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『英雄』を狩る者  作者: オーエン
33/91

②一話(4)

     ◇◇◇




「……というわけで、結果として生徒会全体としての結論は『生徒二人は、ただの被害者である』という事になったわ。殺人鬼扱いされて『無駄に目立つ』よりは何倍もマシでしょう?」

「まぁ、『夕凪くんが何かしました』って言っても、たぶん誰も信用しないと思いますしね〜。……例え真実が違ったとしても、生徒会はその意見を通すつもりですよ〜♪ 例え、違っても……ふふ♪」

「……そうか」

「淡白な返事ですね〜。嬉しくないんですかぁ? またいつも通りの日常をおくれるんですよ〜?」

「嬉しいもなにも、オレは何もやってないし、何も見ていない。ただあの場に居合わせただけ。……そういうことにしたんだろ? だったらそういうことにしとけばいいじゃねえか。邪推なんてしたところで、望んだ答えが返ってくるとも限らない。……だったら、誰も傷付かない『平和ボケした結論』で満足しとけ」


 真実なんて、誰も知る必要はない。

 今回、結歌達がこの場に志音を呼び出した理由は、真実を知るためなのだろう。

 健吾は友人として、エイラは取材の一環で、アリシアは興味本意で、結歌は家族として……。

 この場に集まった者達は、(アリスは例外として)志音の口から真実を聞き出したとしても、きっと志音の不利になるような事はしないだろう。

 信用している訳ではないが、そういう奴等だと志音は『知っている』。


 だが……


 だからといって、真実を軽々と口にするほど、……志音は平和ボケした覚えはない。


「夕凪くん! 他に真実があるんじゃないのかな! 例えば、『死神』が現れたとか、夕凪くんがすんごい力でバンバンやっつけたとか!」

「ねぇよ。『死神』の噂はオレも聞いたことがあるが……、もしもソイツがいたなら俺達も既にあの世行きだろ……」


 『死神』を見たものは死ぬ。

 この島では随分と有名な都市伝説である。こんな小さな島では、知らぬ者の方が珍しい。

 過去には、討伐依頼を受けたハンター、怖いもの見たさの一般人、正義感溢れる城の近衛兵すら、『死神』の前では無力に命を散らしていった。

 入学時は首席だったとはいえ、まだ学園に入りたての一年生であるリアーナでは数人で挑んだとしても、相手を考えるなら大いに実力不足。そこに、学内戦績でぶっちぎりの最底辺、『不動の最弱』とまで呼ばれた志音が加わったところで、焼き石に水程度である。


 この二人が『死神』を前にしたなら、どんな奇跡が重なったとしても生き残る確率は皆無だ。


 ――と、この学園の生徒ならば誰一人迷わず、その答えに辿り着くだろう。

 それこそが模範回答である。


 そして、志音に隠された『力』なんて存在しない。それが衆知の事実。

 どれだけエイラが騒ごうが、誰もその事実を疑うことはない。


「あら……。貴方なら『死神』くらい、どうにでも出来るんじゃないかしら……? 少なくとも私は、アナタが本気を出せば『死神』も……『英雄』でさえ、敵ではないと思っているのだけれど」


 その結歌の言葉に、目を輝かせた女子三人……エイラ、アリシア……そして何故かアリスまで。

 自身の失言に気付き口を塞ぐ結歌だが、口から漏れ出た言葉は戻すことは出来ない。今さら誤魔化そうにも時すでに遅しである。


「それ、どういう事ですかっ!! 会長その辺詳しく教えてくださいな!」

「そうなんですかぁ〜。それほどなんですか〜♪ そんなに強いのでしたら、私も是非ともこの目で見てみたいです〜」

「ははは♪ お姉さん面白いこと言うね〜。でも、志音ってそんなに強いんだね! ボクも見たいなぁ♪」


 三人の期待値が否応なく上がっていく。


「そうね……ソレは本人に直接聞いてみたらどうかしら。私の口から話すような事でもないでしょう?」


 しかも、話の矛先を志音にすりかえるサービス付き。

 結歌は志音の実力を隠したりはしない。だが、自身の口から語ることもない。

 結歌がいくら周りの人間に「志音は本気を出したら強い」と言って廻った所で、肝心の志音がコレでは、結歌が狼少女となるだけである。

 それに、結歌はこうも考えていた。


 志音が本来の実力をひた隠しにし、誰からも称賛される事もない道を望むのならば……

 結歌は自分の使えるもの全てを使ってでも、その道を守らなければならない。誰の妨害も寄せ付けぬ、最強の一人として……


「どうなの!? 夕凪くん!」

「どうもこうもない! オレの実力なんて、戦績表を見りゃ嫌でもわかんだろうが……」

「本当ですかね〜」

「事実、数字で出てるんだ。疑い様はないだろ」

「でもでもー! あの創正が、そんな弱っちー人なんかに、ボクの警護を任せたりするかなぁ〜?」

「それは単なる、アイツの人選ミスだろ……。文句があるなら、他の奴と代わってやろうか?」

「警護? なにそれなにそれ! アリスちゃんって何者!? どこかの国のお姫様とか?」

「はい! はいはいはぁあああいっ!! その仕事、オレが立候補しまーす!! 志音にばっかりいい思いさせるか!! オレにも、お裾分けしやがれぇ!」

「こう言ってる奴もいるが? 因みに、健吾の戦績は千人以上いるこの学園で四百位圏内だったりする」

「よせやい、照れんじゃねえか〜」

「まぁ、実力は凡平程度だが」

「最下位に言われたくないわっ!」

「いざという時、肉壁としての利用価値くらいはあるぞ」

「酷い言われよう!!」

「んー、お断りかな♪」

「そして断られる! テメェのせいだぞ、志音!」


 志音がもし――この平穏を心から望んでいるのであれば、結歌はただ……ソレを守るだけだ。

 愚かな義弟を持った愚かな義姉として、少女は志音を愛すると決めたのだ。……『家族』となった、あの日……あの瞬間から……。




     ◇◇◇


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