092話
色々とお詫びしたいのですが、あれこれ言い訳をするより、投稿を頑張ろうと思いますので、取り敢えず投稿させて頂きます。
「結構素直に謝った積りだし、他意は無いよ?」
沈痛な表情から仏頂面になりつつあるイジケ気味なおっさんに、まずは誤解を解こうとそれっぽい事を言ってみる。
そもそも、フェリクスおっさんは身内だ。考えるよりもカンで生きてるワタシだけど、そんなカンに頼らずとも、印章指輪まで貰ってるんだから当たり前だよね。
だから妙な腹の探り合いとかしてる積りは一切無いし、一応本音で詫び入れた積りなんだけどな。
「マリー。俺はお前にそのツラで謝られるとなぁ、何かすげぇ気が滅入るんだ。そりゃもう立派な攻撃だろうよ」
でもそんなワタシの思いも余所に、フェリクスおっさんは片手で額を押さえて溜め息を吐いた。
ぬにゅう。ワタシが謝るとそんな効果があるんですか。
中身は学院病を引き摺った脳筋で馬鹿タレの筈なのに、外見効果って凄いよなー。
「うーん。でも個人協定を破ったのはワタシなんだしさ。成り行きでそうなったとは言え、本部のおエラ方におっさんを押し付けて帰っちゃったのも事実だし」
魔物ドラゴン討伐依頼書を貰った時は舞い上がっちゃったけど、ワタシってばおっさんと協定を結んでたんだよね。
ランス入りした直後にロリペド野郎に話を邪魔されたものの、その後で「双方共、勝手にハイドラを独り占めしません」って、誓いを立ててたってワケ。
突っ込む前にギャロワ卿がなんたらーとか叫んでるから、厳密には破って無いとは言えるけど、そんなの言い訳だよなぁ。
「確かにそうだが、そもそも貴族共と話をするのは俺の役目だ。それに令嬢の件だって、討伐騎士のエスコート付きで本部が許可を出した事になってる」
「え、そうなの?」
ちょっと驚いておっさんの顔を見ると、おっさんは大きく肯いた。
合議の席で許可が出た事になってれば、それは全体責任になるから、誰か個人が責任を問われる事は無い。
それならアリーが怒られる事は無いし、おじ様がアリーを止められなかった事を責められる事も無いから安心だ。
「ドバリーのおっさんの仕込みだろうな。気が付いたら、書類上は合議の席で許可が出た形になってやがった。相変わらず食えないおっさんだよ」
そう言って、背後を示して頭を向けたおっさんに釣られて向こう側を見てみれば、おじ様は何時の間にか空気を読んでワタシ達の側を離れ、お茶の支度とかしちゃってた。
うーむ。おじ様って本当にデキる&コワい人だわ。
一体何時、本部のおエラ方を手玉にとったのかは判らないけど、そう言った事に相当慣れてないと絶対無理な芸当だよ。
「とにかくだっ。俺が怒ったのはお前が心配だったからだ。普通なら足止めするだけで騎士卿級が二人掛りでも危ねえバケモン相手に単独で突っ込むなんて、特攻志願の大バカ野郎じゃあるまいし、真剣にアセったんだぞ!」
おじ様の凄さに敬服してると、おっさんが「ドンッ」とローテーブルを拳で叩いて、こっちを睨んだ。
ありゃりゃ。それはまたなんか、すみませんでしたねぇ。
協定破りで怒ってるのかと思ったのに、そんな明後日の方向の話が出るとは思わなかったよ。
思わず頭を掻きながら、テヘヘと笑って誤魔化す。
ワタシって昔から面と向かって人に心配された事が少ないから、そう言うのは気が付き難いんだよなぁ。
小っ恥ずかしい様な気もするけど、ちょっと嬉しいかも知れない。
まぁ考えて見ればこの外見だもんな。心配するなって方がおかしいか。
「ううっ、ゴメンね」
「だから謝るな! って、謝らせてるのは俺か。いや、イイんだ、もうその事は! それよりお前、ヘルミネン侯と知り合いってのは、本当なのか?」
「あ、ああ、うん。ホントに少しだけど、知り合いなのは確かだよ」
悪かったなーと真剣に思ったので謝ると、ヘンに顔が赤くなったおっさんが手をバタバタ振りながら、誤魔化す様にアルマスのオネエの事を口に出した。
おっさんがテレてもキモいだけなんで辞めて欲しいと思いつつ、ここでオネエの話が出るって事は、オネエ絡みで何かがあったって事なんだろなと思う。
突っ込む時に二人でボソボソやってたのを見られてるし、否定するのもヘンなんで、取り敢えず肯いておく。
「そうか。実は俺が本部に戻った時にゃ、もうヘルミネン侯が小煩せえ政治屋共を黙らせててな。俺の出番なんか全く無かったんだ」
両手を上げて、やってられんってポーズになったおっさんから、意外な話が出て面食らう。
それはちょっと驚きましたよ。
オネエはアレで本当に雲の上の御方だから、そんなヒトが出てくれば、有象無象の口だけ阿呆(貴族)共なんかじゃ太刀打ち出来ないもんな。
大規模なスタンピード討伐戦なんて、魔将討伐後は即座に政治の世界に切り替わるのがオチだから、討伐軍本部には様々な連中が居る。
要するにエラ方さん達だけど、その中で最も厄介なのが、他所から助勢にやって来た連中の代表達だ。
助勢云々って言えば聞こえはイイけど、大抵の連中は各勢力の利益を代表する阿呆共で、火事場泥棒の様に何がしかの利益を分捕ろうと虎視眈々と狙ってるんだよね。
お陰でスタンピード討伐後は、各勢力の貢献度とかを巡って色々と口先の争いが起こるのが常だ。
何の後ろ盾も無い人が活躍しても、そもそもその政治の争いに加われなければ、色々とケチを付けられ撒くってドンドン重要度が落ちた上、ヘタをすると無視されちゃったりするくらいだし。
バカバカしい話だけど、世の中なんてそんなモンなんだよな。
でもそんな場に雲の上のヒトがやって来て、ソイツの肩を持てば、情勢は一気に塗り変わる。なんたって、持ってる政治力がケタ違いだからね。
ただし今回のワタシにとっては、ソレはとってもマズい。
「それって、総裁陛下のお墨付きの事?」
まずは牽制ワザからねって感じで、女王のお墨付きの事を口に出してみると、おっさんは何も言わずに腕組みをして、考え込む様に俯いた。
あらら。こりゃ個人協定ガン無視許可証(魔物ドラゴン討伐依頼書)がバレてるっぽいな。
朝の段階で、ワタシはおっさんに魔法士協会総裁陛下のお墨付きは貰ったと言ってあるものの、魔物ドラゴン討伐依頼書の件は言って無い。
アレは討伐士協会や討伐軍本部と話が付いてるブツじゃ無いから、後の面倒が必至だってもあるけど、あからさまな個人協定破りになるから言えなかったんですよ。
だから勿論、使わずに済むならその方が良いとは思ってたんだよなぁ。
魔物ドラゴンに突っ込むのだって、一応ギリギリまではおっさんとの共闘を考えてたしさ。
それなのに、ついその場のノリで、ギャロワ卿に「魔法士協会総裁陛下の勅許」とかって言っちゃったから、ヤバいとは思ったんだよ。
そんな事を言っちゃったら、おっさんに依頼書の件がバレバレになっちゃうのにねぇ。
ううっ、自分のバカさ加減を呪いたくなっちゃうよ。
物語の主人公の様な絶好の機会だし、ついつい調子にノッて、一度は言ってみたい台詞を言っちゃったんだよなー。
だって、窮地に陥った騎士卿達の所に風の様に現れて「女王陛下の代理騎士、助勢に見参!」とかって、頭がクラッとする程カッコイイじゃないですかぁ!
しかーも! 「ここは俺に任せて逃げろ」みたいな、更なる言ってみたい台詞まで言えちゃったんだから、もう騎士(従騎士だけど)冥利に尽きるって言うか、感動の嵐って言うか、今思い出してもジーンとココロが熱くなっちゃいますよ。
現実にそんな事が口に出来る機会なんて、もう一生来ないかも知れないんだから、仕方無いよねっ。
はぁ。
しかしそのカッコ付け台詞の代償は痛過ぎる。
そもそもが代理人ばかりの討伐軍本部にあっても、王の直接的な代理人なんてまず居ない。
居るとしたら討伐軍指揮官で代官のデラージュ閣下くらいだけど、それだって簡単に勅命云々なんて口に出来る訳が無いのが普通だ。
だからもし、オネエが口だけ阿呆(貴族)共を完全に黙らせるとしたら、それは総裁陛下のお墨付き云々の話より、魔物ドラゴン討伐依頼書の話を出しただろうと思う。
当然ながら、勝手に撤退とか出来ないギャロワ卿も、撤退時に理由としてワタシの台詞を話しただろうしね。
ぬにゅうん。おっさんにどうやって詫びを入れたモンなのか、考えただけで頭が痛くなっちゃうよ。
「ああ、それもある。だが、ヘルミネン侯がお前に『隙あらば魔物ドラゴンを討ってしまえ』と正式に頼んだって言っててな」
ぐはぁ、やっぱりそうかぁ。
味わい深い表情で顔を上げたおっさんの口から、有罪宣告とも取れる言葉が出て、ワタシはグッタリとなった。
こりゃぁ、ヘタすっと決闘かな。
しょうが無い。後でくっ付けても一ヶ月くらいは治らないけど、腕の一本くらいは覚悟しておきますか。
本日もこの辺で終わりにさせて頂きたいと思います。
読んで頂いた方、有難うございました。




