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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
戦後処理
91/221

091話

 白剣の話になって以降、おじ様との話は和やかに進んだ。


 ワタシは白剣も黒剣もお話の中でしか知らなかったので、現実の話は全く知らないに等しいと言ったら、おじ様が知っている話を色々と話してくれたんですよ。


 当たり前だけど、知らない話ばかりだったんで(特にししょーのネタ的な話が)面白かったです。


 でも、じゃあこっちは実物の使い心地を話しますねってワタシが話し出したら、途端におじ様が目を丸くしちゃった。


「何十年も弟子を取らなかったオマリー卿が鍛えた、多分最後の直弟子である以上、そうであろうとは思っておりましたが、まさか本当に雷光剣を使うとは・・・」


 え? なんですか、その若干学院病が入ってる様な恥ずかしいワザの名前は?


 訝しく思って訊いたら、雷光剣と言うのはワザの名前では無く、ある種の剣の流派の名前で、現存してる使い手は片手に満たないんだそうだ。


 雷気の精を呼ぶ謎の魔法技術をベースに、相手の剣ごとスパッと斬り捨てる程の究極の切断系剣技が流儀だそうで、その特徴は「剣がピカピカ光る事」だと言う。


 いやー成る程ねぇ。おじ様には言えない話だけど、これで結構な謎の一つが解けたわ。


 14の頃だったか、ワタシってば、ししょーに「そんなズルい剣を使ってるから、ししょーはオーガもスパスパ斬れるのです!」とかって抗議した事があるんだよね。


 だって本当に白剣ってズルい剣だし、あんなの使ってれば、そりゃ魔物討伐なんてラクラクだと思ったんだよ。


 そしたら、ししょーが目の前で岩をスパッと両断して、「ならばこの剣を使えばお主にもこれが出来る筈じゃっ、やってみい!」って言い出しちゃってさ。


 いきなりなんてムチャ振りを言い出しやがるんだこのヒトわ! て思ったけど、なんかししょーは凄い剣幕だし、しょうが無くその場で白剣を借りてやってみる事になったの。


 もっとも、当時は亡き実母サマの魔法書を漁って雷気魔法を実験し捲くってた時だったし、ししょーが魔法的に何をやってるのかも見てて大体判ってたから、やれるとは思ったんだよね。


 で、やってみたら、ちょっと危ない所はあったものの、案の定綺麗に岩がブッた斬れた。


 もうこっちは嬉しくって大はしゃぎでさ。出来たよー、ホメてホメてーって感じでそのまま振り返ったんだけど、目に入って来たのは、何か呆然と言うか遠い目と言うか、そんな表情で凍り付いてるししょーの姿だったからガックリしちゃってねぇ。


 実際の所、ワタシはししょーの雷気魔法をトレースしただけで、それを切断の魔法に昇華したのは白剣なんだから、そこまで驚かなくてもイイだろって、とっても不思議だったんだよなぁ。


 当然ながらと言うか、何時もの通り、ししょーはその後も説明とかしてくれなかったしね。


 ただその時から、毎日の素振りが一万回に増えるとか、剣の修行が酷くキツくなってエラい目に会っただけだ。


 あの時の事に、そんな裏があったとは思わなかったよ。


 そんな裏があるなら、それはもう納得するしかない。だって教えてもいない剣の流儀の奥義を、ただ見てただけで真似出来ちゃう様なバカには呆れるしか無いし、しかも曲がりなりにも出来ちゃった以上は、何とかカッコ付けさせないと流派の沽券に関わるもんな。


「しかし、やはり剣が光った様に見えたのは幻では無く、本当だったのですな。雷光剣、まさしく数十年振りに見せて頂きました」


 感慨深げな様子で肯くおじ様の言葉で我に返ると、ワタシは既に飲み干してしまった紅茶の代わりに、インベントリからレモン水の水筒を出して一口飲んだ。


「ワタシは必要魔法力さえあれば、誰が白剣を持っても似た様な事が出来るのだろうと思ってましたけど」


「幾ら何でもソレはありませんな。大体、マリー殿ならば普通の剣でも同じ事が出来る筈でしょう」


「普通の剣で同じ事をやれば保ちませんよ。簡単に曲がってしまいますし」


 ワタシが素直に思っていた事を言うと、おじ様は笑ってそれを否定した。


 やっぱそうなのか。ワタシが勘で覚えちゃったあの魔法とセットじゃないと、らいこーけんとやらは使えないらしい。


 確かにおじ様の言う通り、あの魔法を使えば他の剣でも似た様な事は出来るからなー。


「それが答えですな。しかし、オマリー卿も随分と意地が悪い。まさか流派の名も教えぬとは・・・」


 おじ様が難しい顔で唸りながら、ししょーの意地悪さに首を捻った。


 うんうん全くだと思いながら、レモン水を飲む。


 ま、ホントの所はカッコ悪いから言いたく無かったんだと思うけどね。


 流石に「雷光剣」は無いでしょ。普通は人の名前とかなんだしさぁ。


 だっけどししょーのヤツ、『お主なら使えるじゃろ?』とか、エラく軽いノリで渡したにも関わらず、コレ(白剣)って本当に重いブツだわ。


 だってもし話が本当におじ様の言う通りなら、同門の数少ない人外サン達を除けば、白剣を光らせる事が出来るのはこのワタシだけって事になるし、それじゃまるで伝説の剣の継承者みたいだよねぇ。


 お話に出て来るヒト(無論、人では無い)達と同格扱いとか、マジで勘弁して欲しいんですけど。


「むっ、そう言えばアヤツめ、少し遅いですな。居なくて都合が良いとは思っていましたが、これ程までに時間が掛かるとは、一体・・・」


 紅茶のお代わりが無いのに気が付いたのか、おじ様が戻って来ない副官さんに眉を顰めた。


 いやいや、お茶汲み要員ってワケじゃなし、副官さんも色々と忙しいんじゃないですかね。


 ワタシがそんな感じの事を口に出して弁護すると、おじ様は首を振りながら立ち上がった。


「今現在、アヤツが単独で当たらねばならぬ仕事など無い筈ですよ。連絡も有りませんし、少し様子を見てきた方が良いかも知れません」


 ああ、成る程。おじ様は副官さんを責める積りじゃ無くて、何か厄介事に巻き込まれてるんじゃないかと思ったのか。


 しかし、おじ様が出入り口に向かって歩き出した時、俄かに扉の外が騒がしくなった。


「閣下、閣下! しばらくお待ち下さいっ」


 しかも騒がしさがちゃんと聞こえる声になって、扉のすぐ向こうから聞こえたと思った直後、ババーンと扉が開いて、外から不機嫌な顔のフェリクスおっさんがぬぼーっと入って来た。


 うわぁ。ちょっと驚いちゃいましたよ。


 見れば驚いたのはおじ様も同様な様で、歩くポーズのまま固まってるし。


 ぬにゅう。こりゃまた絶妙なタイミングで、マズい人がやって来ちゃいましたな。


「二人揃ってこんな所で密談かぁ? まーったくよぉ、よくも置いてきぼりにしてくれやがったなぁ!」


 おっさんはそのままズカズカと部屋に入り込み、ワタシの前のソファーまでやって来てドカッと座ると、仏頂面でこっちを睨んだ。


 ううっ。やっぱおっさん、相当機嫌が悪そうだわ。


 事実上の人身御供にしちゃった様なモンだから、当たり前と言えば当たり前だけど、この剣幕だと相当怒られそうな気配だな。


「閣下、我々はスタンピード討伐戦そのものには関係が薄い以上、妙な出しゃばりは禁物と考え、本義である御令嬢の警護を優先しただけの事でありますれば・・・」


 一瞬固まった感じだったおじ様がクルっと振り返り、おっさんへの開口一番で弁解めいた事を口にすると、おっさんが手を振ってそれを遮った。


「ドバリーさんよぉ、俺はアンタに閣下なんて呼ばれる覚えは無いぜ? 官位は同格だろうがっ。それにドラゴンもどきを討った以上、本部にツラを出すのは出しゃばりじゃ無くて義務だろうよ」


「私はこの任務部隊に於いては閣下の部下でありますれば、呼び方は妥当でありましょう。また、報告の義務であれば、マリー殿は閣下に戦場で済ませている筈でありますが」


 でも不機嫌そうなおっさんの言葉に、暖簾に腕押しって感じでおじ様が応酬すると、軍配はおじ様の方に上がった感じだった。


 そりゃおじ様はワタシをずっと見てたらしいから、ワタシがおっさんと話してた所も見てるに決まってるし、そもそも理屈じゃおっさんは弱いもんな。


 だけどまぁ、弁護してくれるおじ様には悪いけど、ワタシは仁義上、おっさんに謝らなきゃイケナイ。


「悪いとは思ったんだけどさ、アリーの具合がちょっと悪かったから、あのまま勝手に帰っちゃったんだよ。ゴメンね」


 ワタシが風当たり覚悟で詫び言を口にすると、盛大な溜め息を吐いたおっさんがこっちを見た。


「別に謝って貰おうと思ってるワケじゃねえ。ただ、あまりにもお前が無茶苦茶をやり過ぎるんでな、ちょっと釘を刺しておこうと思っただけだ」


 可愛い子ぶった上目遣いポーズが効いたのか、おっさんの剣幕が見る見る内に萎れた感じになって行く。


 うーみゅ、恐るべし妖精風美少女フェイス!


 今の今まで凄い剣幕だったおっさんが、何か逆に叱られてるかの様なバツの悪い表情になっちゃいましたよっ。


「御令嬢の話も聞いてる。正直、戦場で御令嬢を優先したお前達の判断は正しい。しかも即座に此処に戻っている以上、ホントは文句を言える義理じゃねえ」


 ふむ。どうやらおっさんのお怒りの本質は、ワタシ達が勝手に帰った事では無いみたいだね。


 実際の所、アリーには監視役が居た筈だからワタシ達の動きは即座におっさんに知らされた筈だし、あの場では、討伐軍がなだれ込んで来る方向に向かう方がオカシイ。


 でもそれで通すと、おじ様がアリーを押さえられなかった責任を問われちゃうからなぁ。


「じゃあ勝手に魔物ドラゴンを持ち帰った事を怒ってるワケ?」


「ドラゴンもどきの素体ならば、討ったマリー殿の物ですよ。協会も建前上は『見せて頂けませんか』ってお願いする事しか出来ませんな」


 取り敢えず、おっさんが何で怒ってたのか訊こうとすると、おじ様が横から入って来た。


 もうおじ様ってば、何でおっさんのヘイトを自分に向けようとするのかな。あくまでも自分の責任で押し通す積りって事かね。


 しかしおじ様の言葉を聞いて怒るのかとかと思ったおっさんは、首を振って顔を顰めただけだった。


「もうクセェ芝居は止せよ、ドバリーさんよ。大体、俺は別におエラいさんじゃねえんだ。二人がかりで攻めて来なくてもイイだろうが・・・」


 にゅう。何か沈痛な表情になったおっさんが妙な事を言いましたよ?


 おじ様はともかく、ワタシは謝ってるダケじゃん。


 それに討伐士協会の任務部隊司令って、普通は雲の上のおエラいさんだと思うんだけど、ワタシの認識が間違ってるのかなぁ。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、有難うございました。


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