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強引・王子

 ティーダ王子が危うく殺人ウィルス入りの昼食を口にして殺されるのを防いだ上、学園のシステムを一部誤認させて(オレちゃんお手製コンパクト遠隔ハッキングツール使い捨て)その犯人にお仕置きを成し遂げた大英雄のオレちゃんは今、尊厳の危機に瀕していた。


「うぼおーー!?ぼべぐじばむんぐでぷがぱーっ!!(やめろーー!?アタクシは平気ですからぁ!!)」


 ティーダ王子の長い指が、影武者♂の口元へと伸びてくる。綺麗に切り揃えられた爪が、影武者♂の唇を割り、口内へと滑り込んでくる。


「毒を食べて平気なわけないだろうっ!早く吐き出せ!!」


 こんっの最低王子!!!!オレちゃんは毒とか病気とかそういうの効かないって言ってんのにしつこすぎるわ!?てか力強い振り解けねぇ!!


 人差し指と中指が、躊躇なく喉の奥、舌の付け根をぐっと 押し込む。


「んぐうっ……!?」


 強烈な嘔吐反射が影武者♂を襲う。


 くっクソクソクソ耐えろオレちゃん!!拷問だって悲鳴一つ上げずに耐え切ったこともあるじゃないか!!うおコイツ指づかい上手すぎ!?


「そうだ、そのまま出せ」


 ティーダ王子の手指がさらに奥を刺激すると、限界を迎えた胃が一気に痙攣した。


 おーいバカバカバカバカやめろやめろやめろっ!!耐えろ耐えろ出来る出来るまだやれるってほら頑張れ頑張れ吐くな吐くな諦めるなオレちゃんッッッ!!


「――ッ! げほっ、ごふっ……!」


 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?(嘔吐)


 溜まっていたものが、一気に袋へと吐き出される。

 ティーダ王子は指を引き抜くと、汚れるのも構わずに影武者♂の背中を強く、リズミカルに叩き続けた。


「そうだ、いいぞ。もっと出し切れ、構うな後で綺麗にする。」


「そういうことを言ってんじゃっ….う、ぷ……ごほっ! おえぇっ……!」


 何度も激しくえづき、胃の中のものが完全に絞り出されるまで、ティーダ王子は冷たい手でずっと影武者♂の体を支え、髪を優しくかき上げる。

 やがて、完全に胃が空っぽになり、荒い呼吸だけが響く。


 もういや…まじでいや…なんでそれするのが美人のお姉さんとかじゃなくて王子なんだよ…人生で一番いらない贅沢なんですけど。


 ティーダ王子は手際よく水を流すと、ポッケから取り出したウェットティッシュで、影武者♂の口元を優しく拭った。それから、自分の汚れた指先を洗面所で洗い流し、水を持ってまた影武者♂の隣に戻ってくる。


「すまない…急を要していたとはいえ手荒になってしまった…だが毒は全て吐き出せたようだな。良かった…」


「でも…っ、貴方が、っ生きてて…よか、たっ…ですわ……」


 息も絶え絶えに影武者♂がそう言うとティーダ王子の視線があっちそっちに泳ぎ、が朱に染まる。


 何照れてんだこの【自主規制】っ!?いいわけないだろ尊厳という尊厳が砕け散ったわ!?貴方いつか覚悟していてください!!いつかこの借りは【自主規制】して【自主規制】してから【お茶の間の皆様申し訳ございません】な目に遭わせてやるから楽しみにしてなさい!!【罵詈雑言もここまでくるといっそ清々しいな】──────っ!!


 ……なんでオレちゃんはコイツのこと守ったんだっけ?なんか思わず助けちゃったけど。

 いやまぁこの人死んだら自分お払い箱だから当たり前だけど。

 いや違うな、なーんかほっとけなかったんだよなぁ、弟属性ってやつかな。


 ティーダ王子に毒を盛られた事はブリッツ学園警備機構センターに通報し、おとなたちは流石にヤバいと思ったのか午後の授業は早退を勧められてティーダ王子と影武者♂は他生徒より一足先に寮の部屋で休んでいた。

 編入早々早退なんて背徳感がヤバい。


 王子にはなんの変哲もない普通の部屋だったが影武者のにとっては高級ホテルの一室のように思え、さっきの出来事がなければ目に見えてはしゃいでいたことだろう。


 それにしてもベッドでっっっっっっっっっか!?9回寝返りうっても余裕で寝れるよこれ。


「警備部隊には通報した、あとは彼らに任せておけば安心だろう。ところで、身体は本当に大丈夫なのか?」

 

 そう言ってティーダ王子は本日十杯目の水を影武者♂の前に置いた。


 おいまたかよ、もう既にお腹が水でいっぱいなんですけど!動くたびにポコポコ鳴ってるんですけど!?


「はい、さきほどもお伝えしました通りそういうのには耐性があるんです。ですからもう充分です、ありがとうティーダ様」


「私の方こそ巻き込んでしまった上に命まで救われた。すまなかった許嫁殿…」


「そこはありがとうって返すところですわよ?」


 申し訳なさそうにするティーダ王子に影武者♂は少しだけムカついて本ね混じりに諭すと彼はハッとしてザナルに伝わる拝むような仕草で感謝を送る。


「あっ…その通りだな、改めて君に感謝を」


「犯人、ちゃんと捕まるといいですね」


 まぁ捕まるよか先に死んでるかもしれん……ちょっとガードメカに驚異度補正の設定高くしすぎたかもしれない。

 あの時はついスラムでの癖が……本当にどうかしてるあそこに比べたらここは天国だよ?

 オレちゃん大反省。

 頼む!生きていてくれ、ちょっとトラウマが残った程度に。


 不安そうな様子を見かねたティーダ王子はちょっと考えてからホログラムを操作して映したそれをシュッと手首にスナップをきかせて投げ渡し影武者♂に見せる。

「交流夜会?」


 首を傾げる影武者♂にティーダ王子はにっこりと微笑む。


「提案だが…少し気分転換しないか?」


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