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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
大規模スタンピード討伐戦
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089話


 魔物が近くに居ないので、手持ち無沙汰になったワタシがそのまま自走車を見ていると、自走車の運転手は相当な名手らしく、変則的な機動で並み居るマーマンをガンガン跳ね飛ばして走っているのに、全く危なげが無い。


 うーん。ありゃかなりのクセモノが運転してますな。


 まだまだ魔物がまばらに居る戦場のド真ん中を自走車で突っ走るなんて、並みの技量で出来る芸当じゃないけれど、そんな事よりあんな走り方をしてたら、普通なら積んでる精製魔石が保たなくて、途中でエンコしちゃうのがオチだ。


 だからこんな無茶な自走車の使い方が出来るって事は、運転手本人がその豊富な魔法力で自走車を動かしてるって事になる。


 まあそー言った場合、大抵は自走車を動かす魔法や魔術も自前のブツだったりするから、色々とムチャが出来るし、更に自走車までが自前だと、それこそああ言った、普通ではあり得ない様な機動が出来ちゃったりするんだよね。


 一体全体何処の超級プロのヒトを連れて来たのかねぇ。


「まさかアルマスのオネエじゃないよねぇ?」


 何となく独り言を呟くと、レティのヤツがフフンと鼻で笑った。


 オヒ!? それって従者が主人にする態度かってーの。


 心の中で溜め息を吐きながら、どうせもう出番の無さそうな、片手剣と鉄棒を水系魔法で洗いながらも考える。


 どうやらレティは運転手を知ってるっぽいけれど、今の態度を見る限り、それはどうやらワタシも良く知ってる人間のようだ。


 うにゅう。どう控えめに見ても魔法師級の魔法力(黄色級)を持ってないとあんな運転は出来ないし、そんなヤツ、周りに居たかなぁ。


 さっぱり思い当たらないんだけど。


 そうこうしている内に、遂に自走車が目の前まで来て止まった。


 うわぁ。コレ、協会の自走車じゃ無いわ。


 遠くから見た時もヘンだとは思ったけれど、真四角って感じの協会の自走車と違って、この車は楔形っぽい形で、如何にも魔物を跳ね飛ばす専用車って感じだ。


 しかも何やら前部から側面にかけて物騒な仕掛けが色々あるみたいで、禍々しさがハンパ無い。


「お姉さま!!」


 へっ!? アリィィィ??


 自走車の扉が開くと、何故か皮鎧姿のアリーが出て来て、ビックリ!


「ア、アリー? どうしてこんな所に・・・」


 呆然としながらも、そのまま抱き付いて来たアリーを条件反射で抱きとめると、アリーは嬉しそうな表情で顔を上げた。


「お姉さまが魔物ドラゴンとの戦いに勝ったと聞いて、居ても立っても居られず、思わずお迎えに来てしまいました!」


 へ? いや、その、一体全体どうしてこうなったんだ!?


 アリーの言ってる事もさっぱり理解出来ず、オロオロしていると、自走車の反対側からおじ様が降りて来た。


「いやはや、参りました。アリーヌ嬢の運転技術には独特のモノがありますが、今でも十分以上に実戦でやれますな」


 はぁ。いや、だからなんでアリーがこんなカッコで討伐戦の最前線に居るんですかね。


 疑問符で一杯って感じのワタシの表情を見たおじ様は、笑いながら続けて来た。


「マリー殿、御令嬢は車両を使う特殊な討伐士なのですよ。ですから魔物ドラゴンが出た以上、街中に居るよりも何時でも逃げられる戦場に居られた方が返って安全と言う事で、我々が護衛に付いた上で本部に居られたのです」


「はぁ、そうなんですか・・・。って、それじゃこの自走車はアリーの私物なの!?」


「ハイッ! 自慢の愛車ですっ」


 ニッコリと微笑むアリーは可愛いけど、こっちは頭の中が更なる疑問符で一杯だ。


 大体、地獄の獄卒が「ひゃっはー!」とか言いながら乗ってそうな禍々しい装甲自走車と、可愛いアリーとじゃ、そうそう簡単には結び付かないよ。


 何か頭がおかしくなりそう。


「兎に角、お姉さまも早く乗って下さいっ。急いで戦場を離脱しませんと、前線を突破した討伐軍がなだれ込んで来ちゃいます」


 あ、ああ。まあそう言えばそうなんだけど、ねぇ。


 見ればレティもおじ様も何時の間にか車に乗り込んでるし、モタモタしてる場合じゃ無いってのは判るんだけどさぁ。


 頭の中が混乱したまま、急かされて車両に乗り込むと、運転席に付いたゴッツいベルトをグイっと締めたアリーが、急発進で自走車を出発させた。


 さっき見た凄まじいまでの変則的な動きを思い出し、思わず前席の後ろに付いてたハンドルを掴む。


 でも「うわっ」と思ったのも一瞬で、外から見るほどには、車内では振り回されたりしない様だ。


 例の指揮車じゃ無いけど、この自走車も魔法的に相当イジってるみたい。


「私、馬や牛がダメなので、自走車なら何とかなるかと思って始めたのですが、ついのめり込んでしまって・・・」


 自走車のスピードが乗ると、アリーが勢い良く喋り出したので、ワタシは黙って聞いてる事にした。


 何となく判って来たんだけど、アリーってその可憐な外見に似合わず、結構な趣味人みたいだから、こう言う時は喋らせたままにする方がイイんだよね。


 おじ様やレティもそこは判ってる様で、同様に黙ったままだから、バンバンとマーマン(だと思う)を跳ね飛ばしながら爆走する車内は、まるでアリーの独演会ですよ。


「そもそも、一般的な自走車両と言う物は、起動プロセスからして間違っていると思うんですっ。私が考案したのは・・・」


 魔法工学的な専門用語までバンバン出始めたアリーの独演会にウンウンと相槌を入れながらも、ワタシはアリーのあまりにもな「本物度」にちょっと辟易とした。


 このテの趣味人って言うか、職人気質って言うかって感じのヒトは、一度走り出したら滅多な事じゃ止まらない。


 人によって差異はあるけど、ヘタをすると地平線の彼方まで走ってっちゃうから、付き合わされる周囲は大変なんだよね。


 しかし聞いてみればホントに凄い話だ。


 おじ様の言う通り、アリーは討伐士協会に登録するれっきとした討伐士で、しかも10級なんだそうだ。


 討伐の方法はこの車で跳ね飛ばす事だそうだけど、10級と言えば、それだけでゴブ200匹分の討伐が必要だから、そりゃ手慣れてるどころの騒ぎじゃないよな。


 何でも、父親の私物であったこの車を勝手に乗り回して遊んでた事から始まって、ドンドンとのめり込み、改造に改造を重ねて、実験に実験を重ねている内に、今のスタイルが確立されたらしい。


 良くもまぁ、御両親がそんなキワい趣味を許してると思うよ。


 ホント、レティもビックリの超絶趣味人だよなぁ。


「こう言う方法なら、私だって銀章討伐士を目指せると思うんです!」


 握り拳をして力説するアリーは可愛いけど、お願いだから片手運転は辞めて欲しいと思いました、エエ。








 アリーの独演会に付き合ってる内に、自走車は何時の間にか討伐軍本部とは反対の方向から戦場を抜けて、ランスの城内に入り、代官公邸に着いた。


 おじ様曰く「我々は此度の討伐戦において、あくまでも御令嬢の護衛が主任務ですから、このまま代官公邸に帰るのが当然です」との事なので、問題は無いらしい。


 城門もフリーパスだったから、多分、おじ様の言う事が正しいんだろう。


 でもね、ワタシ的には大歓迎だけど、フェリクスおっさんは間に挟まっちゃって大変だろうなぁと思う。


 そもそもオブザーバー的な存在だったワタシが、成り行きとは言え魔将を討っちゃって、その後に本部に顔出しもせずに帰っちゃった上に、ついでに魔物ドラゴンの死体も勝手にお持ち帰りだもんね。


 討伐軍本部としたら、憤懣やる方無いって雰囲気にならない方がおかしい。


 後で色々と怒られる事は確定だな、こりゃ。


 しかし! 今はさっさとお風呂に入って一服する事が急務なのだっ。


 アリーが可愛いだけで無く、ある種のホンモノさんって事が判った以上、一緒にお風呂にでも入って、更に仲良くなっちゃおうと思うのですよ。


 だってさ、ワタシだってジャンルは違えど似た様なモノなんだから、中身がそう言うだって判れば、逆に付き合い易くなって嬉しいもんね。


 同病相哀れむってワケじゃないけど、何かに突き抜けてるヒトってのは、付き合ってるととても楽しいし、それが可愛い年下のなら尚更だ。


 そんな事を思ってニマニマしながらも、ワタシは自走車をガレージで軽くメンテすると言うアリーと別れて、レティと共に厨房へ向かった。


 ハイマーマンの話をしたら、レティが結構な食い付きを見せちゃって、一括で処理するから全部出してくれって言うんだよね。


「ひぃ様のストレージもどきでしたら、魔法力が凄いので暫くは保ちますが、魚類は基本的に足が早いので、さっさと捌きませんと味が落ちます」


 何か妙なスイッチでも入った感じのレティが、ニヤけ顔でウキウキしながら付いて来る。


 ホント、コイツって美味い物に弱いよな。


 まぁこんな内陸の地でハイマーマンなんて滅多にお目に掛かれるモノじゃ無いから、気持ちは判るんだけどねぇ。


「でもさ、一括で処理するって言っても20匹はあるし、手伝おうか?」


「こう言う時の思考加速魔法です。今使わなくて、何時使うのですか!」


 ぶほっ! コ、コイツってば、廃人続出の超難易度魔法を一体なんだと思ってるんですかね。


 本当、さっきのアリーと言い、レティと言い、凝り性のヒトはハンパ無い!


「何を当たり前の事を」って感じで、シレっとした顔のレティが怖いわ。


 脳裏に「人の事は言えないでしょう?」って、何時ぞやのサラのセリフが浮かんだけど、ワタシって周りからみたらコイツと同じ穴のむじななのかな。


 幾ら何でも、それだけは辞退させて頂きたいんだけどねぇ。


 ワタシはそっと溜め息を吐くと、目の前に見えて来た厨房へ続く扉に向かって、足を速めた。


本日もこの辺で終わらせて頂きます。

読んで頂いた方、有難うございました。


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