ボンボン・制裁
学園に編入して幸いだったのは王子と教室が別々だったことだ。
教室は学年以外で四つに分かれており、行政クラス、高級クラス、低級クラスという感じで家系や本人の実力によって決まっていて、上がったり落とされたりするらしい、怖いわね〜。
ちなみにオレちゃんは高級クラス、一応ラヴミリアンの令嬢だしね偽物だけどさ。
王子は当然行政クラス、王子だしね。
ボードには『ハテナ・ラヴミリアン・ジーナス』という名前が表示され、教室にいる生徒たちの視線が影武者♂に集まる。
ラヴミリアンの令嬢、それが知れた瞬間彼らの中で思惑が渦巻き始める。
その影響力を利用しようする者、親しくして恩恵を得ようとする者、ラヴミリアンとの繋がりを得ようとする者、力に物を言わせ従えさせようとする者、秘密を暴き一儲けしようとする者。
そんな有象無象に影武者♂、もといハテナはせせらわらう。
「答えよ、貴様らが不遜にもアタクシの高貴にすがらんとする愚者どもデスノ?」
シーン…教室の空気が凍りつく。
隣に立っていた教師も口をあんぐり開けて呆然としている。
さきほどまで、この箱入り娘をどう取り入ろうと思索を巡らせていた者全てに緊張が走る。
すると影武者♂の態度が気に入らない一人の小綺麗な男子生徒が席を立つ。
「おいおいナナヒカリちゃ〜ん、いくらなんでも態度がなっちゃいないなぁ〜?先輩には敬意を払ってもらわないと〜、ね?」
そう言って詰め寄ると影武者♂の尻を鷲掴みにすると執拗に強く揉みしだいた。
「ほう?ならば貴様がその敬意に足る者か示してみるといいデスワ、雑種。」
影武者♂は一変も物憂げな表情を崩さずに、そう冷たく言い放つ。
それを余裕そうにニヤニヤと薄ら笑いで返す小綺麗な男子生徒。
「調子乗ってると痛い目みるぜぇ〜、あ――たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたっ……ほぉぅわったぁぁ――っ!!」
空気抵抗を減らし、素早く正確に秘孔を突く貫手と手刀を織り交ぜた100発の拳と貫手を9秒間に渡って繰り出した。
が、いくら強いインプラントを使用していてもいかんせん素人ゆえに踏み込みが甘く、影武者♂には軽々避けられ顔面に裏拳を食らい鼻筋を折られた。
「ゥッ!?クォ……っプギャアアアアアアアアアアア!!」
鼓膜をつんざくような悲鳴が教室中に響き渡る。うるさい。
「なんだ、貴様は道化か?ならばもっと華美のある悲鳴でアタクシを楽しませてクダサイマシ。」
折れた鼻から血がドバドバと垂らしながら床をのたうち回る彼に場は騒然とした。
最初見た時は王位継承最下位で出世できる望みが薄いあの最低王子とイチャつく甘ったれた女だと誰もが言っていたが真っ赤な嘘だ。
あれは性格最悪なクソ女だ、それこそ機嫌を損ねればただじゃ済まない。
皆いかに関わらないようにするかを考え始める。
そもそも王位継承最下位で行政職になれる望みが薄いあの最低王子と婚約した女が性悪でないはずなかったのだ。
(……まぁハテナの性格ならこれぐらいはやる…よな?)
こうして、このクラス流の歓迎は幕を閉じた。
後になって影武者♂はこの時高飛車な行為に出たことを激しく後悔することになるがそれはまだ先の話。
これ以降、クラスメイトは誰一人として影武者♂に近づかずこうとはしなかった。
「化学物質による環境の汚染によって人類を含む数多の生物はドームポリスへの撤退、移住を余儀なくされ、このような惨状を引き起こしたのは腐敗した傲慢な政治家達の政策によるもので…」
歴史の授業にはあまり気を引かれない、なぜって?つまらない話をつまらない宿題やテストの為にしっかり聞く義務が生じるから!一番面倒くさいのは簡潔に説明せずにああやって長々と言葉を垂れ流すと頭の処理が追いつかなくなって伝えるべきものが伝わらないことだよ?オレちゃんの言いたいこと分かるかね?
他の生徒も退屈そうにしている。
まぁ、企業のボンボンたちにとっちゃどうでもいい話なんだろうな。
まぁあの教師が言いたいことは大体わかる、ようは国のお偉いさん達が化学物質ばら撒いたせいで立場が危うくなり、甘い汁吸わせまくって大きくなりすぎた企業に取って代わられた結果、ドームポリスに人類押し込めて高額な輸送使用料を徴収したり、ワイロをとってるし、その懐を暖めたりしてるしで、企業にとってドームポリスとその住人とは、自分たちが輸送した物資を言い値で買わせる相手でしかない。つまりそういうことだ。
まぁその結果治安がめっちゃ悪くて自衛の為にサイバーウェアやら武器やらが出回って、また治安が悪化するの悪循環なんだけどさ!
周りをよく見ると細々とした企業出身が多いのかサイバーウェア埋めてるのもチラホラいる。今朝お灸を据えたヤツはオーダーメイドだな。あのインプラントも本人の趣味だろう。
まぁw鼻折った時にこっそり抜いといたけどwあとで売ってこよーっと。
ちなみにオレちゃんはサイバーウェアなんか一つも埋め込んでない完全な生身、よほどの金持ちはセキュリティやらガードメカやらボディガードやらで自分の身を自分で守る必要がないといった理由から生身のことが多いけどオレちゃんの場合は実験でサイバーウェア埋め込むにしても幼すぎたし、その年齢基準に達する前にラヴミリアンに拾われたしね。
その代わりといってはなんだが手先だけは異様に器用だと自負している。
今だってほら、授業聞きながら机の引き出しの中でその辺で拾ったのを使って片手で工作してるし。
何作ってるのかって?その辺に生えてたチョウセンアサガオ(なんで学校の敷地内に生えてるんだよ危ねえな!?)とその他諸々の薬草を配合して空の香水瓶に詰めてる。
ぶっちゃけると麻酔。
マジでピンチの時だけ使う用ね、流石にシャレにならんやつだからねコレ。
良い子は真似しないように!
そんなこんなでくっそつまらない授業が終わり、昼休みがやってきた。
授業に使った道具を片付けているとオレちゃんに声がかかる。
「許嫁殿、昼食ご一緒したいんだが、お時間よろしいだろうか?」
高級クラスにティーダ王子がやってきた!
クラスが騒ついている…。
うわ出たよ!いやそりゃそうか…自分許嫁だもんな、昼飯ぐらい誘うか。
王子はハテナが誘いに乗ってくれるかどうか少し自信なさげだ…。
いじらしいな!?コイツ!!しかも顔がイイムカつく〜っ具体的にはちょっと哀愁漂う感じで微笑んでくるのが特にさぁ!あ〜ガチ拒否してその顔曇らせたい、まぁ一応仕事だから誘いに乗る以外の選択肢はないのである。




