表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『英雄』を狩る者  作者: オーエン
56/91

②エピローグ【真実とわがままの果てに】




 少女は、『死神』を知った。


 それは暴力的なまでに強く、理不尽なまでに強く、そして無情なまでに……強かった。

 もはや、『強さ』という秤にかけることすら生温い。


 だがそれと同時に――


 『ソレ』には、大切なものが……足りなすぎた。



 地位や権利、称号や金銭といった、『あとからいくらでも手に入るようなモノ』ではなく、……もっと核心に至る『人として大切なモノ』が……彼の中には無いのだ。

 アレもソレも、やること成すこと……すべてが単なる『手段』の延長線でしかない。


 ……少女は知ってしまった。


 彼は『悪人』ですらない。


 『善』も『悪』も……そんな概念すら、彼の中には無いのだから……。



 すべてが、来るべき『最期』のための伏線でしかない。



 彼に触れた、その手を握り締め……やはり、無知なる少女は……雫を溢した。




     ◇◇◇




「……契約は成し遂げた。次はソッチの番だ……じゃじゃ馬」


「…………」


「約束した通り……、オレに関するすべての記憶を忘れて貰う」


「……えぇ」


「……。……はぁ。別に責める気はないんだが……」


「……」


「……どうせ、オレの過去……オレの記憶、感情……全部見たんだろ? 知って、感じて……同情して……感傷に浸って自暴自棄か?」


「…………」


「忘れろ。……コレは、オレからの願いだ。『ソレ』を背負うのはオレだけの特権で、お前に「わかる」なんて言う権利はない」


「……はい」


「その憎しみも、その苦しみも、その悲しみも……。オレだけのモノだ」


「…………はい」


「なら、頼む。…………さっさと忘れてくれ」


「……はい。……ですが、その前に…………1つだけ」


「……なんだ?」


「…………」


「…………」


「……アナタは……」


「……」


「……アナタは……『英雄』を、殺せますか?」


「…………あぁ」


「……無理です」


「無理でも、殺す」


「……不可能です」


「不可能でも、殺す」


「…………どうして……ですか?」


「どうして……って聞かれても、口で言わないでも『知ってる』だろ?」


「……そうではなく……」


「……?」


「……どうして……そんなにも……、『自身を殺す』のですか?」


「…………あぁ〜……んぅ〜……。……悪い。ノーコメントで……」


「…………アナタはっ――」


「話は終わりにしよう」


「……っ」


「忘れてくれ……」


「……」


「……頼む」


「…………わかりました」





     ◇◇◇




「……お姉ちゃん、……コレ、あげる♪」


 木漏れ日の擽る城の庭園。

 アーシャの両手には、革製の無骨な首輪ではなく……花で編まれた冠が握られていた。


 背中にキズはない。

 白いワンピースに包まれたその小さな体に、もはや忌々しい過去の記憶は刻まれてはいない。

 目に見える体のキズは、すべてライラが癒した。


 目に見えぬ……心のキズは、コレから時間をかけて、フィオナが癒していく。


 ソレが……約束だから。


 フィオナは、アーシャから花の冠を受け取り……優しく微笑む。


「ありがとう」

「……っ! ……うん♪」


 フワリと、そよ風に揺れる。

 アーシャの眩しく……無邪気な笑顔に、フィオナは姉の姿を重ねて優しく目を細める。


「お姉ちゃん……」

「……はい」

「ありがとう!」

「……」

「いっぱい……いっぱい、ありがとう♪」

「……はい」


 屈託ない無垢な笑顔。

 フィオナ一人に向けられたソレは……、きっと、フィオナにだけに向けられたものではない。


 アーシャは知らない。

 自身を助けてくれた人の事を……。


 フィオナは知らない。

 アーシャを助けてくれた者の事を……。



 だが、フィオナは思うのだ。

 誰も知らない彼を……

 名前も顔も知らぬ彼を……


 とても、悲しい運命を自ら選んだ彼を……



 ……いつか、今度はフィオナが救ってあげることが出来たなら……と。




 桜の花びらが風に舞う鳥かごの中……

 ただ静かに、想い……願う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ