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第38話 字を持つ者たちを紹介するよ

 「さて」


一声を上げると、真一に、レジェンド王国の敬意の挨拶を教えたアルシャル王は、竹千代王の方をチラリと見る。

竹千代は、肘置きに肘を立てて手の平に頭の右側を軽く乗せている。

やれやれというような顔をしてアルシャル王は、


「気が付けば、調子に乗って僕は立ち上がっているね」


と言いながら、両腕の肘を軽く曲げ顔の下辺りの高さで両手の平を上に閉じた指を外側に向けて開き、肩を一回上下させ、戯けて見せた。

皆はクスッと笑い、アルシャル王は言葉を続けて、


「ざっと見回して、三十人は居るのかな? 立ったついでに続きは、僕が紹介するね」


また、チラリと竹千代王の方を見るアルシャル王。だが、先ほどと変わらず手の平に頭乗せて素知らぬ顔をしている。


「いいかしらぁ~?」


皆を見回し、今度は左手を少し外に開き気味に耳の後ろに当てて、声を聞くよ、というポーズを取る。


オウ!


と言う皆の声を聞くと、


「ありがとね、では、始めるよ!」


アルシャル王が胸に手を当て敬意を払うと、立っている者座っている者、皆も軽く胸に手を当てる。


「三の字を持つ者、先ずは……、竹千代、君からだ。彼の英雄王! 竹千代・シャルマ・三・グラン・ノアール・レジェンド。現在は、主に国内外問わず、以来のある魔物討伐に出ることが多い。

単身から軍隊を率いてのあらゆる討伐に秀でている竹千代王は、この異世界に勇者として若干十四歳で召喚された。その時、勇者に全ての望みを託した我ら異世界の者の願いを叶え、見事、古のドラゴンを討伐した。世界が古のドラゴン討伐に尽力を尽くしている中、我がレジェンド王国を蹂躙しようと攻め入った大魔王軍を、討伐後、駆け付けた竹千代王率いる部隊は見事、殲滅して見せた。

そして、今から百五十年程前、再び古のドラゴンが出現。世界初とも言われる、同時期四体の古のドラゴンの出現に、世界は滅亡の危機に晒された。

それを救ったのが勇者竹千代王! 三体の古のドラゴンを倒した我らだが、まだ残り一体の古のドラゴンを倒さねばならない。しかし、その古のドラゴンを倒すだけの戦力がこの世界には残っておらず、絶望が世界を包んだ時、竹千代王は、新たな勇者と二千人強の兵を率いて最後の古のドラゴン討伐に出陣。見事、討ち果たした。

それからは、世界中から英雄王として竹千代王は称えられ、生きる伝説となった」


抑揚を付けて物語を熱く語るアルシャル王。

場の皆は、酒の肴にと話しに酔い、真一は少年のように目を輝かせていた。


「三の字を持つ王の紹介は以上で良いかな」


チラリと竹千代王の方を見るアルシャル王。

まんざらでもない様子で顔も緩む竹千代王。


「真一、お前の隣で静かに酒を呑んでいる男の……、簡単ではあるが英雄譚だ。どうじゃ?」

「すげぇ」


目をキラキラとさせて心が少年になっている真一には、それ以上の言葉が出なかった。


「そうかの……」


ボソリと小声で言った竹千代王は、ニヤけた顔がもう収まりも付かず。


「一の字の父王よ! 父王には及びも尽きませぬが、我らの紹介もして下され!」


三の字を持つ者、三男のアレクシスが声を上げて言った。


「おお、アレクシス。そうだな、軍関係、まとめて行ってみるか。では、改め、三の字を持つ、三男の昴・アレクシス・三・グラン・レジェンドは、第一騎士団長だ。同じく、三女の花憐・ロイス・三・グラン・レジェンドは、第三騎士団長。続いて、四男の優雅・レイ・三・グラン・レジェンドは、第一魔法騎士団長だ。軍関係は以上だな」


えぇええええ!!!


と、三人の三の字を持つ者がブーイングとばかりに声を上げて、


「一の字を持つ父王よ! 我らの活躍も、勇者真一殿にお聞かせしたい!」

「そうだ! 我の蛇眼が魔物を惑わした、フッ……。活躍、に、踊らされはしないが、語ることは許そう」

「一の字を持つ父王よぉ~、第三騎士団の活躍も勇者真一様に聞いて頂きたくぅ~、騎士団のパレードでは、我は我は……、私はあ~恥ずかしくて勇者様の隣に座れませぬぅ~(もじもじ)」

「わっはははは」


豪快に笑ってごまかそうとする妖怪爺ぃ……、否、アルシャル王。


「後がつかえてるからねぇ~、あ・と・で。

はい次、三の字を持つ王妃は、舞桜・ローレライ・三・グラン・レジェンド、主に財務関係。長女の一花・ローラ・三・グラン・レジェンド、本業は弁護士だけど、三の字の王妃と共に財務にも関わる。

次、次男の勇瑠・シャルロト・三・グラン・レジェンドと、次女の花琉・ローズ・三・グラン・レジェンドは、現在日本で活躍中だから、真一には説明しなくてもいいね。

はい次、四女の和花・リアナローサ・三・グラン・レジェンドは、三の字の王妃と長女のローラの補佐をしつつ、字を持つ者のパイプ役をしている。

次ね、五女の日花・アンレジーナ・三・グラン・レジェンドは、ひと言で言うならデザイナーね。後から紹介するけど、五の字の者と地方を回り経済にも尽力している。

次、ちょっと飛ばすはよ、五男の悠磨・アシュリー・三・グラン・レジェンドは、引き籠もり。六女の月花・フィオナ ・三・グラン・レジェンドは、オタク。七女の花音・シャナ・三・グラン・レジェンドは、レイヤー。三の字を持つ者は以上かな」


最後は一気に飛ばしたというように、フゥ~と息を吐くアルシャル王。


「ちょっと! 最後の方さ」

「あのぉ、オタクて……」

「レイヤーてぇ」


何やら異議? を訴える者あり、


「ひどくない?!」


息がピッタリのようで、三人が言うと、


プッ、ハハハハッ。


皆が吹き出す。

真一の方を見ると、真一も笑っていた。すると、


「そうだぞ、ひどくない? 俺は紹介すらして貰っていないぞ!」


『ひどくない?』と、クネクネと動きながら言い、文句をいうバイス王。


「あらやだ、この子は。バイスぅ~、あんたは四の字を継いでいるでしょう? まったく、あっちでは三の字の王子、こっちでは四の字の王、てぇ~、使い分けたりするから、自分でもわからなくなるの」


腰に手を当てて言うアルシャル王。バイス王は、仕舞った! というような顔をして、


「そうでした、ハッハハ……」


乾いた笑いでごまかそうとした。


プッ、ハハハハッ。


再び皆が吹き出す。


「そ・れ・か・ら、あんたたちはいいの、後で真一と話せるでしょう? ほら、例の地下で」


顔を見合わせる三人は、何やらニンマリと笑う。


「真一、三の字を持つ者の紹介は、以上かな」

「あの……」


さっきまで皆と笑っていた真一は、顔を引き締めて立ち上がり、左手を胸に当て、三の字を持つ者たちに、


「よろしくお願いします」


と、言って座った。三の字を持つ者たちは、その場で軽く左手を胸に当ててからグラスを掲げ、それぞれが腰を降ろす者、寛ぐ者と場に溶け込んでいった。それを見て、


「ささ、次々行くわよ、四の字を持つ者たち」


アルシャル王の言葉に、


「はい」


起立、というようにスクッと立ち上がり、真っ直ぐに腕を伸ばし手を上げるバイス王。小柄な彼を見ていると可愛らしく見えてしまう。そして、ローレライ王妃の横に座る銀髪で金色の目(竹千代王や真一よりもやや薄めの色)の女性が手を上げた。

目で我が妃を見付けたとばかりにバイス王は、


「一の字の父王よ、四の字を持つ者は、俺が紹介するよ」

「はいはい」


バイス王の視線の先を見て、アルシャル王は答える。内心、わかりやすい子ね、と思ったのは内緒の話だ。バイス王は、四の字を持つ王妃にベタ惚れなのである。


「勇者真一、俺が四の字を持つ王、慧・バイス・四・グラン・レジェンド。俺は、この国の外交を二の字の父王と母王妃に付き学んでいる、そして護衛も兼ねている。剣術ではこの国で俺に勝てる奴はいないと思っているよ。俺に関してはこんなところだ。後がつかえてるからな。そしてだ、我が妃を紹介しよう!」


熱い視線を送りながらバイス王が言う、


「真一、三の字の母王妃の横で手を上げている者が居るだろう?」


真一は、少し辺りを見回す。無理もない、普通では、一度に覚えられる人数の紹介ではないのだから。そして、自分が座る位置から、正面の右側に袖口を手で押さえて右手を上げる女性を見付けた。


「ああ」

「彼女が我が妃、ルルゥールーインク・四・グラン・レジェンドだ。名前が少し変わっているが、北の神の国と呼ばれるアンティス王国の出身なんだ。彼の国は滅多に他の国と関わらないのだが……、縁あって俺とルルゥーは結ばれた。我が妃は、この国の魔法省で仕事をしている。妃共々、よろしく頼む」


バイス王は言い切ると、グラスを高々と掲げた。それを見て、真一は立ち上がろうとしたが、バイス王に肩を押さえられ、


「略式で良い」


と言葉を掛けられる。戸惑う真一だが、座ったままグラスを掲げ、


「よろしくお願いします」


と言い、バイス王に視線をやると乾杯とばかりにグラスを互いに合わせ、そして四の字を持つ王妃に視線をやり、にっこりと微笑んだ。すると、


「惚れるなよ、勇者真一。俺の妃は魅力的だからな」


と、ニヤリとするバイス王に言われ、


「惚れませんよ、美しい人ですし、俺なんか、無理です」

「うん?」


酒を煽りながら首を傾げるバイス王。真一に冗談が通じていないことに気付かないでいる。


「バイスよ、真一はな、童貞だ」

「へ?」

「竹千代!」


口を挟む竹千代王。思わず、口から酒を零すバイス。憤慨する真一。目が点になる場の皆。


「ちょっと、千代ちゃん、止めたげて」

「もう、アルパパ」


アルシャル王と真一の会話に、皆は顔を見合わせて。


「ぶっははは! この鍛え上げられた体でかぁ~」

「それは関係無いです、バイス王」


真一の太股をバンバンと叩きながら言うバイス王。


「そうだな、勇者真一。経験などしようと思えばいつでも出来る。真一のハートが大切だからな」


真一の太股を叩く手は止まり、軽く胸を手の平で一つ叩くバイス王。


「ふむ、その通りじゃの」

「フォホホホ、清い真実の勇者というのも誇らしいものです」

「真ちゃん、男も女もね、体は大事にして、愛する人と結ばれることが、一番、良いことなのよ。まあ、理想だけれどね」

「レイママ」


宴の場には和やかな空気が流れ、


「さて、残り、字を持つ者の紹介と行くわよ」


ノリノリのアルシャル王である。


「五の字を持つ者たち、挙手」


三人の者たちが手を上げる。


「真ちゃん、紹介するよ、あ、否、真一」

「父王よ、もう、普段の通りで良いのではないか? 皆、和んでおる」


最初こそ、緊張をしていたものの、真一を含め、皆の緊張も段々と取れたようで、皆、自分のペースで酒を呑み料理を食す。


「そうだね、千代ちゃん。それじゃぁ~いつも通りで行ってみよう!」


更にノリ出すアルシャル王。


「五の字を持つ者の王、ルイ・五・グラン・レジェンドと、王妃、サラ・五・グラン・レジェンド。二人も内政が担当なんだけれど、主に地方を回って統治する領主の相談に乗ったり、活性化の手助けや王都と地方のパイプ役をしている。

次は、次男のルベルト・五・グラン・レジェンドも内政担当だね、王と王妃の補佐をして、六の字を持つ王と王妃の補佐も兼ね、特に書類仕事をこなしてくれているね、後、王族の面会の申し込みや立ち会いをやってくれているんだけれど、これが睨みが利いてねえ~、『正当な件でしかお会い致しません』ビシッと決めるのよ。

五の字はこんなところかしら……、あらやだ」


一瞬、言葉を止めるアルシャル王。


「もう一人、手を上げているわね」

「一の字を持つ父王、わたくし、五の字を捨てておりませんわ」


清らかな通る美しい声というような声の主が、穏やかな口調で言うと、


「おお、ルシーニャ。久し振り」

「ぬっ、ルシーニャとな」


アルシャル王と竹千代王が言う。

そして、場の空気は変わり華やかになる。


「父王よ、ルシーニャが居るということは……」

「うん、千代ちゃん……」


二人の王が揃ってルシーニャと呼ばれる女性の方を見る。


「よう、爺ぃ、我に伝令とは生意気だな」

「ウフフ、もう、レオンちゃんはぁ~、きつく言わないと来てくれないでしょう?」

「まあ、爺ぃの言うことはもっともだがな」

「ウフフ」


和やかに? 話すアルシャル王とレオンと呼ばれる男。


「レオン!」

「竹千代!」


竹千代王とその男は名前を呼び合い。


「レオン、隣に居るのは、まさか?」

「ああ、魔王アズキアスだ。王城の門のところでウロウロしていたから連れて来たぞ」

「レオン、魔王を付けるのはやめて。只のアズキアスで……」


消え入りそうな声で話すアズキアスと呼ばれる男。



宴の場にはソワソワとした空気が流れ出した。

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