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第29話 真一と竹千代王、血の縁4―子供達―

 「ふむ。真一は童貞とな」


未だ、耳まで赤くなっている真一。

そんなことは気にも止めずに、何やら腕を組み考え出す竹千代王。


「真一」

「なんだよ」


むくれながら返事をする真一(ちょっとは察してやれよぉ~竹千代王)。


「つかぬ事を聞くが……」

「だから、なんだよ」

「其方は、確か、三十路じゃの?」

「そ、そうだよ」

「ふむ」


真一の年を聞くと、腕組みをして、今度は悩み出した竹千代王。

その様子を見ていて、何故だか妙に、いたたまれなくなった真一は、


「だ、だから。なんだよ!」

「ふむ。我は、ちと信じがたいのじゃが……。千二百年も経てば、人は進化をするものなのかのぉ」

「ムッ、なんの話しだ?」

「ふむ。のう真一」

「な、なんだよ」

「あちらの世界、真一の居た日本では、三十路になると童貞の男は妖精になるらしいのじゃがな。見たところ、其方は妖精の気配もまとってはおらぬしのぉ……。新種か? こちらの異世界とは違う新種の妖精か?」

「はああぁああ」

「ああ、家の引き籠もりがの申すのじゃ。童貞の男が三十路になると妖精になると……。そして、そのまま貫き通すとだな、賢者の道が開け、果ては大賢者の道も開かれると言うのじゃよ」

「はああぁああ」


固まる真一。


「ぬっ! 何を素っ頓狂な声を出し、固まっておるのか、真一」

「竹千代……」


竹千代王の名前を呼ぶと一気に項垂れる真一。さて、どこから話しを切り出して……、否、どこから突っ込んでやろうかという話しである。


「ぬっ! なんとか申せ、真一」

「ぬっ!」

「ぬっ! 此奴め我の真似をしおって、どうしたと言うのじゃ?」

「否、考えていてだな……」

「ふむ。我の話はそんなに難しく……、否! 待てよ、もしや門外不出の機密事項で御座ったか! なにせ、妖精に成りもうしたら、果ては大賢者の道が開かれるのだからな!」

「否、違っ! 違うんだ、竹千代。その……」

「申せ、真一。我の口は固いぞ。安心せい」


真一は、さっきの仕返し……、否! 先ほどの『安心しろと言う独り身の男ほど……』と言っていた竹千代と同じ言葉を返してやりたいと思ったが、そこは我慢して……、否、そこは大人になって言わずに、何を言えばいいのかと考える。


「竹千代、その、引き籠もりというのは?」


別口から切り込んでみた!


「ふむ。我の息子、末の王子じゃ。人見知りが激しい王子じゃとは思っておったのじゃがな……。ここ数年、ゲートが安定してからは、ちょくちょく勇瑠と花琉の住む現在日本の家に入り浸ってしもうての……。まあ、真一の召喚で、勇瑠と花琉には連絡が行っておるじゃろうから、一緒に帰って来るとは思うがの。真一は、会ったことは無かったかの?」

「え? ウ~ン」

「そうよの、向こうに居るときは、磨嶋悠磨(ゆうま)と名乗っておるが……」

「え! 悠くんか!」

「おぉ~、そうか、そちらでは悠くんと呼ばれておるのか」

「黒髪に、俺らと同じ琥珀色の目の男の子だよな?」

「そうじゃ、髪の色目の色は我らと同じじゃ」

「それなら、悠くんだな。確か、最後にあったのは、一年前だったか……。まだ、ちぃ~とも背が伸びないな。と、からかったよ。そしたら膨れていたんだけれど、格闘ゲームの対戦でな、俺ぇ、悠くんにボロ負けしてさ、機嫌が良くなったんだよなぁ~。素直なんだよな、悠くんは。それで頭の回転が滅茶苦茶いいんだよ。少し前の話になるんだが、パソコンの使い方を教えてくれ。と言ってきたときにさ、取り敢えず、俺のお古のノートパソコンを悠くんにあげて使い方を教えたんだ。そうしたら、あっという間に覚えてよ。一ヶ月後くらいだったか、自分でパソコンを組んだから、真にぃ見て欲しい。て言うんだぜ?」

「おぉ~、そうかそうか。我の末の王子は優秀であったか。それに真一は、真にぃと呼ばれておるのか? その話しは初めて聞いたぞ。それにしも嬉しい事じゃ!」

「アハハッ」


何故か、照れ笑いをする真一。

真一の話しに満足げな竹千代王。

真一はそのまま、話しを続けて、


「それで、その悠くんが今は引き籠もりなのか? 俺は学生だと思っていたんだが……。その、悠くんのことは、花琉おばさんに、留学先から帰って来ているのよ。て、いつも聞かされていたからさ」

「ふむ。留学先とは、この異世界のことを指しておったのかもしれんのう……」

「ああそうか、異世界のことだったのか! そうだな、異世界なんて……、なかなか言い出せるものではないしなあ」

「ふむ。まあ、でも、そうか……。パソコンとやらか……」

「どうしたんだ? 竹千代」

「いやな、そのパソコンとやらをな、この世界でも使えるようにしたいとな、その、末の王子、悠磨が駄々をこねよっての。ゲートが安定をしている今じゃと、かれこれ一年前くらいかの、ゲートからなにやらケーブルというものを引っ張って来おっての、この王城の地下によく分からんものを置きだしたのじゃ……」

「なんだそれ?」

「なにかのう、悠磨が居ないときには、その部屋には入れんからのう」

「それで、その、引き籠もり?」

「ふむ、ここ数年の。自分の進路も決めよらんのじゃ、上の子供たちの巣立ちが早かったせいかのお~、我はやきもきしてたまらんのじゃ」

「上の子供たち? 子供たちてぇ~、竹千代は何人の子供の父親なんだ?」

「我の子供か? ふむ、五男七女の十二人の息子娘の父親じゃ」

「ご、五、五男七女ぉおおおお」

「ふむ」


驚きの絶叫を上げる真一である。


「何をそんなに驚くのか、我は千二百年は生きておるのだぞ? それくらは当然ではないか」


口をパクパク(またしても、金魚のように、口をパクパクさせる)……、固まる真一。

そんなことは、素知らぬ顔で、話しを続ける竹千代王。


「我は子供が好きでのお」

「それは、なんとなくわかる気がする」

「おお、そうか。真一も子供が好きなのかもしれぬの。しかしの妃が……、我の妃がの、最近は我をうっとうしがるのじゃ、百年に一度は必ず子作りを迫るのじゃがな、中々に手強くてのぉ~、やっとの思いで五男と七女を授かったのじゃ」

「へ?」


またもずっ転ける……、お馴染みの真一のベッドの上での姿である。だが、今回の真一は違った!!! 即座に反撃に出たのである!


「竹千代! 子供はもういいと思うぞ! 十分に姉弟が居るようじゃないか?」

「ぬっ! 何を抜かすか! 子は宝。子孫繁栄じゃ! 我はまだ、諦めぬぞ! 下の子が生まれれば、上の子供たちはしっかりとするであろう」

「その、悠くんの引き籠もりのことか?」

「ふむ。悠磨もそうじゃが、我にはの……、蛇眼の持ち主の中二病を煩った息子と、乙女ゲームに夢中になりおるオタクの姫が、控えておるのじゃ」

「へ?」

「ふむ」


体勢を立て直す前に、またもずっ転ける真一。

パイプ椅子に座る竹千代王は、腕組みをして天井を恍惚とした表情で眺めている。

真一は思わず、


「子育てて大変なんだな……」

「分かってくれるか、真一! 主が妖精から大賢者を目指す道を選ぶのも……我は理解に努めるぞ!!!」

「あ……」


何か話しが違うと思う真一だったが、今回は突っ込むことを止めようと思ったのだった。


「真一よ、この異世界に帰って来よったら、悠磨に会ってやってくれ。毎回、ゲートを通り日本へ行き、こちらへ帰る度に、俺にはすげ~兄貴が向こうの世界に居るんだと、皆に自慢しよっての。多分、それが真一のことだと我は思うのだ。その、ゲームの話しを聞いての。だから、悠磨に会ってやってくれ、真一」


優しい笑顔をして、ちょっと困ったような表情を目に浮かべて話す竹千代王に、真一は。


「任せろ」


竹千代に向かい、勢いよくひと言いった。


「さて、真一のお陰で話しは大分逸れてしもうたが……、先の話の続きをするかの」


それは竹千代のせいだ! と言いそうになった真一だが、元々は自分が妖精さんなのが原因かもしれないと、思い直すのだった。



「タルマ家族が白百合邸に越して来て、真一がナーシャと遊んでやったていた。話しはその当たりからか……」

「そうだな」

「ふむ、ではな真一。もう其方は立派な大人じゃ。知らないこと……、否、我らが隠していたのかもしれんが……、少し現在日本で其方に伝えてはいない話をしよう。これは、まあ、知らずにいても良い話なのだがな。敢えて我は口にするぞ、勇瑠と花琉には、怒られてしまうやもしれんがな……」


竹千代王の言葉に、首を傾げる真一。


話しは続く。

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