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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
大規模スタンピード討伐戦
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088話

 ドドーンと襲い来るマーマンの群れを、次々に鉄棒君二号でブッ飛ばしながら、偶に現れるワニ野郎の脳天をプスッと刺して、ストレージもどきに突っ込む作業に勤しむ。


 そう言えばこの鉄棒君二号も、随分と手に馴染む様になって来た。


 剣や槍では一般的だけど、それらに意識的に魔法力を通して使ってると、一定線を越えた場合に所謂「魔剣化」し始める。


 こうなって来るとその物自体の強化は勿論、魔法との親和性が高くなるから、魔法系の小ワザとコラボし易くなったりして、色々と便利になるんだよね。


 馴染むって言うのは、そうなって来たって事ですな。


 真横からゆっくりと突っ込んで来たマーマン二匹の頭部を正確にフッ飛ばし、返す刀(棒だけど)で後方からやって来たマーマン三匹も同様に潰す。


 ヌルヌルが付かない様にマーマン死体の間をすり抜け、その死体に足を取られたマーマンをスッ飛ばすと、更に斜め後ろから寄って来た二匹も連撃で処理した。


「ぬにゅう。なんかヤってもヤっても、キリが無い様な気がして来たんですけど」


 思わず独り言も出ちゃうよなぁ。


 なんたって、最初の頃こそワニ野郎も結構な数が出たんだけど、段々とマーマンの方が増えて来て、今じゃワニ野郎なんて偶にしか出て来ない。


 お金にもならないマーマン退治とか、ホントに疲れますわぁ。


 正確に言えば、クーちゃん達がマーマンの死骸から魔石を抜き取って、ストレージもどきの口が開く度にホイホイと突っ込んでくれるから、全くのタダ働きってワケでも無いんだけど、マーマンの魔石ってゴブ並みだから、ゴブを狩ってるのと大差が無いんだよねぇ。


 左斜め前からノロノロと突っ込んで来たマーマン三匹の頭を鉄棒君二号の連撃でスッ飛ばし、ゆるりと振り向いて、右前から来た別のマーマン二匹も潰す。


 直後にその二体を跳び越えると、更に5匹のマーマンが前後から襲って来るのをクルっと一回転しながら正確に頭を潰して行く。


 はぁー。ホントにマジで疲れてきましたわ(主に精神的に)。


 ちなみにフェリクスおっさんとは、当然ながら別行動だ。


「どうせやるなら効率的にやろう」って言って、あの場で別れたんですよ。


 だってあんなヌルヌルオバケ状態のおっさんとか、近くに居るだけでキモいしね。


 マーマンの襲撃が一瞬途切れた所で、ワタシは地面を親の敵の様に踏みしめると、どりゃって感じに垂直にジャンプした。


「うーん、さすがに空中に居る間だけは襲われないから気がラクだわー」


 眼下を見れば、水棲魔物の数はかなり減ってきた様で、一時は魔物の海って感じだった野っ原も、今はもうまばらって感じになってる。


 そりゃねぇ。ワタシだけだって、あれから何百匹ヤったかも判らない位だし、おっさんや討伐軍も頑張ってるんだろうから、これで減ってなきゃマジで泣いちゃうよな。


「もう知らん振りしてフケちゃおうかなぁ」


 更なる独り言を呟きながら着地して、目の前のマーマン三匹を片手剣で斬り飛ばす。


 うわっ、つい剣の方を使っちゃったよ。バッチイなぁ、もう。


 片手剣を思いっきり振ってヌルヌルを吹き飛ばすと、ワタシは溜め息を吐いた。


 あー、さっさと帰ってお風呂に入りたい。


 大体、水棲魔物って超ナマ臭いんだよねっ。お陰でここら一帯の空気が全部、異様な臭気だしさぁ。


 正直な事を言えば、何時バックレて帰っちゃおうかとタイミングを見計らってるんだけど、フェリクスおっさんってば、ヘンな所で妙に細かいからねぇ。


 どっか遠くから部下に見張らせたりとかしてるに違いないし、後でまたガタガタ言われるのもイヤだから、簡単には逃げられないんですよ。


 まーったく、日頃はのんべんだらりとしてるクセに、ヘンな所で細かいとか、最も女子に嫌われるタイプだよ。


 そんな事だから、何時まで経っても独身なんだってーの!


 右横から来た二匹のマーマンを八つ当たり気味に鉄棒君二号でズババッとブッ飛ばし、またジャンプ。


 眼下を見ると、なんかもうマーマンしか見当たらなくなって来て、更にテンションが下がる。


 まあ実際の所、海のゴブリンって言われるマーマンとワニ野郎じゃ、そもそもの遭遇比率が段違いなんだけどさぁ。


 と、希少種発見!


 見つけたマーマンの希少種の間近に着地して、同時にすぱちこーんと脳天に鉄棒君二号を食らわし、ささっとストレージもどきに仕舞い込む。


 うむっ。良い手際だった。


 ちょっと嬉しい。


 マーマンも年季の入った希少種は鱗もバッチリで、結構な獲物だからね。


 ヌルヌル度も薄いし、デカいナマズに手足(?)が生えた様な普通のマーマンとは違い、如何にも海の魔物って感じの面構えで、好感が持てる。


 しかも、煮ても焼いても食えないと言われて、猫すら跨ぐ使えない普通マーマンと違って、かなりの美味なんだな、コレが。


 年季が入ると希少種化して美味くなるってのは、魔物全般に言える事なんだけど、マーマンに限ってはその差が凄過ぎなんですよ。


 まあ実は結構強いんだけど、三倍加速状態のワタシから見れば、大して変わんないザコキャラだから儲けモノだ。


 美味しい物が獲れると、ちょっとテンションが回復しちゃうよねっ。


 そう言えば、今回はこのハイマーマンも結構狩ったから、さっさと血抜きして、バラして冷凍しとかないとイケナイ。


 バラしついでに、今夜はその一部を使って、ハイマーマンのムニエルにでもしますかね。


 ブイヤベースも良いダシが出てウマいけど、折角新鮮な獲物なんだし、マリネやサシミってのもイイかも知れん。


 魔物には寄生虫が居ないから、ナマでもイケるんだよっ。


「にゅっふふふ」


 いやぁ、夢が広がっちゃいますな。


 また可愛いアリーと食べさせっことかしちゃったりして、堪能しちゃおうかなぁ。


「ぐっふふふ」


 なんか妙な笑いが止まりませんわぁ。


 ニマニマ笑いを顔に貼り付けたまま、背後から迫って来てた二匹のマーマンをスッ飛ばすと、不意にすぐ近くに人の気配がして驚く。


「ひぃ様!」


 ぶふぉっ! レティかよっ。


 ああっ、もう! いきなり現れるなって言うんだよねっ。


「戦闘中に唐突に出て来ないでよね! 危うく斬り掛かる所だったよ!!」


 妙な笑い顔を見られたかも知んないと思って、テレ隠しに怒ると、レティのヤツはちょっとシュンとした感じになりながらも、後ろから迫ってきたマーマンを両手剣で切り飛ばした。


「申し訳ございません。少々アセっておりました」


 シュンとしたのも束の間、すぐに何時ものシレっとした顔に戻ったレティが、更にバンバン襲って来るマーマンをガンガン斬り飛ばしながら言葉を繋いだ。


「ところで、ひぃ様が魔物ドラゴンを単独討伐されたと言うのは本当ですか!?」


 にゅう。何でコイツがそんな事を知ってるのかと思ったけど、そりゃ討伐軍の部隊後方から来たんだろうから、途中で戦場観察の連中にでも訊けば判るわな。


 これだけ大規模な討伐だと、観察部隊だって随所に居るのが普通だ。


 魔物から逃れる為に隠蔽魔術とか使い捲くってても、コイツなら見逃す事は無いだろうしね。


「え? ああ、うん。まー、そうなんだけどさぁ。改めて言われると何か恥ずかしいから辞めてね」


 再度のテレ隠しで、近寄って来てたマーマン3体を鉄棒君二号の連撃でスッ飛ばしながら答えると、レティがニヤっと笑った。


「テレてる場合ではありませんよ。本部ではそれはもう大騒ぎでしたし、今後様々な方面から持ち上げられ捲くるでしょうから、わたくし程度はサラっと流せませんと」


 妙に自慢げな顔で答えるレティのセリフにちょっとヘコむ。


 観察部隊どころか、もう本部が騒いでるのかよー。


 思わず頭を抱えそうになりながらも、目の前にノロノロとやって来たマーマンをブッ飛ばして一息つく。


「ハハハ、まぁ確かにねぇ。そう言えばアンタって、何時の間に思考加速を3倍まで上げられる様になったワケ?」


 乾いた笑いで誤魔化しながら前に出て、マーマン二匹を向かい討つ。


 しかしそいつらを叩き潰すと、ソレを最後に周囲からマーマンの姿が見えなくなった。


 アレ? 何時の間にマーマン共が消えたんですかね。


 って、レティが来たせいで、ワタシ一人の時よりもマーマン共が警戒して近寄って来なくなったのか。


 探知魔法もどきで見ても、半径40ヤード(約36m)くらいは魔物のマの字も無い。


 うーん。狂奔してるワケじゃ無くて正気に返ったワケだから、魔物共も結構手堅くなってるんですかね。


「紅蓮の翼戦の際に、ひぃ様に完全に後れを取ってしまいましたので、色々と特訓致しました。まだそう長い事は続けられませんが・・・」


 手近にマーマンが居なくなったせいか、レティは地面に両手剣をブッ刺すと、結構神妙な顔になってこっちを見た。


 ふーむ。レティってば、あの時の事を結構気にしてるのかなぁ。


 幾らワタシだって、単独行の時とパーティプレイの時じゃ、当たり前にやり方は変えるから、気にしなくてもイイのに。


「だったら、戻した方がイイよ。思考加速魔法はかなりヤバい魔法だから、命が掛かってない限り、限界までやるのはマズい」


 正直に言って、思考加速魔法は廃人続出のヤバい魔法だ。


 こんなスタンピードの残党狩りで使う様な魔法じゃ無いんだよな、ホントわ。


 このワタシだって、全開にするのはかなりの躊躇いがあったくらいだし。


「ひぃ様が言われるのでしたらそう致しますが、それより、本部からお迎えが来ています。わたくしはその先触れでやって来たのですよ」


 ほえ? 本部から迎え?


 思わずレティの顔を見ると、レティから受ける魔法力の雰囲気が変わったので、ワタシも同様に思考加速魔法を解除して、次の言葉を待つ。


「流石にケイマンは粗方討伐され尽くしましたし、後は他の討伐士達などに任せませんと、後々にブーイングが出ますから、バルリエ卿も許可を出したのではないでしょうか」


 はぁ。おっさんの許可、ねぇ。


 あのおっさんがそんな上等な事を考えるかな。


 ってまぁ、おっさんの事なんかどうでもイイか。


 それとなくレティを見れば、どうやら思考加速魔法の悪影響は出てない様で、少しホッとする。


 一般的に言って、三倍の思考加速ってかなりヤバいから、こっちからも気を配ってやらないとマズい。


 そんなに思考加速の練習をしたいんだったら、進み具合を精査して、後でメニューでも作ってやりますか。


 ワタシ個人のデータはアテにならないけど、ワタシはししょーに手取り足取りでじっくりと教え込まれた経緯があるから、あの魔法に限っては人に教えられる自信があるしね。


 ま、あのししょーがそれだけ慎重になるくらいだし、それだけヤバい魔法なんだよなぁ。


 用心するに越した事は無いよね。


「しかし本当に速いですね。もう来た様です」


 彼方の方を見ていたレティの言葉に、ワタシも同じ方向を見れば、まだ結構な数がいるマーマン達を跳ね飛ばしながら、一台の装甲自走車がこちらに向かって走って来てるのが見えた。


 ううみゅ。迎えって自走車かいな。


 戦場のド真ん中に自走車で御出迎えって、ワタシってば何時の間に将軍位持ちの超エラい人と同等の扱いになっちゃったんでしょうか。


 ちょっとゲンナリしちゃうけど、別にワタシがお願いしたワケじゃ無いし、気にしてもしょうが無いかぁ。


 でも、確かにあの自走車、かなりのスピードが出てる感じだ。


 なんか見る見る内に迫って来るし、あれだけのスピードで戦場を突っ走って来れるんなら、そりゃ流石のレティも追い付かれない様にアセるのが判るわ。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、有難うございました。


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