086話
すいません! 何か気が付いたら帰宅してソファーに座ったまま、今の今まで寝てました。
昨日の今日でコレって言うのもナンなので、本当はオチまではもう一話あったんですが、ちょっと書き換えて一話に纏めて見ました。
本当に申し訳ありませんです。
よく見ないと気が付かない程のとても小さな腕を振って、数種の風系魔法攻撃を使い分ける魔物ドラゴンは、改めて見るまでもなくデッカい。
起こされてる上体(?)だけで実に10ヤード(約9m)近い巨体は、多分、全体では40ヤード(約36.5m)近いんだろうし、太さは場所でまちまちだけど、細く見える首の辺りでも直径2フィート(約60cm)近くはありそうだ。
こんな化け物と対一でヤり合える日が来るなんて、夢にも思ってなかったよっ。
しかし当の魔物ドラゴンは、小ワザで軽い牽制を入れながらジグザグに走り回るワタシを無視して、撤退するギャロワ卿の方に身体を向けた。
チャーンス!
ワタシは即座に動きを止めて左足を踏み込み、間合いを詰めて一気に「謎の攻撃魔法」の発動連鎖状態に入る。
そりゃワタシなんて、まだ敵認定すらされて無いんだろうけど、そんな余裕をかましてるとイタい目に会っちゃうよぉ?
ドドドォォォン!
瞬きの間で白剣を振り抜くと、間延びした凄まじい音と共に前方の色々なモノが吹き飛ぶ。
「ハッ、これでどうだっての!」
余裕をかましてくれたお陰で、モロに絶好の間合いに捉えての「謎の攻撃魔法」だ。
幾ら何でも、少しは効いただろう。
凄まじい土煙の中、ワタシは速攻でその場を離脱して魔物ドラゴンから距離を取ると、次の仕掛けの為に再度ジグザグ走法に入った。
ニヤっと笑いを浮かべながらもインベントリに左手を突っ込んで、次の仕掛けの準備に入る。
第一の仕掛けは「爆炎地雷」だ。
コイツをバラ撒いて、動きを思いっきり制限させるのが狙いですな。
どれだけ巨大な魔法力を持とうとも、あの巨体だしね。連続で直接身体に魔法着火されたら、果たしてどれだけ無効化出来るかな?
「!」
しかし土煙に紛れて爆炎地雷を撒き始めようとした直後、ワタシは即座にそれを中止して、瞬間的な勘で上に跳んだ。
するとその刹那の後、突如として現れた幅一フィート(約30cm)近い光の帯が、一気に空中にいるワタシの下方を薙ぎ払った。
すっげ! これがブレスかよっ。
オレンジ色のブレスは、現れると無茶苦茶なスピードで辺り一面を薙ぎ払い捲くり、ほぼ同時に起こった風系魔法の連撃と相俟って、瞬く間に土煙を蹴散らして行く。
あ、当たった所の地面が溶けたり蒸発したりしてるんですけど、これってマジですか?
ブレスのトンデモ無い威力にクラクラしながらも、着地したワタシは即座にジグザグ走りに入る。
こんなのに当たったら、死ぬ前に蒸発しちゃうよ!
走りながら見れば、驚いた事に魔物ドラゴンは「謎の攻撃魔法」の直撃を食らっても小傷程度で、殆どダメージらしいダメージを受けてなかった。
「ギィエェェェンッ!」
魔物ドラゴンが怒声の様な鳴き声を上げて、ワタシを威嚇して来る。
勿論、鳴き声を上げてもブレスは続いたままだ。
即座に地面を蹴ってジグザグ走りのスピードを最大に上げ、回避運動に入ったものの、向こうの追尾がドエラく速い。
どっひぃぃぃっ! コレ、ギャロワ卿達はどうやって避けてたんだよ!?
そりゃ考えて見れば、基点の魔物ドラゴンはちょっと首を動かすだけでワタシの動きを追えるんだから、例えこっちの動きが倍以上速かったとしても簡単に当ててこれるわな。
とかって考えてるバヤイじゃないよっ。ひぃぇぇぇ!!
むっ、無理、無理、無理ぃっ!
必死で避け捲くるワタシをあざ笑うかの様に、魔物ドラゴンのブレスは正確にこっちの動きをトレースして来る。
不味いっ、当たる!
そう思った瞬間、何かの影が目の前に現れてブレスに当たった。
ブシャッって音と共に蒸発した、その影のお陰でブレスの直撃を免れたワタシは、即座に前に突っ込んで魔物ドラゴンとの距離を縮める。
本能的に距離を取っちゃったけど、距離が離れれば離れるほど向こうの動きが小さくて済むんだから、どう考えたってそりゃ悪手に決まってるよっ。
しかし助かった! でも今のって、もしかして・・・。
魔物ドラゴンの至近を跳び回りながら、何とかブレスを回避し捲くってると、ワタシは足元に幾つかの影が付き従ってるのに気が付いた。
「クーちゃんっ!」
「キュッ!」
見てる暇なんて無いけど、今の鳴き声は正しくクーちゃんだ。
やっぱさっきの影はクーちゃんだったのか。
にゅううう。幾らクーちゃん達の身体がヤられても平気だとは言え、ブレスの盾にしちゃうなんて考えてもいなかったよ!
クーちゃんやピーちゃん達みたいな精霊って、魔物が超絶大嫌いだから、今までも魔物討伐現場で密かにフォローしてくれた事はあったけど、こんな形は初めてだ。
って言うか、クーちゃんが思考加速魔法で動くワタシに付いて来れるなんて初めて知りましたわ。
ブシャッ!
そんな風に考えてると、一瞬ブレスを避け損なったワタシの身代わりになって、またクーちゃんが一匹蒸発した。
て、て、て、てめぇぇぇ!
良くも可愛いクーちゃんを二匹もヤってくれやがったなぁっ!!
もたもたしてる場合じゃ無いよっ。
湧き上がる怒りを抑えながら、ワタシは思考加速魔法の速度を上げる手順に入った。
約半分で3倍見当なら、全開なら6倍だ!
どれだけ保つか判んないけど、今勝つ事に全力を出さなきゃ、何時出すんだってのっ。
フゥォォォ。
気合と共に思考加速魔法を全力で発動させると、その途端、耳に何とも言えない音が聞こえて、世界が静止した。
ゲッ。これ、身体がクッソ重くて、まともに動かないですよっ。
何か目に入る全てが全体的に暗めな視界の中、良く見れば世界は静止して無くて、超スローモーションで動いてる。
これって、6倍どころじゃ無いんじゃないですかね。
身体を動かすのに凄まじい抵抗を感じる。まるで海の底で強烈な水圧の中で動いてる様な感じだ。
「ぐぎぎぎっ」
それでも気合で何とか動き出し、ゆっくりと迫るブレスを掻い潜る。
にゅう。この異様にスローな世界のお陰か、何かちょっと判っちゃった様な気がしますよ。
このブレスって、やっぱり火系の魔法じゃ無いわ。
信じられないけど、自分の感覚を信じるならば、コレって多分風系魔法に近い魔法だ。
一瞬で色んな感情が飛んで、頭の中が高速回転し始めたワタシは常々の持論を思い出した。
世の中の魔法の体系は、大雑把に言えばまず絶対物質って言う謎のヤツから地水火風の四種類に分かれる事になってる。
一般的に四大って言われるモノだけど、魔法力が顕現するこの四種類の形は、その在り様によって分かれるとされているのに、ワタシの目から見れば火だけは物質の状態では無く現象だ。
最初に魔法学に触った時からの疑問なんだよね。
これを言うとトンデモ扱いされ捲くったから今は人に言って無いけど、ワタシは物質って、とっても細かい何かの集まりで、風(空気)や水や地ってのはその密度によって決まると思ってるんですよ。
それは勿論、世に第一質量(分子)とかって呼ばれる物体の構成物質の事じゃなくて、もっともっとずっと細かい何かだ。
ワタシはクーちゃんやピーちゃんを顕現させ捲くってた感覚からそれを確信してるし、もっと言えば、物質の存在は世に言われる様な確実な物では無く、もっとあやふやな感じで、何かの力によって成ってるとまで思ってる。
四大以外の第五素とかってトンデモ論もあるから一概には言えないけど、簡単に言えば、ワタシは世に言う火ってヤツと、魔法学における火ってヤツは似て非なる物なんじゃないかと考えてるって事ですな。
つまり物質には空気より密度が希薄な「火の状態」ってのがあると確信してるんだけど、これがすっごく難しい。
最初は雷気かと思って難物中の難物って言われる雷気魔法を勉強し捲くった。
高等学院で学べるレベルなんて知れてるから、実母サマの魔法書を漁り捲くったですよ。
でもぜーんぜん違うんだな、コレが。
せいぜいが所、その事に気が付いたって所でワタシの研究は壁にぶつかってたのに、まさかこんな所でその大ヒントを貰えるなんて思わなかったよ!
掻い潜ったせいで、その軌道を変えたブレスの線を再度ホホイと掻い潜り、ワタシはゆっくりと魔物ドラゴンに近づいた。
ってまぁ、ゆっくりとしか動けないんですけどねっ。
少しでも手綱を緩めると全てがブッ壊れそうな魔法感覚の中、ワタシは爆炎地雷を幾つか手に取ると、思いっきり飛び上がって魔物ドラゴンに接近、それを開いた口中に叩き込んだ。
思った通り、ブレスは口の少し前から始まってるし、口も開いてるんで、物を突っ込み放題ですよ。
イヤイヤをする様に首を捩る魔物ドラゴンだけど、そんなゆっくりな動作じゃ抵抗なんかしてもムダムダって感じ。
どうだ、このヤロウ! 体内で起爆した爆炎地雷を無効化出来る物ならやってみやがれ!!
と思って勝ちを確信したのも束の間、ワタシの身体は飛び上がったまま、魔物ドラゴンの頭を超えても止まらない。
うわっ、何コレ! ちょっ、一体どうなってるんだよ!!
ゆっくりながらも確実に身体が上昇する中、ワタシはアセって風系魔法で軌道を制御しようとやっきになった。
でも何か身体がフラフラするだけで、上昇自体は止まらない。
アーレーって感じで、フラフラしながらスルスルと50フィート(約15m)近くも空に上がった頃、「ブーブブブーン」と微かな鈍い音と共に魔物ドラゴンが仰け反り、ブレスが止まった。
どうやら、爆炎地雷の体内起爆は成功したみたいですよっ。
でもこっちはそれ所じゃ無いし、もうこうなったら、思考加速を元に戻すしかないよねっ。
意を決して思考加速の速度を緩めると、フヨォォォンっと耳に妙な音が響いて加速が元の三倍程度に戻った。
「グヘェェェッ!!」
戻った直後、ワタシは凄まじい勢いで空中でシェイクされ、目が回り捲くる。
ヒィェェェ! た、たーすけてー!!
何が何だか判らないまま、ベチョって感じで地面にブチ落ちて転がったワタシが、グルグルになった頭を何とか再起動させると、すぐ間近に居た魔物ドラゴンは、まだ身を捩りながらも仰け反ってた。
ぬにゅううう。良く考えて見れば謎の強烈思考加速状態で思いっきり跳んだり、その状態のまま風系魔法を使い捲くったりしたんだから、こんなの当たり前じゃんかっ。
あー、もう、ワタシのバカバカバカ!
未だにフラ付く頭で何とか立ち上がると、ワタシは落とさない様に気合で握り締めてた白剣を両手で持ってそのまま跳び上がり、未だに仰け反り続ける魔物ドラゴンの一番細い首の辺りに全力で斬り掛かった。
「ズバッ!!」
カキンって手応えと共に小気味良い音がして、魔物ドラゴンの首がスッ飛ぶ。
「もーらいっ!」
スッ飛んだ魔物ドラゴンの首を空中でキャッチ、と言うより抱き締めながら着地して、ワタシは漸く一息ついた。
首を飛ばされた魔物ドラゴンは確実にお亡くなりになった様で、ズバァァァンと間延びした音を立てて倒れた巨体からは、魔法力が霧散して行くのが手に取る様に判る。
うぅー、何とか勝ったみたいだけど、なんかまだ頭がクラクラするよぉ。
どうしてワタシの人生ってこうオチがつきやすいのかなぁ。
足元に居てくれたクーちゃん達にお礼を言いながらも、ワタシは盛大な溜め息を吐くと、魔物ドラゴンの頭をストレージもどきに仕舞った。
本日(?)もこの辺で終わりにさせて頂きます。
読んで頂いた方、有難うございました。




