改稿中
森を抜けたディアナは、そこから南西に位置する村ディメンへと向かった。ここが、ヴァンケとの待ち合わせ場所になっていたからだ。
ここ、ディメンは小規模な村だが、ロンダールの首都リューネとの交易路に指定されているおかげか、旅人や商人などの姿が頻繁に見受けられた。ヴァンケがここを合流地点に選んだわけに得心した。
行き交う人の波に混ざり、宿屋を探した。ヴァンケからは、三階建ての宿屋で待つように言われている。目印の赤い屋根はすぐに見つかった。
少年を担ぎ直し、両開きの扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
受付に立つ複数の男女が元気よく、ディアナと少年を迎え入れた。傷だらけの少年に視線が集中する。メイドの女が怪訝な顔をした。
「いらっしゃいませ。お客様、ご予約はされていらっしゃいますか」
受付の男は少年を一瞥し、ディアナに確認をとった。
「いえ、ですがダーナーさんに話は通っているかと」
「オーナーにですね。かしこまりました。確認してまいりますので、しばらくお待ちください」
受付はそう言い残すと、受付裏の扉を潜っていった。大きな声がするとともに、扉は勢いよく開かれた。
「失礼いたしました。どうぞ、三階の部屋にご案内いたします」
額に汗を浮かべている。受付の焦る様子を見て、別な男が駆け寄ってきた。
「こちらの方は、私がお連れいたしますので、どうぞお任せください」
そういうと、男は少年の肩に手をかけ、微笑んだ。受付の男に誘導されながら三階へ向かった。ディアナは少年を任せてしまった申し訳なさからか、あたふたと落ち着きがない。少年を担いだ男も苦笑していた。
部屋についたのか受付の男は振り返ると、ドアノブを回した。
部屋には三つのベッドが用意されており、広々としていた。奥には窓が設置されている。覗くと村の様子が一望できた。振り返ると、男達は真ん中のベッドに少年を寝かせている。二人の男は、少年の肩にシーツをかぶせ部屋の外に出た。
「では私たちは失礼いたします。後ほど、ダーナーがこちらの部屋に伺うとのことですので、それまでおくつろぎください」
扉は閉じられた。
ディアナは束の間の休息に、ベッドに身を投げた。窓際のベッドから少年の様子を伺う。体を起こして、荷物の中から包帯や消毒薬を取り出した。
ややためらわれるが、少年の衣服を脱がす。ディアナは悲鳴に近い声を漏らした。
「なぜこれが……」
ディアナは少年の胸に乗った剣のアクセサリーに目を留めた。ある男の姿を思い出していた。
「アトラス、アーヴェイン ……」
呟くように、噛みしめるように、ディアナはその名を口に出した。
その時だ。少年の瞼が開いた。




