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第35話 遂に診察室の扉が開かれた?

 美味そうにプリンを食べる真一。急に立ち上がり、真一のベッドの柵に手を掛けて軽く腰を掛ける竹千代王は、


「真一、美味いか」


と、固い顔の表情を少し緩めたというような顔をして話しかける。


「美味いよ! 竹千代、俺、恥ずかしいんだけれど、割と甘い物好きでさ。こうな、デコレーションが凝ったものは更に情熱が湧くというか……、まあ、好きなんだ。一口食うか?」


嬉しそうに真一は竹千代王に言う。

そんな真一は、いつの間にか……、というのか、どのタイミングなのかは分からないが、子供のようだった真一は、三十路のおっさんに戻っていた。

それを見て、曇らせた顔を無理にでも晴らそうとしている竹千代王だが、戸惑いが涙腺やら胸の内やらを刺激する。

真一の辛い子供の頃の出来事、それを今更、変えてやることは出来ない。だが、納得の行かないものが己の体の中で渦巻いてゆくのも事実である。



 この異世界にて、三人同時期と言っても過言ではない予言。『真実の勇者が我らの世界に現れる。世界の難問を解き明かし、今一度、世界に真の幸福を問う』。三十年前のこの予言は、ハイエルフの国、ロクシャール第一王国の現王、レオン・グラン・ノアール・ロクシャールによって異世界全土に向かい公表された。それによって当時は、世界中が湧き上がりムーブメントとなった。

そして、各国はその予言を解き明かそうと躍起になる。この予言の意味を説き明かせば……、真実の勇者を手に入れれば……、欲望が世界を支配した。

現在日本、否、現在の地球という星に暮らす人類と生きとし生けるものたち。そこに生きる人間たちは、政治や経済を含め、戦争、貧困、環境、食料、教育など、多岐に渡る問題を抱えている。それはこの異世界でも同じ事で、それぞれの国が多くの問題を抱えている。

此処、レジェンド王国は、広大な国土を誇り資源にも恵まれ豊かな……、この異世界の中では多くの国を引き離し全てにおいて一番と言える大国だ。その国の近年の一番の問題と言えば、経済でもなく貿易摩擦でもなく……、戦争だ。

二十数年前に、開かれている全てのゲートの問題は、現在日本のゲートを除き、ほぼ解決し、その解決に伴い貿易摩擦も収まりを見せて来た昨今。

だが、レジェンド王国の歴史の中で、西のヒューマン種族との戦争は、度々勃発している。

ヒューマン種族といえば、世界中に小国が散らばっているのだが、レジェンド王国と隣接する大陸の中の一国のヒューマン種族は、国土も他のヒューマン種族の国と比べれば、一、二位を争う大きさを誇り、資源も豊かで、気候にも恵まれた国だ。そんな国が、世界一と謳われるレジェンド王国に攻め入る。その戦いの結果は、言わずもがな、圧倒的に……、否、全勝と言ってもいいだろう、レジェンド王国が勝利を収めている。

そんな経緯があるものだから、レジェンド王国では、近年まで国内にあったヒューマン種族の街を閉鎖せざるを得なくなり……、多種族が暮らすレジェンド王国としては、その点を他国から攻められる隙として与えていた。

そこで、動いたのが竹千代王だった。東の京、西の京に続き、数年前に南の京を建設、ヒューマン種族の街として国を挙げて世界に公表をする。元々は、東の京と西の京に住む、約百五十年前にその頃の日本からこちらの異世界に移住した二千人余りの武士や浪人とその家族たちの子孫の要望で作られた街なのだが……、その子孫たちとの綿密な話し合いの末、他国のヒューマン種族でも希望する者がいれば永住権を与えることとなった。現在の南の京は、永住権を取得した者を含め、賑わいを見せていた。只、南の京は、現在、レジェンド王国と戦争を繰り返す某国のヒューマンの入国と永住権の申請だけは受け付けておらず、そのことを切っ掛けに某国が攻め入るのではないかと、近年噂されている。

そんな中でも寿命が長い者の多いこの異世界では、三十年という時の流れなど数ヶ月前というような調子で、未だ『真実の勇者』は、ブームといった形で続いてる。



 竹千代王は、チラリとアルシャル王の方を見ると、王は小さく首を横に振る。それを見て、己の喉元にまで出掛かった言葉、実際には言葉にならなず思いなのだが……。

上品な手付きでフォークやスプーンを使いプリンを美味しそうに食べる真一。その真一に掛ける言葉が欲しいが、言葉は見付からず。見付かったとしても言葉を口にすることは、父王、アルシャル王が首を横に振る。竹千代王の思いだけが胸中を渦巻く。


「竹千代? プリン、食わねえの? 美味いぞ」


スプーンで取ったプリンを差し出す真一。


「そうだな、美味かったよ! 我も、そのアルパパも……、もう食してしまったよ」

「そうなのか、ごめんな、俺が食うの遅いから」

「気にすることはない」

「そうだよ、真ちゃん、ゆっくり食べなさい」

「ありがとう」


笑顔で言うと真一は、スプーンに乗ったプリンを口に運ぶ。


「勇者真一様、プリティなプリンだけでは、腹の足しにならない。他にも食べたいものは?」


行き成り、リリ看護師が真一に聞くと、


「う~ん」


悩み出す真一。そこへ……、


「嗚呼っ!」


と、声を上げて立ち上がったアルシャル王が、


「落ち着いた? 真ちゃん」

「うん?」

「真ちゃんの小腹。さっき、お腹空いたぁあ~プリン~、なぁんて、言っていたでしょう」

「ああ、だから用意してくれてたのか、俺、つい、夢中で食っちまって。その……、ありがとう、ご馳走様です」


プリンを食し終えた真一は、手を合わせてご馳走様と言う。


「では、お皿をお下げします、勇者真一様。さあ、さあさあ~次はなんですのぉお」


ルル看護師がベッドに乗り出して、ベッドの上に置いた足付きのトレイの上から、プリンの皿を下げながら言うと、


「ル、ルル看護師。ご馳走様です。その、小腹が満たされて、その、今は、食べたいものが浮かびません!」


仰け反りながら言う真一。


「そうですか」


すんなりと引くルル看護師。


「それじゃぁああ、真一。また、扉に隙間が開いて来たようだから……」

「え? 扉の隙間?」

「そうなのよ」


アルシャル王の言葉を聞くと、スゥーと素早く、リリとルル看護師が扉の前に立ち、扉に背中を合わせる!


「御伽王様よ、これは戦闘態勢ですか? この扉は死守すべきでしょうか!」


リリ看護師が聞く!


「う~ん、どうしようか?」

「父王よ、宴状態の字の連中を、その……、ここに通すと?」

「いや、まあねえ~、僕もお腹空ちゃったしねぇ~。午前中のイベント広場の催しが終わって直ぐに来ちゃったから(ハート)」

「午前中のて……、父王よ、我は予定を把握しておりますぞ? 本日のイベント広場では、午前中の催しはなかったはず……」

「あらやだ、この子は」

「おのれ! 謀ったな、この妖怪爺ぃーーーーー」

「もう、千代ちゃんてば(ハート)」

「ぬっ! その手には乗らんぞ!!!」

「ちょぉお、二人共、何?!」


アルシャル王と竹千代王の争い(おふざけ)? に真一は、焦ったように口を挟む。が、刹那、


「キャァ」


リリとルル看護師が声を上げる。二人の体は、パイプ椅子から立ち上がっていたアルシャル王と竹千代王の元に吹っ飛び!!! ベッド横の扉は大きく開かれた!!!


バンッ!!!

ドン!


雪崩れ込んだ者たちは、勢い余って重なり合って倒れ込んでいる(何人いるのか?)。それを見ているアルシャル王と竹千代王は、あ゛~~~やらかした。などというような顔をして……。真一はというと、居ない!!! こちらも驚いた勢い余って、ベッドからベッド横の窓際の方へ落ちていた。ウッと小さくうめき声を上げる真一だが……、誰も気付かない。


「真一!!!」

「勇者真一様」

「真一様!!!」


いなくなったと思われた真一を皆が大声で呼び始め……!!!

出るに出られないというような真一は、右手を挙げた。落ちたベッド下の床できっちりと正座をして小さく縮こまりながら、コッソリというように……。


「真一!!!」

「勇者真一様」

「真一様!!!」


その上げた真一の右手は誰にも気付かれずに……。皆がまた大声で真一の名前を呼ぶ。真一は、


「ここです」


仕方がないというように、真一はその場を立ち上がり、何故か降参とばかりに両手を上げる。


「でけぇ~」


開け放たれた扉の下で、一番下で潰れていた字の者が言う。


「おお! バイスではないか」


その声に、反応したのが、竹千代王だった。



さて、真一の寝ていた診察室は、大勢の者で溢れた。

真一はこれから、竹千代王のお抱えの隠密? 雷己も恐れた? 字の者たちの宴に引きずり込まれるのか!!! それとも……?

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