あ、そういえば。
「今日はありがとうございましたー」
「失礼します」
それから約一時間程して。拓弥と橋本。バス組の時間の都合もあるので、ここで解散となった。と言ってもオカ研の人達とセシリアさんは、もう少し残って話をしているのだと。
「噂のとおり、可愛い人だったなー」
「一人称ボクっていうのも面白いなー。そういうのに似合う服を着せてみたいっていう願望が……」
「勝手に着せ替え人形扱いはどうかと思うぞ」
まずそういう考えに持っていくのをやめようかあんたは。
あの人先輩だからな。まぁそれを抜きにってか、それ以前に。自分自身のそういう価値観とか願望を他人に持ち込むのはやめましょうよ。
「さすがに無理矢理はしないよ。本人に許可はとるし」
「問題、そこじゃないと思うんだが」
「ともかく、神奈ちゃん達にはまた後日ってことで」
「明日は放課後の話をしましょう」
「虎太郎にもなー。あいつ誘ったら、「どっち行くのが正しいんじゃあぁぁぁぁ」って言って十分くらい軽く暴れまわってたし」
「……そういやそうだったな」
そういやあったあった。失礼極まりないことを言ってしまうが、不安を通り越して精神疾患を疑うレベルだったからな。
拓弥の口述の通りに頭を打ち付けていたり、教室の床で丸太みたくグルグル転がってたり。他にも近くをぴょんぴょんはね回ったり、訳の分からんダンスをしていたりと。情緒不安定であったわけだ。
数分してあいつの音ゲー仲間がA組の教室に来たところでようやく我に返って落ち着いたって感じだった。
「近いうちに、できる限り早いうちに会わせてやろうや」
「そうだな。次いつ暴れられるか分かんねぇし」
「その言い方は、何とも……まぁ」
橋本。男というのもまた、女同様に理解し難い生き物なのだ。女子には女子の事情があるように、男子には男子にしかない事情とか悩みってものがあるのだよ。
「吉島さんも大変なんですね」
「そういうこったな。そっちにも色々あるようにな」
故にだろうか。異性の壁というものが生まれるのは。
生徒玄関を抜け。学園最寄りのバス停までの道でも、セシリアさんに関する話は続けられる。
「また凛の時みたいに、注目されるんかなー」
「私の時、みたいですか」
「もう思い返さないでくれないか」
「いいじゃねぇか。過去は変えられないって言うだろ」
そこでその名言はどうかと思う。全然感動しねーわ。
確かに変えられたもんじゃないよ。でもな、人には忘れたい事の一つや二つ、あるもんだと思うんだよ。失敗とか屈辱とか、黒歴史とかぁ!
「そうだろうねー。しかも外人さんってなったら尚更だと思うよー」
「祐真さんも言っていましたけど、やっぱり珍しいものなんですか」
「そういうもんなんだよ。中学の時、一年だけアメリカから来た転入生がいたんだよ。男子の」
「ほうほう」
「めっちゃ声掛けられてた。そいつが一人でいる時なんて一度も見た事ないわ」
「そうなんですか」
拓弥の言ってることもよく分かる。
「そりゃあ気になるもんねー。二人が言ってたように珍しいってもあるからね」
「放っておくのは勿体ないって感じだろうな」
バス停までは歩いて五分もかからないので、少し話していればすぐに到着。そしてタイミングよくバスがやってくる。
「じゃーねー」
軽やかなステップでバスに乗りこんでいった。
「さてと。そんじゃあ俺も行くわ」
「じゃあな」
「ではまた明日に」
バスが行った後、自転車を押して歩いていた拓弥はそれにまたがり、自分の家の方に向かって走っていった。
「ふぅいー。いいお湯だった」
風呂から上がって、タオルで髪の毛を拭きながら自分の部屋に上がる。
十分吹いたところで勉強机に置かれたスマホに手を伸ばした。
すぐさま漫画アプリを立ち上げ、この前見つけた面白い漫画の続きから読む。
ラブコメなんだけどギャグ色濃厚。恋愛二割にギャグ八割みたいな感じなんだけど、これが読んでて面白いのだ。
ちょうど今の公開分を読み終えたところで、スマホに着信が。
橋本桐華がリストを送信しました。
橋本桐華がメッセージを送信しました。
【橋本桐華】この前の旅行の写真。遅くなっちゃったけどまとめておいたよ!
【橋本桐華】欲しいの自由に持ってっちゃって!
夏休み中に行った、温泉旅行の写真であった。客室での写真、カラオケの写真、夕食取っている時の写真。パッと見で百枚以上はある。いつの間にそれだけの量を取ったんだか。
こうしてまとめられているものを見ていると、思い返すものがある。本当に色々あったんだなぁと。
ん? 温泉……? 温泉…………。そういえばなんかあった気も…………。
写真をフリックで一枚一枚見ていきながら、何かを思い出していきそうで。
「あ」
「ああぁぁぁぁ!」
ようやく思い出した。あれだ。あの時の女の子だ。見た目もそうだし、一人称もボクだったから間違いない。
俺の今年のくじ運というか、運勢どうなってるんだ。来年になったら祟られそうで怖いんだけど。
俺の運勢についてはまた考えてみることにして。世の中こんな偶然もあるもんだな。




