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第36話 まさかの宴の始まり?

 「バイスではないか」


竹千代王は、受け止めたリリ看護師に、大丈夫か? と声を掛けたあと、開け放たれた扉の下で将棋倒しになっている字の者たちの前にしゃがみ込む。


「おかえり、バイス。何時、戻ったのじゃ?」

「おう、父王、ただいま。なあ、父王よ、挨拶はよいのだ……父王よ……、ついさっき……、顔を見たばかりではないか……、父王よ……」

「ぬっ、そうであったかの」

「ぬっ! 嫡男の俺を忘れたのかぁあ~、このバイス、嫡男として子を成し、その子も立派に育ち内政に従事し、そして嫡男として子を成し、その子は……」

「あ~、よいよい、わかっておるわ」

「父王、ちょっと、今日の反応は、つ、冷たいと思うぞ? いつものなら、仕舞いには涙ぐんで抱擁に俺の元に走って来るではないか!」

「ぬっ、我を犬ころのように言うでないわ、バイスよ」


しゃがみ込んでいる竹千代は、その体勢で返事をする。まるでどこぞのヤ○キーのう○こ座りである。


「そう言えば、父王よ。タルマ、俺の弟王に何をした父王よ。内政をタルマに全て譲り渡し時のように……、否、それ以上かもしれぬ。あたふたと王城内を自ら走り回っておるぞ。タルマは、俺が帰国して執務室に報告に行くと、兄上ぇ~と子犬のように走り寄って来るのに、それもなかった。まあ、『兄上!!!』と、悲痛な叫び声を上げて、俺の前から走り去って行ったがな」

「ふむ」

「プッ」


アルシャル王は、プッと吹き出す。

吹き出すアルシャル王に向かい竹千代王は、


「父王、吹き出すのは、タルマが可哀想ではないか?」


う○こ座りの体勢で竹千代王が言うと、


「あらあら、まあまあ、千代ちゃんがぁ~タルマを焚き付けたんでしょう?」

「ぬっ!」

「父王にはぁ~、何でもぉ~お見通しよ(ハート)」

「そうなのか? 父王」

「ぬっ」


竹千代王は、顔を逸らす。そして、


「なあ、苦しくはないのか? バイスよ、その体勢で」

「苦しいというか、重いに決まっているではないか、父王よ」

「ふむ」


話しを逸らした竹千代王。


「あの、俺、手伝いましょうか? その……」


ベッドの横の窓際に両手を上げて降参をしている真一が、そのままの状態で言う。


「俺に捕まってくれれば、上から、その、順番に、助けられると思う……」

「助かる」


声を上げたのはバイス王。

バイス王は、四の字を持つ王で、名を、すい・バイス・四・グラン・レジェンドと言う。四の字を持つ王で、主に二の字を持つ者と行動を共に外交と二の字を持つ者の護衛を担当している。


「わかりました」


真一は、返事をすると、恐る恐るといようにベッド脇から扉の前へ移動をする。それを見ていたアルシャル王と竹千代王が、


「ぬっ、真一、噛みつかぬから大丈夫じゃ」

「真ちゃん、千代ちゃんの言う通りよぉお~」


と、茶々を入れる。手を上げたままの真一は、


「ハハハッ」


苦笑いをしている。


「あの、その、一番上の、女性から……、お助けしても良いですか?」


ドアの前に行き、丁寧に声を掛ける真一。しかし、何人重なっているのか!


「お願いしますわ」


愛らしい声で言ったのは、三の字を持つ者。五女の日花ひか・アンレジーナ・三・グラン・レジェンドだった。


「では、その、俺の首に、腕を回して下さい」

「わかったわ」


アンレジーナ姫が、そっと真一の太い首に腕を回す。


「し、失礼しますね」


ヒョイと腰を軽く持つと、アンレジーナ姫を将棋倒しの一番上から、フワリと抱き上げて、竹千代王の側に降ろす。それを見ていた、アルシャル王と竹千代王は、


「ぬっ! なんと軽々しく姫を持つものよ」

「ヒュ~ヒュ~」


目を丸くする竹千代王。アンレジーナ姫は、細めとはいえ、身長が170センチはあり大きい方だ。金髪に薄い水色の目のしている、清楚で凜々しく水仙の花のような姫である。


 この姫は、布を扱うことに長けており、布が使われているものならば知らないものはないというように知識も豊富だ。服から家具まで色々なデザインを手掛けるのも好きなのだが、主な仕事として、国内に居るときにはローレライ王妃の手伝いをし、地方には五の字を持つ者と一緒に行き、布地はもちろんのこと、地方の名産品の国内外の取引の相談や手助けを主にしている。

このアンレジーナ姫が地方を回るようになってから、老若男女問わず、服装のお洒落が好きな者たちや家の内装から小物に至るまで好きな者たちには、流行しているものに触れられると親しまれ、今では信者も居るほどだ。

 姫の目標は、国内に置いては、服装はもちろんのこと、豊かであって欲しいと、家の内装やら小物まで、何処に住んでいても届けられる状態に国内をすること。が第一目標で。次に、常に情報の発信をしたいらしいのだが……。現在日本のようなインターネットなどの設備が無いこの異世界では、手段が限られていることに、最近は頭を悩ませている。本人曰く、情報伝達において、魔法では限界があるということだ。


 一人目の姫を救出した真一は、


「あの、その、姫様なのかな? 俺に捕まって下さい」


アルシャル王と竹千代王のヤジ? にも負けず、アンレジーナ姫の隣に居た姫に手を差し出す。


「ありがとうございます。その、あの、勇者真一様」

「あ、いや、その……」


どこのお見合いの席か? と言わんばかりの照れような二人。


「では、俺の首にしっかり捕まって下さい」

「はい」


ヒョイと将棋倒しの上から助け出された姫。名を花音かのん・シャナ・三・グラン・レジェンドと言う。この姫も三の字を持つ者で、現在、三の字を持つ者の姉弟の中では一番下の十二番目に生まれた姫だ。小柄な姫で銀髪に灰色の目をしている。


 ある時のこと、引き籠もりの……、否、五男の王子、悠磨ゆうま・アシュリー・三・グラン・レジェンドと、オタクの……、否、六女の姫、月花つきか・フィオナ ・三・グラン・レジェンドに、たぶらかされて……、否、影響を受け、現在は、多くの時間をコスプレイヤーとしてインターネットにて活躍? しているのだが、五女のアンレジーナ姫の影響も受けてか、布地を触ることが好きらしく、まあ、自分がコスプレイヤーだからかもしれないが、服作りから小物作りなどに励み。

今では、姫が考案した服や物は、王城内で使用し、評判の良かった物は製品化をしている。仕事着などは、仕事に合わせた動きなどにも工夫、使う布地や部品にもきめ細やかな気遣いがされた物が多く、物に至っては発想そのものが目を見張るものがあり、使った皆からの感謝の言葉も絶えない。


 シャナ姫を抱き上げ降ろすと、


「もう、茶々は入れないで下さい!」


突然、アルシャル王と竹千代王の顔を見て、ビシッ! と言った真一は、次から次へと、『すみません』、『失礼します』と言いながら、将棋倒しの人たちを上から抱き上げて救い出していく。アルシャル王、竹千代王が手を貸すまでもなくという感じだ。

二人の王は、ポカンと口を開け、その場に立っている。


「手をお貸しします、その、バイス様」


最後にバイス王を立たせた真一は、


「皆様、お怪我をされた方はいませんか? あ、その、救急箱あるかな?」


笑顔を向けて皆に言った真一だが、少し、仕舞った! というような感じで立ったまま右手を頭にやり、参ったな……いうような仕草をし、キョロキョロと辺りを見回す。救急箱を探しているのかもしれない。


「見事だ!」


唐突に、竹千代王が言いながら一つ手を打つと、


パチパチパチパチ……!


と、拍手が巻き起こる。

予期せぬことに、たじろいだ真一は目が泳ぎ、照れてしまう。


「まあ、真ちゃんはね、ジムに通っているわ、キックボクシングをしているわでねぇ~、鍛えているのよね(ハート)。ああ、合気道もやらせたのよぉ~。

この子、竹千代じゃないけれど、逢ったときには、そ~ねぇ~、十四歳の時には、小さくて細くてねぇ~、今にも倒れそうな美少年でぇ~、とにかくぅ~、食わせたのよ! 食わせて食わせて、運動をさせてねぇ~。気が付けばほら、ねえ? 美少年の欠片もなくなって……、ちょっとこの辺りアルパパは寂しいのだけれどぉ~、筋肉モリモリのおっさんに……(シクシク)」

「ちょっと! アルパパ!」


真一は、アルシャル王を睨み。アルシャル王は、本当に残念がっているように項垂れる(何故だ? 何が望みだったのか……)。

周りに居る字の者たちは、皆、キョドッた顔をして……。


パチパチ。


一人が拍手をすると、


パチパチパチパチ……!!!


と、伝染したように皆が拍手をし、仕舞いには歓声が上がり始めた。

それに乗ったアルシャル王も雄叫びを上げて、


「オォオオオオオ」


診察室は、よくわからない熱気に包まれる?


「ええいぃ! 静まらぬか!」


竹千代王が一声を上げるが、字の者たちは静まる様子も無く、


「酒は呑んでいるかぁああ」


オウ!


「料理は美味いかぁああ」


オウ!


アルシャル王が音頭を取りだした。


「嗚呼っ! もうぉおおお」


竹千代王が声を上げ、


「皆の者、宴の続きじゃぁああ」


遂には賛同してしまう。


オウ!


「はい! 父王よ!」


手を上げてバイス王が言う。


「なんじゃ、バイスよ」

「こちらの部屋と隣の部屋では、こちらの診察室が広いと思います」

「ふむ」

「こちらを片付けて、床に敷物をすれば、皆、ゆったりと酒と料理が楽しめます」

「ふむ。では、皆の者! 片付けと参るぞ!!!」


オウ!

ヒッホォオオ!


何やら奇声も混じり出したが、字を持つ者たちや宴に参加をしていた者たちは、次々に診察室に入ってきて、ベッドや診察台を隅に寄せていく。何処から出してきたのか、床には敷物が敷かれ、次々に料理や酒などが運ばれて来る。

呆気に取られ、言葉も出ない真一は、ウドの大木というように扉の前に立ち尽くしている。そして、見る間に宴の場は整い……、


「何をしておる、我の側に来ぬか、真一」

「あらやだ、真ちゃん、アルパパの隣においで」


声も出ない真一は立ち尽くし、


「しゃーねぇーなぁ~」


と、バイス王が、早々に座っていた敷物の上から立ち上がり、


「勇者真一、来いよ! 呑もうぜ?」


ガシッと真一の腰を掴み歩みを進め、敷物に座られる。


「では、宴の始まりじゃ!!!」


酒瓶を掲げて、竹千代王が言うと、場に居る一同は轟く歓声を上げる。


ウォオオオオ!!!

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