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討伐騎士マリーちゃん  作者: 緒丹治矩
大規模スタンピード討伐戦
87/221

087話


 ふう。しっかし最初はともかく、最後は何かとってもスローな戦いであった。


 今現在だって3倍速状態だから、様々な音が間延びして聞こえるんだけど、魔物ドラゴンの中で爆炎地雷が起爆した時の音なんて、多分本当に一瞬の音だったんじゃないのかな。


 ま、そんな事はどうでもイイけどさ。


 ワタシは持ってる白剣を水平にして、目の高さに持ち上げるとマジマジと見た。


 まさか魔物ドラゴンの首が、あんなにあっさりと斬り飛ばせるとは思わなんだ。


 勿論、完全に本気で斬り飛ばしに行ったんだけど、いいとこ大きな傷でも負わせられればヨシと思ったのに、スッパリ一刀両断だもんな。


 爆炎地雷で弱った所を畳み掛ける筈の最初の一撃が、そのまま最後の一撃になっちゃいましたよ。


 白剣ってマジでハンパ無い!


 ホントの所を言えば、ワタシの魔法無効化能力の影響も大きかったと思うけどね。


 なんたって、ギャロワ卿達は一定線以内に近寄れもしなかったのに、ワタシは気がついたら近くに転がってたしさ。


 イケるとは思ってたけど、あんなにお手軽にイケちゃうとは思ってなかったよ。


 後は爆炎地雷で首の抵抗力が落ちてたってのもあるだろうし、結局の所、その三つのファクターの総合力で首が落とせたんだと思う。


 ワタシは今の戦いをそう結論付けると、水系魔法で白剣を洗った。


 インベントリから出したタオルで拭き拭きしてから、鞘に収めてインベントリに仕舞う。


 でもまぁ、本当の勝因は間違い無く「謎のX倍思考加速」だろうな。


 アレってもう反則ワザの極みみたいなモンだよね。


 爆炎地雷を突っ込む時なんて、魔物ドラゴンが全く抵抗出来なくて、ただイヤイヤをするだけだったし。


 って、あれ? 何かワタシ、今回もまた結構卑怯なやり口で勝ってないですかね。


 出奔の時の何ちゃら兄弟に、ザリガニ魔獣に、なんちゃらの翼の二人に、この魔物ドラゴンと、ヤバイ相手の時は必ずズルい技で勝ってる様な気がする。


 にゅ、にゅううん。何かこれで褒められたりしたら、また小っ恥ずかしくなって顔真っ赤になりそう。


 ちょっとマズいかも知れん。


「卑怯」の二文字を振り落とす様に頭を振って、ワタシはインベントリからレモン水の水筒を出すと、一口飲んだ。


 冷たいレモン水がおいしいわー。


 うむ。ちょっと復活。


 どうせ公式報告書にはホントの事なんてとても書けないし、勝った理由は「白剣って本当に凄かったです!」で押し通す事にしちゃうかぁ。


 うんうん。それならワタシの実力じゃなくて、剣の力って感じで誤魔化せそうだし、結構イイ線行くかも知んない。


 ナイスなアイデアにちょっと気を良くして、ワタシは水筒を仕舞うと、結構食らっちゃったっぽい防具のチェックに入った。


 新品だったからまだ本格的な魔法術式も組んでないし、どうかと思ったんだけど、チェックしてみれば、ほとんど損傷らしき損傷は無い。


 これなら修理とかに出さなくても、メンテだけで済むレベルだ。


「ふうむ」


 しかし、これからどうするかね。


 見れば未だに痙攣状態が続いてる魔物ドラゴンの首無し巨体は、切り口からドバドバと血が噴出してて、暫く待たないとストレージもどきに仕舞えそうにないし、制御を失って勝手に動き出した水棲魔物でも狩り撒くって来るかな。


 そう言えば、ケイマン(ワニ野郎)って内陸では珍しい魔物だし、肉は知らんけど皮は本物のワニより丈夫で高値が付くんだっけか。


 周囲に魔物の気配は無いとは言え、まだ水棲魔物の大軍は手の届く所に居る筈だ。


「よっし!」


 思いついたが吉日~って感じで、ワタシは魔物ドラゴンの巨体に血抜きの魔法陣を想写すると、インベントリから片手剣を出し、群れに突っ込む準備段階として探知魔法もどきに意識を向ける。


「あれっ?」


 すると不思議な事に水棲魔物の大軍は、何故かワタシが居る場所から結構な速さで遠ざかる様に動いてた。


 どうりで全然魔物が襲って来ないとは思ったけど、全体が離れて行くってのも妙な話だ。


 コレ、一体どう言う事なんですかね。


 魔物なんて連中は、魔将のくびきがはずれた瞬間に「やったー、これでオレも人間食い放題!」って感じに好き勝手絶頂になって、わらわらと突っ込んで来るモノだとばかり思ってたけど、ひょっとしてワタシの事に気が付いてないのかな。


 しばし沈思黙考。


 って、考えるまでも無く、魔物連中はこのワタシから逃げてるんだよ!


 魔物ドラゴンが死んで正気に返った以上、魔物だってホントの脳無しってワケじゃ無いんだから、強いヤツからは逃げるよな。


 自ら狂奔してる状態ならまだしも、ついさっきまで操られてたんだからそうなるわ。


 思わずガックリ。


 うにゅう。思えば何時ぞやのオークの群れなんて、猛ダッシュで逃げてたもんねぇ。


 全くもうっ。ワタシは魔将もどきかっての!!


「はぁ」


 深々と溜め息を吐いて魔物ドラゴンの方を見れば、魔法陣のお陰でもう血抜きは終わってて、萎れた感じになった巨体が血の海の中に転がってた。


 大きさから考えると、これで大木一本分にはなりそうだよねと思いながら、ワタシは魔物ドラゴンの死体をストレージもどきに仕舞い、気持ちを入れ替える。


 別に迫ってくる魔物を狩るだけが能じゃ無いし、追いかけて狩り捲くるのだってアリだ。


「でもなぁ・・・」


「自らは手を出さず、襲って来るのを迎え撃つのが騎士だ」なんてカッコ良い事は言わないけど、逃げるヤツを追い回すってのは、どうも勝手が違うって言うか、テンションが上がらないよ。


 いっその事、大玉を散らして飛車角落ちで突っ込んでみるかな。


 大玉と一体化してないと、爆走系の魔法とか、使用魔法力の多い魔法は使えないけど、探知魔法もどきとか思考加速魔法は使えるし、通常の魔物と戦うだけなら不自由は少ない。


「よっし、んじゃそれで行ってみますかね」


 魔物ドラゴンの死体さえ回収しちゃえば、もうこんな所に長居は無用だしねぇ。








 そんなこんなで大玉を散らして群れの方に突っ込むと、まー来るわ来るわ、どんどんバンバンって感じで魔物共が襲って来る。


 ワニ野郎の素体狙いだから、キモいマーマンは左手に持った鉄棒君二号でブッ飛ばし、ワニ野郎の方は右手の片手剣で脳天をプスッて刺す感じで、傷を付けずに仕留めてストレージもどきに放り込む。


 いやー、何か地面にお金が落ちてるみたいですよっ。


 にゅふふふ。儲かっちゃって困るなぁ。


 前はもどかしく感じた三倍加速時のストレージもどきの動きも、慣れて来たのかそれほどストレス無く動くようになって来たから、狩りが捗る捗る。


 もうざっと300匹くらいは獲っちゃったもんね。


 ヌルヌルと動くマーマン二匹を連撃でブッ飛ばし、背後から来たワニ野郎の脳天にプスッと剣先を突っ込むと、鉄棒君二号で死体を引っ掛け、口を開けたストレージに叩き込む。


 ふむふむ。中々手馴れた動きになってきましたな。


 更に前から襲って来たマーマンを蹴り飛ばし、右斜め後ろから来たワニ野郎の頭に跳び乗って、剣先をプスッと刺す。


 しかし三倍加速状態だと、普通の魔物討伐は単なる作業だよなぁ。


 ノロノロと動く魔物なんて、本当に単なる的でしか無いし、トカゲ野郎の時もそうだったけど、これって「儲かる」って理由が無かったら、結構精神的にキツいかも知れない。


 乗ってたワニ野郎をストレージもどきに叩き落して、ワタシは一度大きく垂直に跳んだ。


「おんや?」


 15フィート(約4.5m)くらいの高さまで上がると、討伐軍の居る方向から、土煙り(?)を上げて、凄まじい勢いでこっちに向かって来る何かを見つけた。


 おおっとぉ! ここで新たな魔将の出現かっ。


 イイねえ。テンションが上がるわっ。


 ちょっと退屈してた所だし、ドカンと一発ぶつかってみますか!


 まだ300ヤード(約274m)は離れてる魔将に向かって、取り敢えずタゲを取ろうと片手剣から影斬飛ばしをフッ飛ばす。


 消えずに当たるかどうかギリギリの距離だと思うけど、ヘイトを向けて貰えればイイんで、細かい事は気にしないっ。


「ざーけんなぁ、てんめぇえええ!!」


 んん? 何やら魔将の方から大声が聞こえますよ。


 地面に降り立って大玉を召喚しようかと身構えたところで、ワタシはちょっと耳を疑った。


 ぬうう。人間サマの言葉を喋るとは、中々不届きな魔将も居たもんだ。


 って、まあ、そんなワケ無いか。


 しょうがないなぁと思いつつ待ってると、案の定、魔物共を粉微塵にしながら突っ込んで来たのはフェリクスおっさんだった。


「なーんだ、おっさんだったのか」


 あーあ、って感じでガックリしながらも声を出すと、すぐ傍までやって来たおっさんが怒鳴り声を上げた。 


「なんだじゃねぇ!! 影斬飛ばしなんざカマして来やがって、殺す気か!」


 ほほう。やや遅めに感じるものの、おっさんの声はちゃんと聞こえますよ。


 って事は、おっさんもほぼ同じ倍速の思考加速魔法を使ってるって事だね。


「いやー、なんか魔将っぽかったから、つい」


 ぽりぽりと頭を掻いて、反省してますよーって態度を見せながら、ワタシはちょっとおっさんから離れた。


 全身の金属鎧にフルフェイスの兜を被ったおっさんは、兜の天辺から魔物の返り血だの肉片だのに塗れ捲くってて、まるで汚物の固まりだ。


 正直、マジで近寄って欲しくないんだけど、そんな事言ったら更に怒るだろうなぁ。


 でもその姿で人間名乗る方がムリがあると思うんだけどねぇ。


「つい、で必殺技級をブチ込む様なマネしてんじゃねぇ! 普通のヤツなら死んでるぞ!!」


 バイザーを上げて顔を出したおっさんが、鼻息も荒く握り拳して力説するのをハイハイと受け流しながら周囲を見れば、おっさんにビビった水棲魔物達は既に周りから逃げ出してて、魔物の海みたいな情況の中、ワタシ達の周りだけがポッカリと空き地になってた。


「別に何とも無かったんだからイイじゃん。ところでそのカッコ、ちょっと酷いんじゃないの?」


 なんか我慢出来なくなって来たんで、鼻を摘んで指差してやると、おっさんは「はぁ?」って顔で自分を見てから、ガックリとうな垂れた。


「はぁ・・・魔物の大軍の中を突っ込んで来たんだからしょうがねえだろうが。それより魔物ドラゴンはどうした?」


 盛大な溜め息を吐いて自己弁護するおっさんがウザいです。


 騎士卿なんだから、もう少しカッコに気を使ってくれればイイのに、それじゃマーマンもビックリって感じのヌルヌルオバケだよ。


「ああ、なんかサクッとやれちゃったから、ストレージの中に入ってるよ。そんな事よりギャロワ卿達は無事だった?」


 討伐軍の方から来たんだったら、ギャロワ卿達が無事に着けたかどうかも知ってる筈だと思って訊いてみると、おっさんが天を仰いだ。


「ああ、二人共無事だ。命に関わる様な怪我じゃ無えしな。しかし、魔物ドラゴンをサクッと・・・ねぇ。ホントにシャレになんねえヤツだよ、お前ってヤツは」


 呆れた顔でこっちを見たおっさんの態度に、サクッとなんてちょっと言い過ぎたかなと思ったけど、実際に首はサクッと斬れちゃったんだからしょうが無いよねっ。 


「まぁ全部白剣のお陰だよ、ウン」


 後から訂正するのもナンだし、全ては白剣が凄いと言う事で誤魔化そうとすると、おっさんはズバッとこっちを指差した。


「嘘付け! まあ詳細は後で聞くが、とにかく俺を差し置いて魔将を獲った以上は、後片付けにも最大限協力してもらうからなっ!」 


 にゅう。別にウソは言って無いよ。どちらかと言えば、正直に「核心部分だけ」口にしたって感じだし。


「ウソじゃ無いしぃ」って言って胸を逸らしてやると、おっさんは持ってた大剣を地面に刺して、やってられんって感じで両手を上げた。


「ギャロワ卿達が陽動するのにも梃子摺った化け物が、尋常なやり方でヤられるワケが無えだろうが。どんな馬鹿だって、そんなんじゃ騙されねえぞ?」


 うっ、そ、それは・・・。


 ヤバイ。誤魔化し作戦は早くも頓挫って感じですよ。


 ワタシ、いきなり大ピーンチ!


「ま、まあそんな事より、後片付けって何? 手伝えって言うなら手伝うけど」


 取り敢えずの誤魔化しの為、さっきのおっさんの台詞を聞き返すと、何故かおっさんはニヤリと笑った。


「ほれほれ、まーだ水棲魔物共が一杯残ってやがるだろうが。討伐軍は攻勢に転じたが、まだまだ全滅させるには時間が掛かる。前にも言ったよな? 水棲魔物の残り討伐に協力して貰うってよぉ」


 バイザーを下ろしながら、ニヤけ顔で言うおっさんの言葉にガックリ。


 言われてみれば、前にそんな事も言ってたよね、そー言えば。


 まあしょうが無い。なんたっておっさんは司令官サマだし、依頼書にサインしちゃった以上、言う事は聞かないとマズいよね。


 一つ溜め息を吐いて、ワタシはまた片手剣を握り直した。


本日もこの辺で終わりにさせて頂きます。

読んで頂いた方、有難うございました。


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