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③プロローグ【現在の座標】
「あの頃のこと、覚えてる……?」
遠く戦乱を響かせる戦場に1人、少女は刃を構え……問う。
目の前に立つ少年は暗い瞳を細め、物憂げに視線を逸らした。
答えは、返ってこない。
きっと覚えてはいないのかもしれない。もしくは、覚えていたとしても……『その程度』と気にもとめぬような些事だったのかもしれない。
出会ったあの日からそうだ。
少年は、少女を見てはくれない。
目に写っていても……見てはいない。
「アナタは…………」
いや、わかっている。
目の前でいくら叫んだところで、なにも意味などないのだ。
だから、この喉から溢れ出しそうな想いを言葉に成してぶつけたとしても、けっして彼に響くことはない。
駄々をこねる児戯に等しい。
どれだけ言の葉を選ぼうと
どれだけ大声で紡ごうと
少女の言葉は……彼には届いてはくれない。
ならば、と……
音が意味を成さぬなら……
光が形を成さぬなら……
触れればいい。
触れられる場所まで行けばいい。
触れ合える高みまで昇りつめればいい。
無視なんて出来ない存在に、成り上がればいい。
アナタが望む…………唯一へと……




