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第33話 一の字を持つ者、アルシャル王降臨?

 「ちぃよぉちゃん!」


診療室。診察台の置かれているところのカーテン越しに声がする。


「ちぃよぉちゃん!」

「……」


声がする!


「竹千代?」


真一が、竹千代王に話しかける。先ほど、口をパクパクさせてベッドで仰け反っていたことを忘れたかのように。


「ぬっ! 真一!」

「なんだ、どうしたんだよ。可笑しいぞ? 何を警戒して……」

「ムムムッ、真一! 油断目去るな、見るな聞くなよ! 妖怪が出よったわ!!!」

「えぇ……、今度は、妖怪かよぉお~、異世界、何でもありだなぁ~」


腑抜ける真一。竹千代王は、


「ウフフ」

「ぬっ!」

「そろそろ、いーいぃ? 飽きちゃったよ、千代ちゃん」


診察台ある方のカーテンの向こう側、真一のベッドから見れば、足元の方向から。一人の人物が現れた。それを見た真一は……、


「アルパパ?」

「やあ、真ちゃん。体の調子はどうお?」

「あ、大丈夫、大丈夫。凄い医師が治してくれたんだって! ねえ、レイママも一緒?」

「お?」


目を見開いて、金魚が餌を喰らうが如く口をパクパクさせる竹千代王である。


「なぁに? 『お?』てぇ、千代ちゃん」


ニヤニヤとする、真一にアルパパと呼ばれた人物。


「あ゛ーーーーー!!!」


真一は真一で、竹千代王の存在に気付き、大声を上げる。


「やぁ~ねぇ~、二人して」


アルパパと呼ばれた人物は、大袈裟に立ったまま、両手の平を上にして肘から両腕を外に広げて、呆れて見せる。


「しょうがないなぁ~、竹千代。僕を改めて紹介してくれるかな?」

「父王……」

「何かな? 竹千代」

「ぬっ、御意」


二人の会話にキョトンとする真一は、


「父王?」


と、首を傾げる。


「うおぉほん!」


大袈裟に咳払いをした竹千代王は、


「この方は、一の字を持つ王、アルシャル・一・グラン・レジェンド。我らが字を持つ者の父王、レジェンド王国を建国した偉大な王だ」

「……」


お馴染みとなってきた、真一の金魚風~口パクパク。そして、


「えええぇえええ!!!」


絶叫するのである。


「真ちゃん、そんなに驚かなくても……、アルパパ、寂しいぃ~」


クネクネとするアルパパ、否、一の字を持つ王、アルシャル・一・グラン・レジェンドである。


「勇瑠おじさんと花琉おばさんは、真ちゃんのおじいちゃんだよ。て、言った! アルパパはおじいちゃんて言われるのが嫌だから、自分のミドルネームのアルシャルのアルを取って、アルパパて言ってね、て、言った! 俺、俺、聞いてないもん!!!」


真一は……、慌てすぎたのか、はたまた子供の頃に戻ったのか、口調が子供である。


「真一ちゃん、真一ちゃん、そんな、ね? 起こらないの、ね?」

「じゃじゃ、レイママもそうなの?」

「レイママは、僕の妃だから、そうね、そうなるね。レジェンド王国建国後、すぐに結婚をしたよ。こちらの世界の名前は、レイラ・一・グラン・レジェンド、というんだ」

「ムゥ~、ねえ、どうして黙ってたの! ねえ、アルパパ! ねえ!」


真一は、最早、子供である。


「お、お、おおぉおおおお」

「ほら、千代ちゃんも落ち着いて」

「お、お主ら!!! どうなっておるのじゃあぁあああ」


言い切る竹千代王。


「やれやれ」


と、一の字を持つ王、アルシャル王は、両手を広げて見せた。


「しょうがないなぁ~もう、僕から説明するよ。あ、その前にさ、千代ちゃん。僕もそれに座りたいなぁ~」


竹千代王が座るパイプ椅子をジッと目で見る、アルシャル王。


「はいはい、父王、お持ちしますよー」


何故か、むくれる竹千代王は、棒読みである。

竹千代王から、パイプ椅子を受け取り、ご満悦のアルシャル王は、


「さっきまで、色々、真一の過去の話をしていたみたいだけれど……。僕の話は、どこから話そうか。うん、簡単でいいよね? 僕は、真一を引き取ってから数ヶ月後、真一が十四歳の時かな? 勇瑠と花琉におじいちゃんとおばあちゃんだよと紹介して貰って、真一とはそれ以来の付き合いだよ。ねえ、真ちゃん(ハート)」

「まあ、そうだけど」


少し拗ね気味の真一。


「はいはい、拗ねないの、真ちゃん。レイママもすぐに此処に来るからさ」

「レイママも?」

「そうそう、レイママ、また、新たなスイーツのお店を見付けてね、プリン付きだよ(ハート)」

「そ、そうなの」


照れながら俯く真一、しかし、顔が緩んでいる。ちょろい真一である。


「納得いかん! いかんぞ! おのれ、妖怪爺ぃいいい」

「千代ちゃん、もうね、ほんとうにね、そう言うとは思っていたんだよね、僕。だから、言いたくなかったんだよぉ~」

「何を抜かすか! 我にはゲートを通り真一に逢いに行くことはならぬ!!! と、申しておったではないか!!! それがじゃ、蓋を開けてみればどうじゃ? 自分だけ、自分だけ、己だけぇえええ、真一に逢いに行きおってからにぃいいいいい。許せぬ……、成敗してくれるわぁああああ」


勢いよく立ち上がる竹千代王は、エア刀とばかりに腕を振り上げ、振り下ろす!!! それを真剣白刃取りとばかりに、同じく勢いよく立ち上がったアルシャル王が受け止めた振りをする!!!


「ぬっ! 流石、妖怪爺ぃ、我の刀を受け止めよるとはの!」

「ふん! 主もまだまだよの、この爺に勝てると思うてか!」


二人の王は、立ち回りとばかりに、ゆっくりとその場を動く。


「え、え、え?」


訳がわからないのは真一である。


「何だ、なんだ、俺には何も見えないが……、この世界は異世界だ! 何か凄いことが目の前で起こっているのか!!!」


目を丸くする真一。


「ぬっ!」

「ふん!」


二人は睨み合いながら、更に場を動く。そして……


「あ゛~」


行き成りダランと両腕を降ろした竹千代王は、何事も無かったように、パイプ椅子を二人分広げ直し置き直し……、


「父王、座って(棒読み)」

「ありがとうね、千代ちゃん(ハート)」


どうにでもなあれ! というような顔をした竹千代王、にこにこと満面の笑みを浮かべるアルシャル王。真一は、キョトンとするばかり。


フンと鼻を鳴らすと、パイプ椅子に座った竹千代王は、足を組み腕を組み、ふんどり返る。


「竹千代、聞きなさい。父王は、まだ、竹千代が向こうの世界、現在日本に行くことは許さないよ。竹千代が夢を馳せるような場所ではないからね。君がこの世界で作った、東の京と西の京、そして、新たに建設した南の京。日本の平安の時代を模した建物を中心に作ったものだ。その君が作った街のように、現代日本はとても美しいものとは言いがたいからね……」

「そんな戯れ言、隆之介からも聞いておるわ」

「竹千代、僕は再三、君に言っている、現在日本に行きたいのならば、あちらの世界を勉強しなさい。そして、受け入れること、認めること、それをやりなさい。それが出来たなら、真一に逢いに行っても良い。と言ったよね?」

「父王は、そう申した。だがな、あのような味も素っ気も無い高い建物に窓が整然と並ぶ。雅の欠片もないような建物ばかりが並ぶ街など、在るものか。心はどうした? 温もりはどうした? 雅を持たぬなど……、我は信じられぬ」

「竹千代、僕はね、ちゃんと君のことを理解しているつもりだよ。だから、君の意に沿うように動く。でもね、竹千代も動かないといけない、それには、心も含まれるよ。曖昧にして、今の竹千代を現在日本に行かせてご覧なさい、君の心が傷付いたり壊れたり……、絶望が何を引き起こすかわからないのに。僕は向こうへ行くことを許せる訳がない」

「ぬっ、父王。わかっておる。父王のお心はわかっておるわ……、だが、しかしの……」


言葉を止める竹千代王は、視線を真一に寄越して、


「なあ、真一よ。父王の言うことは本当なのか? 我は写真というもので今の現在日本を見た。あのような姿は信じられぬのだ」


チラリとアルシャル王の方を見る真一。小さく頷きながら微笑みを浮かべるアルシャル王の顔を見て、わかったというように真一は、


「竹千代、どんな写真を見たのかわからないが……、高い建物に窓が整然と並ぶ。そんな建物が、俺の住んでいたトウキョウには多いよ」

「そうか」

「ああ、その、雅と呼べる場所は……、少ない」

「在るのか?」

「たぶん、少しは」

「父王よ!!!」


竹千代王が、瞳を輝かせてアルシャル王を見る。


「そうだね、真一の言う通り。少しは竹千代が求める場所はあると思うよ。だけどね!!!」


念を押すように、アルシャル王は、言葉を続けて、


「圧倒的に竹千代が嫌がるようなところだから……」

「ぬっ! 申せ、父王」

「ウ~ン」

「勿体ぶるな、妖怪爺ぃ」

「ムッ! 暫く待ちなさい。僕もね、現在日本に行きたがる竹千代を突っぱね過ぎたと思っているよ。だから、ゲート付近に君が作った京の街のような建物を今、作っているよ。先ずは、そこに腰を落ち着けて生の現在日本を学びなさい」

「本当か!」

「本当! 僕ね、まあ、反省しているのよね、気が付けば、真一の心配をして泣き笑いしている竹千代をのらりくらりと交わして三十年だからね。ほっんとに暑苦しいくらいに真一、真一とね、彼、磨嶋真一が見付かってからねぇ~……ブツブツ……ボソボソ……」

「父王、のらりくらりと交わして、とな?」

「あらやだ、この子は」


二人の会話を聞いていた真一は、


「良かったんじゃないか? 竹千代! その、俺がトウキョウは案内してやるよ! お前が好きそうな場所にも連れて行ってやる!」


胸を叩き、堂々として言う真一。


「おお、真一。現在日本に行った際には、頼んだぞ!」

「任せろ」

「ところで父王、その現在日本に建築中の我が作った京の街のようなところは、何時いつ、連れて行って貰えるのかの? よもやまだ、勉強と抜かすか!」

「ああ、それは……」


何故か、目が泳ぐアルシャル王。


「それは?」

「千代ちゃん、顔が怖いよ!」

「ぬっ!」

「ま、待ってね! 建物の一部がもう少ししたら完成するから。その、一年半とかかなぁ~」

「なにぃいいい、父王~~~」

「もう、だから、もう! 竹千代はせっかちだから、完成するまで言いにくかったんだよぉ~。もうね、五年も費やしているんだから! もう暫く待ちなさいぃいいい」

「ふむ、五年とな」

「そう、五年!」

「アルパパ、もしかして、俺の会社に持ち込んだ平安京再現プロジェクトの?」

「そうそう、未来のコミュニティシティの」

「ああ、一年半ていうことは、あの貴族が住んでいた家の再現と言われる宮だね」

「あ・た・り」

「そっかそっか、あの建物をまず最初にと完成を急いで欲しい。て言っていたのは、竹千代のためだったんだぁ」

「そうなのよ」


爺ぃが跳ねる。否、アルシャル王がパンと自分の胸の前で合わせた手を組んで跳ねるようにして言うと、


「我にもわかるように説明しろ!」


話しに割って入る竹千代王。


「竹千代! 喜べよ! お前のための街だよ!!!」

「ぬっ!」

「竹千代のために平安京の一部を再現した街を建築中なんだよ。どういうものかは口で説明しただけじゃわからない。資料を持って来てやるよ! それから俺が説明する!!!」

「資料とな?」

「嗚呼! 俺の会社に行けば直ぐだ!」

「ぬっ! 其方の会社は、現在日本にあろうが」

「あ……」


大変な事に気が付いてしまった真一は、みる見る間に萎んで項垂れる。


「わっははははは!!!」


大声で笑い出すアルシャル王。


何にせよ、診察室にはアルシャル王が加わった。



そして、盛大に、


グゥ~~~~~~~。


と、真一の腹の虫が鳴り。

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