔王ではあるのだが……、魔王という言葉だけでも恐れられることがある……、我はそれが哀しくて寂しくて……、親しい者にはアズキアスと呼んで欲しいのだ。それに、我は前にもルーブルに頼んだ。貴方は遠慮して、我をアズキアス魔王と呼ぶ」

「これは失礼しました。このルーブル、お気持ちをお察し出来ずに申し訳ありません。それから、私を親しい者の中に含めて下さっていること、心より感謝いたします。これからはアズキアスと呼ばせて頂きます」

「はい、ルーブル」


アズキアス魔王は、右手を差し出し握手を求めた。それに答えルーブル魔術師は手を取ると、


「有り難き幸せ」


と、笑顔で言った。

アズキアス魔王は、少し口元を緩め微笑んだ。


「あの、ルーブル」

「なんでしょう、アズキアス」

「この流れで、我も貴方に聞きたいことがあるのだが、良いかな?」

「ええ」

「普段、年老いた姿で身を隠しているのならば、何故、我の国に来るときには今の姿なのか、教えて欲しい」

「ああ、それは……」


少し言い淀むルーブル魔術師だが、


「それは、爺を喰らう魔物が居るでしょう?」

「あ、知恵喰いのレギオン!」

「そうです、爺の姿では見付かれば、私は喰われてしまいます」

「ああ、そうですね……。その、あれは我の国、アズキアス魔王国も、父の国、サタルキア大魔王国とも、国境など無いも同じで神出鬼没ですからね……」

「ええ、私もそのような魔物だと聞いております。それに、喰らった爺の知恵は全て吸収して我がものにすると聞きますし……」

「そうなんです! 知恵が付き手に負えなくなってきています。これ以上、父の国や我の国の法を犯せば、討伐対象となってしまいます」

「そのような状況でしたか……」

「そうなんです、実はそれも今回の……我が、レジェンド王国を訪問した理由の一つです」

「ではそれは、改めて皆で話しましょう」

「助かります!」


二人の話を間近で真剣に聞いている、真一と王子、姫たち。

それに気付いたルーブル魔術師は、


「ああ、皆様を立たせたまま失礼しました。どうです、儂の酒を一献、受けて頂けますかな? 勇者真一様、アズキアス、悠磨、フィオナ、シャナ」


丁寧に皆の名前を微笑みながら言うルーブル魔術師の声は、よく通る甘い声だった。

その言葉に、真一たちは慌ててグラスを持とうとキョロキョロとする。すると、


「トレイごと持ってきた」


と、背にしていたテーブルから悠磨王子が皆に差し出す。


「ああ、これはこれは」


そう言うとルーブル魔術師は、続けて、


「先に皆様座りましょうか」


皆に座ることを促す。『はい』皆は返事をして各自が座ると、皆の輪の中心に悠磨王子がトレイを置く。


「お注ぎしますよ」


ルーブル魔術師がいうと、皆がグラスを持つ。


「では、勇者真一様から」

「頂きます」


真一はルーブル魔術師の言葉にグラスを差し出す。酒はルーブル魔術師の微笑と共に注がれる。

アズキアス魔王、王子、姫と、真一から左回りにグラスに酒が注がれる。最後にシャナ姫のグラスに酒が注がれると、


「俺に注がせて頂けませんか?」


真一が言うと、


「勇者真一様、では遠慮無く」


ルーブル魔術師が真一に酒瓶を渡すと、手に持つ酒が注がれたグラスは一度、トレイに置き、右手に持った酒瓶に左手を添えて酒を注ぐ。真一は少し緊張しているか、真剣な固い表情をしていた。それでも無事にルーブル魔術師のグラスには酒が注がれた。

酒瓶を真一が置き、グラスを持ち直すと、皆、グラスを掲げた。真一もそれに合わせ掲げると、ルーブル魔術師が、


「この酒に捧げる言葉はありますか?」


と聞く。


「俺は真にぃに久し振りに会えたこと!」

「我も真一に出逢えたことは、その、嬉しい」

「私たちも(ハート)」


皆は真一に逢えたことを口にする。


「私もですよ」


ルーブル魔術師が静かに言うと、


「俺も、その、この出逢いに……感動している」

「感動ですか? 私たちの出逢いに感動をしたと」

「あ、はい。その……、照れくさいんですが」

「これは参りました、勇者真一様。こちらも胸が熱くなりますよ……。では皆で掲げた酒に、出逢えた感動を!」


ルーブル魔術師がそう言うと、皆は更にグラスを高く掲げた。真一もその作法と思われるものに習い酒の入ったグラスを更に高く掲げる。

本の数秒後だろうか、皆は目を合わせ合図を確認したように酒を呑む。酒に弱い者はグラスに口を付ける。

真一は、煽るように一気に呑み干した。


「うんうん、良い呑みぷりですね、これは期待出来る」


ボソリと言うルーブル魔術師の目がキラリと光る。その時、


「ルーブル」


満足げなルーブル魔術師の背後からグラスを持った腕が回る。


「主らは、勝手に盛り上がりよって。のう、レオン」

「そうだそうだ」


連れて来られたと思われるレオン王は、既に酔いが回っているようで……。


「ルーブル、主はぁー滅多に見せん化けの皮まで剥ぎよった」

「そうだそうだ」


絡む腕は、


「竹千代ぉー、久し振りに逢ったレオンとあちらで盛り上がっていたじゃないか」

「ぬっ! 此奴は酒が弱い!」

「なにぉおおお」

「全く、寂しかったのか?」


その言葉を聞くと、竹千代王は、


「るーぶるぅうううう」


目に涙を溜める。


「あー、ルーブル、この二人、結構、酒入ってるてぇー」

「そうだねえ、悠磨。どうしましょうか」

「う~ん、父王はこうなってしまうと……」

「かまってちゃんだから……。フィオナ姉様、悠磨兄様、何か役目を持たせるのが良いかもしれないわ」

「役目か」

「う~ん……」


三姉弟は考える。


「あ、紹介の続きをお願いするのは?」

「それだ、シャナ」

「ええ」


三姉弟は意気投合したようで……。


「父王、お願いがあるのです」

「なんじゃ、悠磨、申してみよ」

「この宴の席に居る者を皆、真にぃに紹介して下さい」

「ぬっ」

「そうです、父王、我ら字を持つ者の紹介も五の字のルシャーニャで止まっています」

「そうです、父王、シャナは我ら以外の者も真一に紹介したいです」

「な、なんじゃぁ~、姫たちまでぇ父王に頼むのかのうぉ」


大きく上体を反らして~……というほど、首を後ろに反らしては大きくブンブンと縦に首を振るフィオナ姫とシャナ姫。

ニヤける竹千代王は、


「仕方のない子等じゃの」


と言いながら、勢いよく立ち上がると、


「あ、レオンを頼むぞ」


三姉弟に伝えると、揺れながら立っているレオン王の背中をトンと軽く押す。すると、三人の方へ倒れ込む。慌てて受け止めようとするが、真一並みに大きいレオン王を受け止め切れない!!! と、間一髪のところで、立ち上がった真一が受け止める。


「そこらに寝かせてやれ」


竹千代王が言うと、


「わかったよ」


真一が返事をする。もしかしたら慣れているのか? というような具合で、その辺にあるクッションを枕代わりにレオン王を寝かせてやる。そして、キョロキョロと辺りを見る真一に、


「私のローブを掛けて上げましょう」


ルーブル魔術師は羽織っていたローブをレオン王に掛けた。

それを見届けた竹千代王は、


「え~あ~、我の子供たちの願いでな、先ほどの続きをやるぞ! 真一に皆を紹介する!!!」


その言葉に、場の皆は顔を見合わすが、取り敢えず……とばかりに、


オウ!


グラスを掲げた。



さて、異世界から召喚された真実の勇者真一に、異世界の者の紹介が再び始まった。

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